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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
80/120

077-陥没

<Side デルミス>


 バルダメリアさんがちょっと変だったのは置いておいて、それから3日ほどは何事も無く過ぎていった。

 ダンジョンに潜って、修行して。

 1日目とは違ってダンジョンに二泊したが、特に危険を感じないという点では同じ事だ。


 そんなこんなで、俺たちは今、宿の食卓で朝食を取っている。

 俺の食べ物が確保出来ていないのは問題と言えば問題だが、今のところ特に問題は発生していない。

 それは俺の能力が強化されたからでは無く、単純にためていたエネルギーのおかげではあるが。


 何せ戦ったりしない分には、1つの魂で3日程度は活動可能なのだから。


「デルミスさんは、本当に食べなくても平気なんですか?」

「ハイ。1コで、3ニチ」


 まぁそれは何もしなければと言う話なので、実際にはもう少し消費量は多いのだが。

 それでも俺にはまだまだ余裕がある筈で、18程度はストックがある筈だ。

 これだけの量はなかなか消費しきらないだろう。


「しかしそれならば、ここへ来てもう3日……ああいえ、3日に一度必要なのではなく、3日で1つ分を消費する訳ですか。それならば、ここに滞在する間くらいは何も食べなくても平気でしょうね」

「ハイ」


 アールは理解力が高く、全てを説明しなくても、俺の事情を理解してくれた。

 嘘をついても良かったのだが、バレた場合のことを考えれば、彼には誠実にしておいた方が得だろう。

 それに彼は実質的に俺の保護者になっている訳なので、事情を誤解されて調整をミスされる方が怖いと言うこともある。


 いやしかし、戦闘での消費を考えれば、多少過小に言っておいた方が良かっただろうか?


「そちらはそれで良いとして、そろそろチェレミーは核に着いた頃でしょうか」

「ナニ?」

「核です。ダンジョンの最下層のどこかにあるもので、これを破壊することで魔物が生まれなくなり、ダンジョン自体もやがて崩壊します。知りませんか?」

「知ラナい」

「ふむ」


 アール曰く、ダンジョンには核と呼ばれるものがあるらしい。

 これが無くなるだけでダンジョンは完全な機能不全に陥るのだと。

 つまりチェレミーが言っていたダンジョンの討伐というのは、この破壊する行為を指すのだろう。


 不思議、とも言い切れないだろうか。

 彼の言う核という物はつまり、ダンジョンの機能を支えている頭脳か心臓であるから、これが無くなると停止するというだけの話だ。

 むしろ不思議というのなら、あんなどう見ても人工の構造物が自然に発生することだろう。


 誰かが魔法で作っていると言われた方がまだ納得できるが、アールの様な人物が所属している魔導教会が駆除しきれないという事は、つまりそれだけの数と質があるという事になる。

 そんな数を悪意を持った人間だけが作り出すというのも、少々現実味がないと言わざるを得ない。


「まぁとにかく、チェレミーが順調ならそろそろここのダンジョンも討伐されるという事です。実は私も協力を要請されていたのですが、私抜きで討伐に向かったという事は、既にほとんど調査が終わっていたという事でしょう。全く、ドートシールも何がしたかったのやら」


 愚痴のように呟くのを聞いていると、アールは相当に不満であることがわかる。

 ドートシールという女性は以前から確執があるような雰囲気だったので、その関係で気に入らない事があるのだろうか?


「おや?」

「ン?」


 俺たちがそんな会話をしていると、アールが不思議そうに顔を上げた。

 何事かと思っていると、宿の入り口から全身真っ白の神官が入ってきた。

 女性だ。顔立ちからしてそれなりに年嵩の神官である。


「アーリスマディオ! アーリスマディオはいるか!」

「ここにいますよ、ドートシール。どうしたのですか、貴方らしくもない」


 彼女がアールの嫌っているドートシールという女性らしい。

 ドートシールは返事を頼りにアールを見つけると、僅かに安堵したかのように息を漏らした。


「あの子が、チェレミーがダンジョンから帰ってこない。まさかとは思うが、探しに行ってくれないか」

「何を言っているんです? 討伐部隊として深部に派遣したのですから、時間はかかるものでしょう」

「討伐? お前こそ何を言っている。今はそのための調査をしているところだろうに」


 その会話を聞けば、事情など細かく聞くまでもない。

 チェレミーは四日前のあの時、実際には調査のために神官を引き連れていたのだ。

 それが何故だか急に討伐に行くと言い出して、ダンジョンの深いところへ潜っていった。


 功名心か、冒険心か、それとも反抗期か。

 あのくらいの女の子の考えることは俺にはよく分からないが、無事であるか心配になる話だ。


「それは……では」

「ああ、予定を既に半日近くは超過している。あの人数で何かあるとも思えないし、物資も十分持たせてあるが、心配は心配だろう? だから……」

「そうではありません。チェレミーは今、ダンジョンの———いけません!」


 突然、話の最中にアールが叫んだ。

 あまりにも唐突で、何の前触れも無いその声に、俺たちはぽかんとして彼を見つめるしか無い。

 そしてその直後、アールの叫びと同様に何の前触れも無く、それは訪れる。


「な、え?」

「何だ!?」


 バルダメリアさんとドートシールも疑問の声を上げたのと同時に、地面が激しく上下に揺れ始めた。

 立っていることも難しいほどの揺れと共に宿の壁がミシミシと音を鳴らし、机の上のものがガラガラと落ちていく。

 地震だ。それも尋常では無いほどの規模の。


「逃げなさい、早く! この町(・・・)から!」


 そしてアールが再度叫んだその時だ。

 むき出しだった宿の地面が机ごと崩れ落ち、ぽっかりと穴が開いたのは。

 人が数人は通れそうなその穴の奥には、見慣れた獣がすし詰めになってこちらを見上げていた。


 そしてそのどれもが牙を剥き出しにして、怒りの表情をこちらに向けて居る。


『『『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!』』』


 重なって大きく聞こえる魔物達の咆哮が魔物の方向が上がり、最悪の事態が発生したのだと、俺はそれを嫌でも理解することになったのだ。

あまりにも眠すぎる……。

急に暖かくなるんだもんなあ。

だったら小説だって急にホットな展開になるしかないよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに引きになる『引き』。この町から、というのが危険度を読み手に感じさせてくれる。 [気になる点] ああ、また終わりの始まりになってしまうのか。またも小さい子を生贄にするとは(未確定)、こ…
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