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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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074-3度目の遭遇

 ゴリラを倒した後、俺たちはそのまま暗い道を進んでいた。

 こうも闇の中を進んでいると、普通の人間なら気が滅入ってくるだろう。

 バルダメリアさんは大丈夫だろうか、と思って隣を見ると、彼女は手を開いて真剣そうに虚空を見つめていた。


 アールに言われた通りに魔力を動かす訓練をしているのだろうか?

 ただ俺が歩くのに従って隣にピッタリと追随してくるので、周囲が見えていないと言う訳ではないらしい。


「おや、これは?」


 と、唐突にアールが声を上げたが、彼はそのまま歩き続けた。

 そして角を二つ曲がり、数十メートルは歩いたかと言うところで、足元の何かを拾い上げる。


「やあ、珍しいものを拾いました。浅層にこんなものがあるとは」


 彼が拾ったのは、表面にオイルのような虹色の光沢がある、黒い小さな塊だった。


「ソレハ?」

「悪夢の石と呼ばれるものです。滅多に見つからないものなんですが、こんなところで見つかるとは思いませんでしたね」


 随分と不吉な名前の石ころ(?)だ。

 そんな名前がつけられると言うことは、何か特別ないわくがあるのだろう。


「ナゼ?」

「ん? ああ、この石はですね、なんと魔力を霧散させる性質があるんですよ。ほら」


 アールは片手の手のひらの上に光球を発生させると、それに向けて悪夢の石を近づけていった。

 そして石が光球に触れた瞬間、キィンと耳鳴りの様な音がして、光球が消え失せる。

 石の方は何ともない様で、一方的にかき消せるものであるらしい。


「魔法使いの天敵であり、魔道を否定する唯一の物質。私はこれをいつか攻略してやろうと思っていまして、手に入れたのは行幸でした」


 彼はそう言うと、荷物袋にその石を放り込んだ。

 この星の生物は魔法を使うものが強者だ。

 そう言う意味では、強者に対するアンチ物質とでも言う様なそれは、確かに悪夢と言えるのかもしれない。


「それにしても、悪夢の石が産出するとは。少々このダンジョンは危険かもしれませんね。ドートシールは知っているのでしょうか?」


 アールが少しだけ深刻そうに呟いたので、実際はかなり危ない兆しであるのかもしれない。

 だが俺たちにはそれは分からないことで、彼もそれに対するリアクションは期待していないだろう。

 彼はまた俺たちの先を歩き始めると、直近の角を曲がった。


「まぁ、取り敢えず今は、ダンジョンの探索に集中しましょうか。もう直ぐ2階層目ですからね」


 するとそこには明らかに下層へ続くと思われる階段が存在しており、真っ暗な闇がその先には待ち受けているのだ。



 ◇◇◇◇◇◇



 などと恐ろしげに思ってみたところで、実際に起きていることは1階層とあまり変わるものではなかった。

 アールが先導して、魔物を駆除していくだけ。

 俺にとっては新しいことばかりであるので飽きはしないが、アールは飽きないのだろうか?


 まぁとは言っても、命や町の平和がかかっていると考えれば、あまり気を抜いていいものでもないのだが。

 責任感か使命感か、あるいはその両方か。

 何にせよ、彼らが戦っていることは人間にとってありがたいことなのだろう。


 軍隊が国家における最も分かりやすい社会保障であるのと同じ様に、彼らは人類にとっての社会保障であるのだ。

 だからと言ってチェレミーの様に上位者として当然の様に振る舞う様ではあっという間に腐敗してしまいそうだが、その辺りはどうなっているのだろうか?


「そろそろ引き返しましょうか。初日としては十分な成果でしょう」


 俺が思考を巡らせ過ぎてだんだんと主題が逸れ始めた頃になって、アールがダンジョン探索の終わりを告げた。

 確かにそれなりに長く潜っている様な気がするが、具体的な時間までは俺には分からない。

 何せここは延々と変わり映えのない景色が続く、陰鬱なダンジョンの中なのだから。


「その前に一つばかり面倒ごとがありそうですけどね」


 アールがそう口にした直後、背後から足音が聞こえてきた。

 一つではない。複数の足音だ。

 大人数がこちらの方に歩いてくる音が聞こえてくる。


 振り返ってみると、通路の奥から現れたのは目にするのが何度目かの小さなシルエットだった。


「あら? そこにいるのは……紫の、ってことは……やっぱり! アーリスマディオね!」


 チェレミーと、それに従う様に歩いてくる数十人の神官たちだ。

 彼らは皆一様に真っ白な服を着て、真っ白な白髪をして、そして虹色の双眸(そうぼう)をしていた。

 ダンジョンの外にいた神官たちとは違い、彼らは同じ人種で構成されている様だ。


 てっきりアールとチェレミーだけがそうなのかと思ったが、そう言うわけではなかったらしい。

 となると、部族主義とかそんな感じなんだろうか?

 そうだとすると、先ほどの腐敗という話にも繋がってくる様な気がしないでもないのだが。


「チェレミー様、あの紫色の男、何の種族なんでしょうか。不気味な肌の色をしていますが」

「ん、さぁ? けど話したけど問題なかったわよ。それよりアーリスマディオ、あんたこんな浅いところで何やってるの? 潜ってから4時間くらい経ってるわよね」


 一瞬疑われかけた様だが、チェレミーと少しばかり会話をしたのが功を奏したらしい。

 しかしそれはともかくとして、俺たちはこのダンジョンに4時間も潜っていた様だ。

 もうそんなに経っているのか、と驚かされるが、慣れない環境ではそんなものだろうか。


「ははは、まぁ初日ですからね。それほど張り切ることもないでしょう」

「あんたねぇ、そんなに呑気でいたら町の人を守れないじゃない。もうちょっと真面目にやりなさいよ」

「チェ、チェレミー様! アーリスマディオ様は第3上級階位のお方ですよ!?」

「いいのよ。アーリスマディオなんだから。前からこうだけど、怒ってるところ見たことないもの」

「そんな……」


 彼らのやりとりを見る限り、やはりアールは偉い地位にいる様だ。

 それでも全く偉ぶったところがないのは彼の人徳だろうが、この場合は本来ならチェレミーが部下(?)に配慮して、きちんとした態度を取らなければいけないのではないだろうか。

 魔導教会が巨大な組織だと言うのなら端々に緩みはあるだろうが、こう言うところを放置しておくのは本来なら良くはない。


 とはいえ彼女はまだ子供であるし、2人の個人的な間柄というものもあるので、一概には言えないが。

 しかしそれとは別にして、こんな子供にこれだけ大量の部下がついていると言うのは、とても不自然な光景だ。

 実力なのか、それともコネなのか。何にしても魔導教会とやらは組織として大丈夫なのか、俺は少々不安になってきた。

危険そうな物質登場。

この石で弾丸とか作ったら簡単に魔法使いを殺れそうですね。

スリングショットくらいだと、流石に衝撃だけじゃ肉体強化を抜けないかな?


誤字報告ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] スリングは由緒正しいジャイアントキリング達成武具。 皮鎧を着た大男ゴリアテ倒せるくらいだし、棒付きスリングならいけるかも。ただあれは振り回す場所がメッチャ必要だし個人戦闘向きじゃないけ…
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