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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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073-足でもいける

「大丈夫かデルミス!」


 転がった俺の元に、バルダメリアさんが駆け寄ってくる。

 俺の方は痛くも痒くもないのだが、情けなさすぎて、かなり恥ずかしい。

 運動神経はそれほど悪くもないと思うのだが、スピードとパワーが全く異なるので、制御がとても難しいのだ。


「モンダイ、アリマセん」

「本当か? ったく、心配させんなよな。ほら」

「アッ」


 グイと腕を引っ張り上げられて立たされた後、服をパンパンと叩かれて砂などを落とされる。

 子供にする様なことをされている気がするが、嫌ではないしありがたい。

 それにしても、やはり俺が生きていこうと思ったら、もっと格闘技能を磨く必要があるのかもしれない。


 毎度毎度こんな無様を晒すわけにはいかないし、ディンガードの様な戦闘技能を持った相手と戦ったら勝つことは難しいだろう。

 とは言え師事する相手もいないし、どこかに格闘技の道場などがあればいいのだが。

 探してみたいとも思うが、今の俺はアールの監視下にあって、しかもこの町では離れるなと言われている。


 しばらくは独学で頑張るしかないだろう。


「ふむ。いえ、失礼しましたね。魔物同士は争わないのですが、デルミスさんは違うらしい」


 どうやら今のはアールの実験的な試みであったらしい。

 確かに言われてみれば、俺は今まで魔物同士が争うところを見たことがない。

 また魔物は他のあらゆる生物を見境なく襲うというが、魔物にも襲いかかる様では同志撃ちしてしまうから、人間を襲う前にほとんどが死んでしまうだろう。


 しかし彼の言い分では他のダンジョンで生まれた魔物であっても、お互いを襲わないということになる。

 つまり本質的には魔物という存在は一括りであり、生まれた場所などに左右されない生態を確立した生物なのだ。

 とても面白い話だ。


 だがそうなると、俺は魔物としての本能を持ち合わせないということになる。

 魔物を殺すのに全く躊躇いを覚えないし、そもそも正気を失ってほとんど食欲のみで動いていた時でさえ、俺は魔物を殺しまくっていたのだから。


「あなたは一体、何なんでしょうねぇ。魔物であるのは間違いがないはずなのですが……いえ、まぁいいでしょう」


 彼が何らかの手段で俺を魔物だと断定したことや、血が青いことから、俺が魔物という生物であることは事実である筈。

 しかし魂が違うだけで、生物としての本能までが異なるとは、実のところおかしいのではないだろうか?

 何故なら生物とは、脳で体を動かす生態機械である筈だからだ。


 いや、実はそれ自体が間違っていて、実は生物の本能は魂に刻まれたものという可能性もないではないが、それでは砕かれてリサイクルされている魂が該当の生物に宿った場合にだけ同じ本能を有するということになるわけで、そんなことがあるわけがないだろう。

 それとも魂がリサイクルされているということ自体が俺の勘違いであるのか……?

 駄目だ。情報がなさ過ぎて、考えること自体に意味がない。


「デルミス、どうした?」

「ア、イヤ……」

「そう言えばデルミスさんは、食事はなさらなくて良かったんですか?」


 言われて気づいたが、俺はこの町に来てからというもの、まともな食事をとっていない。

 食事自体は宿のものを食べたが、それは俺にとって食事にならないのだ。

 空腹感を感じないのであまり気にしてはいなかった。


 また、一週間の旅で食事を欠かさなかった結果、現在の俺は魂20個分程度のストックがあるので、食べる必要を感じないということもある。

 あの魂の処理場ではこのくらいで限界だったことから、満腹は近いはず。

 とは言え、あのはち切れる様な嫌な感覚を覚えていないのでまだ入るとは思うが、どのくらい入るのかは不明だ。


 それにダンジョンの魔物から魂のエネルギーを摂取するとは言っても、前のダンジョンでは極端に少ないエネルギーを持った魔物しかいなかったので、少々望み数ではあるのだが……。

 ああ、食事といえば他にも気になることがあったのを思い出した。


「と言っても、ああもバラバラでは無理ですしょうか。まぁ他にも魔物はいますからね」

「イヤ……」


 俺は倒れているゴリラもどきの下半身に、足の指を鋭く尖らせて突き刺してみた。

 先ほど蹴った時は魂のエネルギーが流れ込んでこなかったが、もしや俺は腕からしか吸収できないのか、少し気になっていたのだ。

 そもそも魂の状態で他の魂からエネルギーを奪った時は、俺は噛み付いていた訳なので、手や腕からしか吸収できない方がおかしい話である筈。


 足先が深く突き刺さると、僅かばかりの魂のエネルギーを感じる。

 やはり他の生物とは違って、恐ろしくエネルギーの総量が少ない。

 だが感じるということは、吸えるということではなかろうか。


 意識してみると、手よりも圧倒的に効率が悪いが、なんとかエネルギーの吸収自体は出来る様だ。


「ふむ……」

「少ナい」

「何ですって?」

「タマシイ、少ナい」


 これではダンジョンで生活することは、俺には難しい。

 強い武力を持っていても、魂のエネルギーの総量が少ないのでは、収支が合わないのだ。

 俺が生活するためには、少なくとも魂一つ分の力で狩れる獲物が存在していなければいけないのだから。


 この中規模ダンジョンとやらの魔物は弱いが、それでもエネルギーの収支が合うかというと、おそらく難しいだろう。


「それはまた、興味深い話ですね。魔物には魂が少ないとは……ふむ。ホビットの文献を少し調べる必要があるかもしれません」


 アールは俺の話を聞いて、興味深そうに考え込んでいた。

 俺にとっては面白い情報ではあるが、彼にとってもそうなのだろうか?

 とも思ったが、よく考えればダンジョンについての新情報となれば、彼ら魔導教会にとっては重要な情報の筈だ。


 であれば、興味を持つのも当然と言える。

 まぁ、魂の存在を感知できない彼らにとって、この情報が何の役に立つのかという話ではあるのだが。

 それにしても、今の所ダンジョン探索は俺にとって何の益も齎していない。


 ダンジョンという名前なのであれば、せめてもう少し何か手に入るものが欲しいところだ。

アールの性格ってめっっっっちゃ書きづらい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] しれっと踏み絵させる神官が良い性格をしているw [気になる点] どこかのラ〇ダーが契約するミラ〇モンスターのように、倒してエネルギーを得るとはいかなかったか。赤字ではねぇ [一言] デルミ…
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