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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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071-ダンジョンに入る前のお話

 翌日のこと、俺たちは当初の予定通り、ハルマトンのダンジョンとやらに訪れていた。

 ダンジョンの入り口付近には白い服装の神官が何名も確認できたが、意外なことに普通の服を着て武器を持った人物も多く見受けられる。

 魔物だらけで危険な場所のはずだが、神官以外が入って利益のある場所なのだろうか?


 ちなみに俺たちは今日はお試しということだが、それでも物資は食料3日分と、ランプやら変な石やらロープやらと言ったものを購入して持ってきている。

 それらすべての用途が理解できたわけではないが、それなりにキチンとした装備が必要になる場所だということだけは俺にも理解できた。


「教会に情報はないんでしょうか?」

「いやぁ、調べてくるのを忘れまして。ははは、まぁ大丈夫ですよ。チェレミーが無事なのですからね」


 だが当然のようなバルダメリアさんも質問に対して、神官アールはそう返してそれきりだ。

 何故だか彼は、再度調べに行く気はないらしい。

 まぁ彼の判断にケチをつけられるほど俺は詳しくないし、バルダメリアさんもそうらしいので、従うよりは他にないのだが。


 だが本当に大丈夫なのだろうか、という疑問は拭えない。

 いくらアールが強いとは言っても、俺は戦い慣れているとは言い難いし、バルダメリアさんも彼ほどには強くないのだ。

 勝負とは情報であり、情報がないことはすなわち勝敗の予測がつかないということ。


 専用の装備が必要になる場所でそんなにいい加減なことでは、俺たちが危険にさらされるのではないだろうか?


「ム……」


 また、俺も少しでも戦力アップを図るべく、ちまちまと瞑想やら魂のエネルギーの干渉やらをやってみてはいるが、それも成果は芳しくない。

 僅かばかり操る範囲と集める力が拡大したくらいで、成長してはいるものの、力がついたとはとても言えない。


「どうした?」

「何モ、ナい」

「そうか? っていうか前から思ってたけどそれ、何でもない、だろ」

「何デモナい?」

「そ。何でもない」

「何デモナい」

「フフッ」


 とは言え、心配したところでこれ以上はどうしようもないのだから、心を砕くだけ無駄というものだ。

 俺たちは最近慣れてきたやり取りをしながら、アールの後をついて歩いて行った

 彼の進行方向には、建物を無理やり押し上げる様な形で土が大きく盛り上がっている場所があり、そこにはぽっかりと人が2〜3人は並んで入れるほどの大穴が空いている。


 穴の中は石造りの通路になっているようで、整った壁が顔を覗かせていた。

 規模は異なるが、俺がこの星で最初にいた地下通路(ダンジョン)も、確かあのような感じだった。


「アレがこの町のダンジョンですね。中規模と聞いていますが、見た目はそれっぽいでしょうか」


 アール曰く、どうやらこの光景は通常のことであるらしい。

 俺にとっては異常そのものだが、彼らが日常的に魔法を行使し、また魔物などと戦っていることを考えれば、この程度の光景などはそれほどおかしなものではないのかも知れない。


「そういえば聞くのをすっかり忘れていたのですが、お二人はダンジョンと言うものをどの程度知っていますか?」

「ン?」


 ダンジョンに入る前に、アールは今更のように俺たちに質問を投げかけた。


「知ラナい」

「魔物や道具が産出する場所、としか」

「そうですか、では軽く説明しておきましょう」


 説明する気があるのならもっと前にしておいてほしいものだ。

 てっきりこの文化圏では当たり前の話なのかとも思ったが、どうもそう言うことではないらしい。

 いわゆる統治者側だったはずのバルダメリアさんも知らないことであるのなら、一般人はそうそう多くを知ってはいないだろう。


「簡単に言えばバルダメリアさんが仰った通り、魔物と様々な道具が出現する場所です。その多くは地下にあり、際限なくその二つが湧いて出てきます」


 魔物は分かるが、道具が湧いて出るとは何だろうか。

 まさか、いくらダンジョンと翻訳されるからと言って、ゲームのように宝箱が落ちているなどと言うような話ではあるまい。


「それが何故なのかは分かっていません。ダンジョンには邪神がいるとか悪魔がやっているとかいう説もありますが、教会でもそんな存在を確認したと言う話はありませんしね。ただ事実として魔物や道具が出現するというだけの場所なのです」

「ドウグ?」


 この文化圏にも邪神や悪魔という概念は存在するらしい。

 それはともかく、道具というのが俺はとても気になる。

 元から魔物が出現する危険な場所であるということは分かっていただけに、知らない情報があるとそちらの方に気がいってしまうのは仕方のない事だろう。


「はい。ここには神官以外の方々も多いでしょう? そう言った方達は出現する道具目当てでダンジョンに潜っているのです。魔道具など、有用な道具を見つけられれば一攫千金らしいですからね。まぁ、ほとんどが何でもない物であることが多いのですが」


 話を聞く限り、どうやら本当にゲームのような場所であるらしい。

 そんな馬鹿な話が本当にあるのか。またあったとして、一体どう言う原理でそんな事になっているのか、非常に気になる話だ。

 それにそんな金になる場所があるのなら、いくら危険とは言っても人はそれを利用しようと考えるのではないだろうか?


「ただ面白い話がありまして、昔、魔道具ばかりが算出されるダンジョンがとある町に出現したらしいのです。そこは魔導がとても栄えていて、多くの強い魔法使いが魔道具目当てに連日ダンジョンに潜って富を得たのだとか。そしてその地を治める貴族が欲に駆られて、教会にダンジョンを討伐しないでほしいと要求したのだそうです」

「あ、それは知っています」


 と思ったら、実際にそんな話があったらしい。

 ただそれは昔の話であり、バルダメリアさんも知っているようなおとぎ話の類として伝わっている。

 であればそこには教訓があるはずで、この場合のオチは俺には簡単に分かってしまった。


「ははは、まぁ有名ですからね。隆盛を極めたその町は、突如として出現した強大な竜の魔物によって、一夜にして滅びました、とね。これによって過ぎたる物欲は悪しき欲であると、教会は後世に伝えるようになったのだとか」


 それが成功例なのであれば、ダンジョンは教会の管理下に置かれて完全な資源として扱われるようになっていただろう。

 そうなっていないと言うことは、つまりそう言うことなのだ。

 如何に有用な存在であるとはいえ、制御できなければ何の意味もない。万事はそういう物だろう。

世の中そんな上手い話はないですよね。

欲に駆られて破滅するのは、人類あるあるだと思います。

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