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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
73/120

070-仲が良く、仲が悪い

 メリコールを食べ終わって、食卓でのんびりと水をいただく。

 甘いものの後の水というのも、口の中がさっぱりするのでなかなか良いものなのだ。


「美味しかったわねー」

「はい。ご馳走していただいて、ありがとうございました」

「いいのよ、お詫びなんだから。はいこれ。残りは後で好きに食べてね……ってそうじゃないわ!」


 俺たちに差し出す様に紙袋を机に置いたかと思ったその時、唐突に神官チェレミーが叫んだ。

 何か思い出したことでもあったのだろうか?


「え?」

「私はアーリスマディオを探しにきたのよ。あんた達、一緒にいたなら知らない?」


 そういえば、彼女がこの宿に現れた理由を俺たちは知らなかった。

 よくわからないまま会話が始まって、いつの間にか一緒にお菓子を食べることになっていたのであって、これは彼女の目的に関係のないことだろう。

 彼女は神官アールを探しているというのだから。


「……」

「ええと、アーリスマディオ様は……」


 俺は言っていいものか分からなかったので口をつぐんだし、バルダメリアさんも行って良いものか迷った様だ。

 彼は休むと言って部屋に引っ込んだし、それを邪魔するのも良くないだろう。

 であればその旨を伝えて彼女には一度引き取ってもらった方が良い。


 問題はそこまで複雑なことを俺が喋れない以上は、バルダメリアさんの判断に任せるしかないということだ。


「何? 知ってるなら何でも良いから教えて欲しいんだけど」

「チェレミー、私はここにいますよ」


 チェレミーが怪訝そうな顔をしたのとほとんど同時に、部屋の方からアールの声が聞こえてきた。

 目をやれば彼はいつの間にかそこに立っており、いつ出てきたかも分からない。

 食事に夢中だっただけとも言えるが。


「何だ、いるんじゃないの。あんたにしては出てくるのが遅かったわね。いつもなら待ち構えてるのに」

「いえね、ちょっと瞑想の修行をしていたら楽しくなってしまいまして。お恥ずかしながら気付くのが遅れてしまったのですよ」


 どうやら彼は趣味に没頭していた様だ。

 彼は得体の知れないところのある神官だが、こういうところだけを見ると、やはりオタクなのだなぁと思える。


「やっぱりいつも私がくるの分かってたんじゃないの!」

「おや」


 だがアールが失言とばかりに眉をひそめたその内容は、なかなかに面白く、また恐ろしい話だった。

 彼は視界を塞いでいるのに、何不自由なく周囲を認識している。

 今までの言動から魔力を操ってそれを成していることは確かだろうが、魔法を使うときに手を向けるという法則を完全に無視している振る舞いだ。


 一応手のひらは開いているが、料理をしているときは調理器具を間違いなく握っていた。

 しかし俺と戦った時は手を向けていたはずだが……ひょっとしてあれはブラフなのだろうか? 何のために?

 ともあれ、彼の魔力による認識範囲は至近距離だけではなく、全方位にそれなりの距離を認識していると思った方がいいだろう。


「あんたねぇ……」

「秘密ですよ?」

「みんな知ってるわよ!」

「ははは。まぁそれはともかく、貴方は何をしにここへ来たのですか?」


 神官同士で漫才の様なやり取りをしているが、確かに今重要なのはそこだ。


「あんた、ダンジョン探索に協力するんでしょ? お母さんに聞いたの」

「それはそうですが……母? 失礼ですが、貴方は神の子(孤児)の筈では」

「あ、うん、えへへ」


 チェレミーが照れた様に体をくねらせた。

 一瞬、音が三重に聞こえたが、孤児という単語ははっきりと聞こえた気がする。

 母と聞いてアールが意外そうにするということは、間違ってはいないだろう。


「あのね、ドートシール様が私を養子にしてくれたの」

「何ですって!?」


 驚愕の声をあげて、アールが一歩退いた。

 ドートシールというのは、確かこの町の来た時にも彼が呟いていた名前だ。

 あまり良くは思っていないような雰囲気だったが、彼の驚きはそのせいなのだろうか。


「何故、いや、あなた達は師弟だった筈ですが……」

「そんなに驚くこと? 私が頑張り屋さんで可愛いから、養子にしたいって言ってくれたの。あんたがドートシール様とあんまり仲良くないのは知ってるけど、あんまり悪くいうと怒るからね。もう私のお母さんなんだから!」

「……いや、そうですね。分かりました。おめでとうございます、チェレミー」


 表情では深刻そうにしながらも、アールはチェレミーに対して祝いの言葉を贈る。

 不満が滲み出ているようだったが、チェレミーはその言葉に一応満足したらしく、ふふんと小気味よく笑みを見せた。


「ありがと。それでね、お母さんからあんたが正式に協力してくれるって聞いたから、せっかくなら一緒に行こうと思って」

「ああ、それは申し訳ありませんが、私達は別で動こうと思っているんですよ」

「そうなの? でも、せっかく一緒のダンジョンに行くのに……」

「新しくとても凄い修行を思いついたので、ダンジョンで試したいと思っているのです。ですが、そんなに一緒に行きたいのであればチェレミーも───」

「───と思ったけど、邪魔しちゃうから私はもう行くわね! じゃあ!」


 分かりやすい追い払いの文句に、分かりやすくチェレミーは反応して、彼女は即座に宿の食堂から逃げ出して行った。

 どうやらアールは俺を徹底して彼らから隠してくれるようだ。


「ふぅ、彼女が修行嫌いで助かりました。それにしてもドートシールめ、養子ですって? あの冷血女が?」


 バレるとマズいとは言っていたが、何がそこまでマズいのか俺は知らない。

 アールがここまで相手を嫌って罵るというのは見たことがないし、かなりの確執があるのは確かなのだろうが……。

 一体彼らには、どんな事情が隠されているというのだろうか?

話が膨らみますね。

アレもやりたいこれもやりたいってシーンが思い浮かぶけど、全部は無理なんだろうなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間相関図が出来上がってきて、主人公周りの映像に厚みが出てきた。想像補完するならやはり対人関係ですねぇ [気になる点] 孤児を引き取る……善意か、あるいは使い捨て要員か。今のところの描写だ…
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