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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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068-意外と良い子

<Side デルミス>


 バルダメリアさんに言葉を教わりながら宿の一室で待機していると、しばらくして神官アールが戻ってきた。

 

「今日はこのまま宿でのんびり過ごして、旅の疲れを癒しましょうか。瞑想は夕方と寝る前に行いましょう。もちろん、疲れない程度ならずっとやっていても構いませんよ?」

「は、はぁ」


 てっきり直ぐにダンジョンとやらに行く準備を始めるものと思っていたが、確かにここ一週間ほどはほとんど休みなしの旅路だったと言っていい。

 俺は疲労しないから忘れがちだが、アールはともかくバルダメリアさんは疲れているかもしれない。

 いかにこの星の人間が地球人よりパワーがあるとは言っても、彼女は生身の人間なのだ。


 しかも彼女は道中、瞑想の修行で集中しっぱなしだ。

 せめて体くらいは休めなくては、そのうち倒れてしまうかも知れない。


「私も休ませてもらいますね。それでは」


 アールはそれだけ言うと、自分の部屋に引っ込んでいってしまった。

 案外彼も疲れていたのだろうか?

 化け物のように強くても、彼も人間であったと言うことか。


 何にせよ、思いがけず自由な時間ができてしまった。

 特に予定も決まっていないが、だからと言って何もしないと言うのも暇を持て余してしまう。


「休むっつってもなぁ、どうすっかな。勉強ばっかってのも疲れるよな?」


 バルダメリアさんも気を遣ってくれたらしく、俺にそう聞いてくる。

 まぁ俺は疲れないので勉強でも良いのだが、彼女はそれで良いのだろうか。


「イイえ」

「そうか? じゃあ勉強の続き……と思ったけど、小腹が減ったな。先に何か食べるか」

「ハい」

「よし、じゃあ食堂に行こうぜ。神官様の方は、宿から出なけりゃ大丈夫だろ」


 今日の宿は普段の村で借りる部屋と違って、少し大きな食堂のような場所が設けられている、少し大きな建物だ。

 食事も提供していて、壁にはメニューが書かれた木札が、何枚も鍵にかかっている。

 と言っても当たり前の話だが、俺にはそのメニューのほとんどは読めないのであるが。


 そんな訳で俺たちが食堂に行くと、ちょうどそこには白い小さな神官服の人物が宿に入ってくるところだった。

 アールに突っかかっていた、チェレミーという神官だ。

 彼女は目ざとく俺たちを見つけると、こちらの方に近寄ってきた。


「ちょっと、そこの紫のとヴェレシュの。あんた達、アーリスマディオと一緒に居たわよね」

「神官様? は、はい。居ましたけど」

「ヴェレシュ?」


 どうやら俺たちの事を覚えていたらしい。

 まぁこんな特徴的な見た目の、周囲から浮きまくっているコンビは一度見たら忘れないだろう。

 俺は言わずもがな、バルダメリアさんの人種もヤグ以外には見た事がないので、初めて訪れた場所では大体人の視線が痛い。


 それはさておき、このチェレミーの言ったヴェレシュとは何なのだろうか。

 俺の事では無いので、バルダメリアさんの事だと思うが、何を示す言葉なのだろうか?


「あ、それは———」

「え、一緒に居るのに知らないの? ヴェレシュってのはその女の人の種類(・・)よ。ちょっと前はこの辺で貴族やってたって聞いたけど、もう滅んだんだっけ?」

「ア゛?」


 思わず、自分でもびっくりするほどの低い声が出た。

 何だ、この失礼なクソガキは。

 彼女は家族も仲間もみんな死んでしまっているのに、それを軽々しく言って良いと思っているのか?


 しかも種類。種類だと?

 如何に神官とはいえ、言って良い事と悪い事の区別も付かないのだろうか。


「で、デルミス、大丈夫だから。アタシは平気だから」

「ア、アア……」


 だが、ああいや、待て待て。まだ子供の言う事だ。

 見た感じ10歳くらいだが、そのくらいならまだギリギリ子供で許されるだろう。

 それに神官と敵対するのはマズい。


 大丈夫、冷静になれ、ビークール。


「え? あっ、ごめんなさい……そうよね、戦争だったんだから、大変だったのよね」


 彼女(恐らく女の子だと思う)も自分の言った事に気が付いたのか、申し訳なさそうにしている。

 どうやら口をついて言ってしまっただけで、悪気があった訳では無いようだ。

 俺もそれが理解できると、なんとか溜飲を下げる事が出来た。


「そんな、大丈夫ですから」

「いいえ、本当に悪いかったわ。お詫びに何か一つだけ、私がお願いを叶えてあげる」

「え!? いえ、そんな、構いませんから」

「遠慮しないで! 何もしないのは私の気が済まないの。大丈夫、こう見えてもお金はいっぱい持ってるし、魔物だって殺せるくらい強いんだから!」


 彼女は悪い人間では無い。それは確かだろう。

 しかしかなりの強引な性格で、遠慮をゴリゴリと押しきってくるタイプのようだ。

 バルダメリアさんもそれが分かったのか、困ったように俺の腕をぎゅっと掴み、何とか乗り切れないかと周囲に視線をやっていた。


「え、ええ……あ、それじゃあ、メリコールが食べたいです」


 そして何かを閃いたらしく、彼女は要望を口にする事が出来た。

 何かの食べ物らしいが、聞き覚えの無いものだ。


「そんなので良いの?」

「は、はい。好物なので」

「そ。じゃあ買ってきてあげるわ! 商店で売ってるところ知ってるから!」


 チェレミーはそう言い残すと、魔力光を発してもの凄いスピードで宿から駆け出して行ってしまった。


「はぁ……」

「好キ?」

「あ? ああ、アタシとアルルゥの好物だったんだ。甘くってな。あ、甘いって分かるか?」

「ハい」


 どうやら甘味の類いの様だ。果物か何かだろうか?

 そういえばこの世界に来てから甘いものを口にした記憶が無い。

 毎日のように飽きの来ない、様々な味が凝縮された極上のスープを飲んでいるようなものなので、必要無かったとも言えるが。


 しかしメリコールという食べ物の味に興味はある。

 甘いと言う事は果物だろうか? それともケーキ? クッキーかもしれない。

 俺にとって食は娯楽の一種だ。


 未知なる美味しいものというのはそれだけで心が躍る。

 早くチェレミーが帰ってこないものかなぁ、と思っていると、白い小さな影が光りながら宿に駆け込んできた。


「買ってきたわ!」

「え!?」


 そう叫んだのはチェレミーで、彼女の腕には紙袋が抱えられているではないか。

 まだ買いに行ってから一分も経っていないと思うのに、あまりにも早すぎる。

 速度は魔力を使ったから分かるとしても、そんなに急いで道中誰かにぶつかっていないか、俺は心配になったのだった。

適当に出したはずのチェレミーちゃんが意外と良いキャラに思えてきた不思議。

何故こういうキャラをヒロインにしなかったんだ俺は!


ちなみにアーリスマディオくんはイライラ解消のために部屋で深い瞑想中です。

たぶん修行しながら恍惚の表情を浮かべてる。

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[気になる点] 正統派クソガキかと思いきや、反省できるおクソガキ様だった。しかも10才と現ヒロインの中で誰よりも若い(内訳 村のおっさんズ 故人の娘さん 姉御 年増神官)ぞ
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