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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第一章 ある男の転生
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007-コミュニケーションは難しい

 待っている間、俺は日光浴をしながら考え事をしていた。

 ひょっとして、この格好のままでは追いかけても碌な結果にならないのでは? と。


「全裸だしなぁ」


 全裸の紫男を見て、まともな人間だと思う人はいるまい。

 何か衣服を身につけなければ、会話すらままならないかも知れないと考えれば、衣服の大切さがわかろうというものだ。


「何かないか、何か……」


 しかしここは森の中。

 布の一切れすら落ちていることはない。

 どうしたものかと考えて天を仰ぐと、陽の光を遮る葉っぱが目に入ってきた。


 アレでどうにかならないかと考えたものの、小さな葉っぱで、とてもではないが股間を隠せそうには見えない。


「ダメか……通路に何かないか?」


 自然にあるものは使えそうにないので、人工物の方を覗き込んでみる。

 望み薄ではあるが、使われなくなった何かが落ちていたりすれば、それで何とかなるかも知れない。

 まぁ登ってくる時にそんなものは目に入らなかったので、本当に望み薄ではあるのだが。


「む、アレは!?」


 しかし、天はどうやら俺に味方しているらしい。

 茶色い布の塊が、階段の影に落ちていたのだ。

 神様は俺をぶっ飛ばしたが、大切な時に恩恵ももたらしてくれたのである。


「ありがとう神様!」


 こんなところに落ちていてばっちぃけど、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 しかし恐る恐る拾い上げてみると、その布が妙であることに気がついた。


「あれ、濡れてない? 綺麗な布だ……」


 こんな森の中にあって、乾いている上に、砂まみれでもないし、虫1匹ついていない。

 茶色い色をしているだけで、表面も擦れていないタオルのようなサイズの布だった。


「誰かの落とし物なのかな。さっきの二人……は、そんなそぶりはなかったよな。うーん、まぁこれはきっと、神様からの贈り物だな! そういう事にしとこう」


 不自然ではあるが、背に腹は変えられない。

 さっそく腰に巻きつけると、布はしっかりと俺の股間を隠してくれる。

 これならきっと、会話くらいはしてくれるだろう!


「よし、行くか!」


 俺は希望を胸に、子供二人が去っていった方向へと歩き始めた。



 ◇◇◇◇◇◇



 凸凹の地面を歩き、川一つを越えて、更にしばらく歩いた後。

 子供の足にしては歩きすぎではないか? と訝しみ始めた頃になって、ようやく森の切れ目に家が立っているのを、遠目で発見することができた。


「見つけた!」


 木造の掘立て小屋だ。

 そのまま小屋の方へ歩いてみれば、その付近にいくつか同じような家があるのが分かる。

 見た目からして、貧しい集落のようだ。


 さっきの子供達も、ここに住んでいるに違いない。


「農村、というより山村かな?」


 少し離れたところには丸太が積んであったりして、山の恵みで生きているのが分かる。

 やはりあの通路の歪さなどからも分かる通りに、文明的にはそれほど進んでいない場所なのだろう。

 より家屋に近寄ってみると、入り口は引き戸になっていたり、窓は板をスライドさせるものだったりして、金属などはほぼ使われていないので、その確信に拍車がより深まった。


 となると、あまり情報などは期待できそうにないが、それでも何も分からないよりはマシだろう。


「すみませーん」


 コンコン、とノックを2回。

 すると中から物音がして、ガラリと引き戸が開けられた。


「『はいはい、どなたですか?』」


 中から現れたのは妙齢の女性だ。

 亜麻色の髪とベージュの肌。先ほどの子供達と同じ人種である。

 彼女はこちらを視界に収めると、大きく目を見開いて、一歩退いた。


「あの、すみません」

「『き』」

「き?」


 キャアアアアアアアアアア!!


 と、目の前の女性から大きな悲鳴が上がった。

 ああ、やっぱりこうなるのかと思いながら、落ち着かせようと右手の平を前に出す。

 ───瞬間、女性はバッとその場から飛び退いたかと思うと、立てかけてあった太い木の棒を手に取って、横凪に叩きつけてきた。


 狙いは胴体だ。


「ちょっ! グゥッ!?」


 咄嗟に両腕を硬質化させて、胸の前でガードの姿勢をとる。

 防御の上から棒が当たると、恐ろしい衝撃が俺の体を突き抜け、何と俺はぶっ飛ばされていた。

 比喩でも何でもない。足が地面から離れて、数メートルも後ろに吹き飛ばされたのである。


「ガハァッ!?」


 痛い! 何で!? どうなってんの!?


「何で……」


 どうやら背中が隣の家屋に打ち付けられて、俺の口から苦悶の声が漏れたらしい。

 いやそれよりも、まさか突然殴られるとは思わなかった。

 見れば女性の持っている棒はそこそこ長く、先に向かって太くなっている。明らかに殴るための棒、棍棒だ。


 女性は反応速度といい力といい、明らかに素人ではなかった。

 山間の女性というのは、こんなにも逞しいものなのだろうか?


「『何!』」

「『どうしたの!?』」


 俺が打ち付けられた家や、村の中から女性が幾人か駆けつけてくるのが見える。

 悲鳴に反応したからだろうか、そのうち二人ほどは目の前の女性と同じような棍棒を手にしていた。

 えっ、ここアマゾネスか何かの村なの?


「『魔物よ! 囲んで!』」


 その言葉に、サッと周囲の女性たちの顔色が変わる。


「ちょっ、待って待って! 待ってください!」


 俺は咄嗟に両手の平を前に出して、『待ってください』というジェスチャーをする。

 同時に俺は何も持っていませんよというジェスチャーでもあるので、敵対の意思がないということも示せて便利なポーズなのだ!


「『手の平を向けたわ! 魔法を使う気よ、注意して!』」

「えっ、これそういう意味になるの!?」

ヒロインではありません、念のため。

冒険メインの話だからね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先端の工夫されてる鈍器っていいですよね。 フィジー製のトトキア・ウォークラブとか凶悪極まりない形状で怖すぎ。敵の頭蓋骨に絶対に穴を空けてやる、という断固たる意志を感じるフォルム [気になる…
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