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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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065-小さな神官来たる

 一夜を挟んで次の日の昼過ぎ。

 アールが予想したよりも少し遅れて、俺たちはハルマトンという町に到着した。

 そこはこれまで見た村よりも明らかに規模が大きく、発展している場所のように見える。


 アールはハルマトンを町と表現していたが、確かにこれは町だ。

 所狭しと立ち並ぶ木造家屋に、賑わいを見せる市場。

 大きな荷車を引いて行き交うのは、牛を2回り大きくして脚を太く丈夫にした様な生き物たち。


 よく見ればその牛たちはツノが切られており、家畜化されていることが分かる。


「デルミスさん、食事は私が提供しますから、バッケルには手を出してはいけませんよ?」

「ン?」

「バッケルです。あの荷車を引いている生き物ですよ」


 彼は何を言っているのだ? と思ったがなるほど、俺がバッケルとやらを食べようと考えてしまわないかとおもっているのだろう。

 彼からすれば俺は、大きな動物なら何でも食べる健啖家だ。

 確かに食べられないことはないし、魂のエネルギーをいただくこともできる。しかしだからと言って何もかもが美味しそうに見えるわけではないし、食欲が常に湧いているというわけでもないのだ。


 というか、俺には食欲というものが平時には存在しない。

 満腹であるわけではないが、だからと言って飢餓状態にあるわけでもなく、かといって魂のエネルギーを吸えば美味しく感じるし、味覚を付与すれば食事だって美味しくいただける。

 詰まるところは、俺は正気を失うレベルにまで飢餓に陥らない限り、食事というものに頓着しなくて済む生物であるらしい。


 なのに何故俺が食事を欠かさないのかと言えば、それはいつでも戦えたり、活動不能に陥らない状態を状態を維持しているという理由でしかないのである。

 まぁアールにそんなことが分かるのかというと、そんな訳がないのだが。


「食ベルは、ナい」

「そうですか? それならば良いのですが……む、いけません」


 ハルマトンの風景を見ながらアールと話していると、彼がにわかに焦り始めた。


「失礼しますよ」


 そして彼は俺に手を向けると、フワリと何かが体にかかったような感覚を俺は覚えた。

 何だろうか? 何かの魔法だとは思うのだが、詳細は俺には分からない。


「神官様、デルミスに何を……」

「あ! あんた、アーリスマディオじゃない!?」


 バルダメリアさんにも分からなかったらしく、アールを問いただそうとした時だ。

 子供のように高い声色が、アールの名前を読んでいる。

 そちらの方に視線をやれば、背は低いがアールと同じように真っ白なシルエットがそこには立っているではないか。


 真っ白で長い髪。やはり子供のような背丈。そして真っ白なマントと服に、何より特徴的なのはその子供の瞳だった。

 虹色の光彩を放つ、ギラギラとした妙な瞳。

 服装からして神官で間違いないだろうが、子供の神官という存在と、その瞳の異様さに俺は驚いて思考が一瞬停止してしまった。


「やあこれは、チェレミーではありませんか。この街にいるとは知りませんでしたよ」

「はっ、白々しい。どうせあんたの事だから、私がいるのに気が付いてたんでしょ」

「はは、まさかそんな、ねぇ?」


 どうやら2人は知り合いのようだ。

 見た目からして、アールの身内か同郷といったところだろうか?

 今しがたアールが俺に何かをしたのは、このチェレミーという神官が来たからということで良さそうだが……。


「ところで、ねぇアーリスマディオ。さっきこの辺に魔物いなかった?」

「……!」

「さぁ、私は知りませんが……いつもの勘違いでは?」


 そうだった。神官は魔物を察知できるかも知れないのだ。

 どのようにしてかは知らないが、アールは俺の存在を相当な遠距離から補足していたし、この子供もここへ来たタイミングから考えてそうだろう。

 やはり神官は全員がそのような技術を持っていると考えて良さそうだ。


「そうかしら。うぅん、今日は当たりだと思ったんだけどね?」

「修練が足りないから勘働きに頼る羽目になるのです。魔導は魔物と戦う術も教えているのですから、もっと日々の修行を───」

「げっ、う、うっさいアール! いいの、私はそんなことしなくたって分かるし、魔法だって『天の裁き(ガランメルシア)』が唱えられたら十分でしょ!」


 と思ったのだが、どうやらそういう訳ではないらしい。

 驚いたことに、彼女は勘だけで魔物がここにいることを察知してのけたようだ。

 アールの口ぶりからして外れは多そうだが、それでも如何にしてそのようなことを成しているのか、俺には理解することもできない。


 これが単純な個人の才覚であれば良いのだが、しかしアールが何かをしたということは、そうではない可能性もある。

 第六感か魔法的な感覚かは知らないが、アールには仕組みのわかっているものなのだろう。

 そしてそれは、やはり魔法で何とかできる類のものなのだ。


 アールがやっている以上は、他の人間ができないという保証はない。

 警戒したいところだが、したところでどうにかなるものでもなさそうなのが辛いところだ。


「あまりそれに頼るなと言っているではありませんか。それではいつまでたっても───」

「うっさいうっさい! とにかく、あんたは後で教会に顔出しなさいよね。来た以上は協力してもらうんだから」

「は? いえ、しかし……」

「じゃあ後でねー!」


 神官チェレミーはアールの言葉に被せるように叫ぶと、走ってさっさとどこかへ行ってしまった。

 まるで突風のような子供だ。

 強引で、かつ我儘で、アールはそれに対して困ったように、一つ大きなため息をついた。


「まったく、あれでは直ぐに死んでしまいますよ。ドートシールも何を考えているのか……」

「あの、神官様。あの方は……?」

「ああすみません。彼女はチェルミーという、見ての通りの神官ですよ」


 彼はバルダメリアさんの問いに答えた後、少しだけ俺たちの方に距離を詰めてきて、小声になって話し始めた。


「(ただ少し厄介な能力がありましてね。今デルミスさんのことが連中にバレるのは、少々いただけません。ですからこの町にいる間は、私の指示をよく聞くようにして下さいね)」


 同じ神官であるのに、俺の存在は秘密にしておきたいらしい。

 それに親そうに見えたのに、連中などと彼は言った。

 どうやら何か、魔導教会も複雑な事情を抱えているようだ。

今回の章の内容はかなり迷ってます。

あれやっちゃっていいかなーとか、ああいうキャラでいいのかなーとか、話の順番とか組み立てどうするかなーとか。

大筋は決まってるんですけど、細かいところがなかなか難しいんですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道の生意気ツンデレ登場か? ヒロイン成分が補充されるのは嬉しい [気になる点] 家畜かぁ。独特のにおいがしてるんだろうなぁ。前に鶏糞を乾燥させてるエリアを通ったらすごかったです…… [一…
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