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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第一章 ある男の転生
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006-全裸と子供

 二つの視線は小さな子供のものであった。

 男の子が女の子の前に立ち、棒をこっちに向けているという、とてもわかりやすい構図だ。

 しかしそこで思い出して貰いたい。俺の今の格好は紫肌の全裸である。


 対して、子供二人の肌はベージュ。黄色人種っぽい?

 つまり二人から見れば、俺は意味の分からない変質者であろう!


「$%#"$#!」


 何と言ったのだろうか。

 まぁ語気から大体分かるのであるが、見て分かるように敵対的であるし、大方「何だお前!」とかであろう。

 女の子は俺の出で立ちに怯えているのか、腰を抜かしてぺたりと倒れ込んでしまった。


 二人とも足が震えていて、なんだかとても可愛らしい。


「あー、えっと。君たちは誰だい?」


 そうじゃなかった。

 俺は片手で股間を隠すと、二人に対して『敵じゃ無いよ』ともう片手の掌を振った。

 言葉は通じなくてもボディランゲージは通じる。何かでそんな話を読んだ気がするので、俺もそれに習うことにしたのだ。


「$#%&%!?」


 ところが少年少女はその掌を見た途端に、更に怯えてしまった。

 ひらひらと動かす掌に視線が釘付けにされており、左右に振るとその通りに二人の視線も動く。

 ちょっと面白いが、この怯え方はちょっと妙だ。


 もしかして、これは良くないポーズなのだろうか?

 文化が違えば意味も変わる。

 もしかするとこれは、敵対的なポーズなのかもしれない。


 そう思って手を引っ込めると、明らかに二人の安堵が伝わってくる。どうやらその通りらしい。


「どうしよう……」

「…………#”#$=%”!」


 俺が困り果てていると、しかし男の子の方はそれをチャンスと見たのか、棒を振り上げて襲いかかってきた。

 びっくりするほど早い速度で、ビュンと俺の前まで一足飛びにやってくる。

 とはいえそれは、子供にしてはという話。


 それに今の俺にはびっくりパワーがあるので、この程度の攻撃は効かないのだ。

 手の平をちょっと硬くして、棒を受け止める。


「ん!? っと!」


 思ったよりも強い力だが、それでも押し切られるほどじゃない。

 そのまま腕に力を付与して棒を取り上げると、子供の頭に軽く振り下ろした。


「#”#”!」


 コーン、と軽い音がして、男の子が頭を押さえてこちらを睨んでくる。

 が、それ以上には何も無いことが分かると、その視線は次第に懐疑的なものになっていった。

 そして木の枝を返してやれば、彼はそれを奪い取るようにして受け取ると、すぐさま距離を取って棒を構え直した。


 どうやら敵対を止めてはもらえないらしい。


「あはは……ホントにどうすれば良いんだ」


 途方に暮れる俺に、少年はまたも棒を振り下ろしてきた。



 ◇◇◇◇◇◇



 それから少しして、5度も6度も同じ事が繰り返されていると、流石に子供達も俺に戦う気が無いと言うことが分かってくるらしい。

 震えていた少女は今や立ち上がって、少年に何事かを喋りかけているし、少年は少年で、俺に遊ばれている様に感じているのか、ムキになっているだけようだ。


$'%&=(帰ろうよー)

$'#&#%(嫌だ)! #'#'#'$$(でやあああ)!」


 よくよく聞いてみれば、何となく意味が分からなくも無い。

 いや、分かるわけが無いのだが、音とは別に、何故だか意味だけが分かるようになった気がするのだ。

 コレはひょっとすると、魂の波動を聞いているとかそういうアレかも知れないなと考えながら、7度目になる少年の打ち込みを俺は受け止めた。


「そろそろ止めて欲しいんだが……」


 と言ってみても、彼らには俺の言葉は通じない。

 どうやらこれは受信だけの能力らしい。

 まぁ言葉が分かるだけでも便利ではあるのだが。


「『このお兄さん、多分悪い人じゃ無いよ』」

「『うるせー! 俺はこのまっぱ野郎をやっつけるんだ!』」

「『もう、そんなこと言うなら知らない! 私帰るから!』」

「『え!?』」


 棒を掴んだまま二人の会話を聞いていると、少女の方はとうとう怒りだして彼らが来た方と思われる方角へと歩いて行ってしまった。

 少年はそれを見てどうして良いのか分からなかったらしく、あっちとこっちを交互に見て困り顔になっている。


「追っかけなさい」


 俺は仕方なしに棒を離して、指で少女の後ろ姿を方向を指さした。

 すると少年はぐぬぬと悔しそうな表情をした後、少女の方へと駆け出していく。


「『覚えてろよー!』」


 と分かりやすい捨て台詞を残していき、そのまま少年は直ぐに少女に追いついていたが、二言三言文句を言われていた。

 とは言ってもどうやら仲は良かったらしく、二人は手を繋いで帰っていくようだ。

 何とも微笑ましい姿である。


「……はぁ、ようやく終わった」


 なんだかどっと疲れた気がした。

 あのリア充の子供たちに助けてもらえれば良かったが、言葉もボディランゲージも通じないようではどうしようも無い。

 せめて彼らの住んでいる場所が分かれば良いのだが……とそこまで考えて、ふと閃きが浮かんだ。


「ん? あ、そうか、追いかければ良いのか」


 彼らがここに一直線に来たかは分からないが、少なくとも大きく迂回してはいないだろう。

 であれば、彼らの行った方向に行けば、俺は町か集落かにたどり着けるのである。

 これは僥倖だ。


 しかし俺が怪しい風体(というか素っ裸)であることには変わりが無いので、見えるように追いかけては不安をかき立てるだろう。

 しばらくしたら追いかけよう。

 そう考えて、俺は地下通路の出口の部分に腰掛けて待つことにした。

子供(リア充)。許されるのか!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっとずつ言葉を翻訳できていくのが好き。最初から何もかも不便さが無くライトな感じより、こういう苦労や努力があるほうが楽しい [一言] 良い人、だが裸族だw 心は2時50分な人かもしれない…
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