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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第三章 修行僧
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054-深夜の尋問

 深夜。俺たちは村長の家で部屋を借りて、休んでいた。

 俺とバルダメリアさんが同じ部屋で、神官の青年は別の部屋だ。

 バルダメリアさんは俺の隣で床に敷かれた藁の上で眠っており、他の人々も同じ様に眠っているはずの時間である。


「『……むぅ』」


 ただし俺はこの時間になっても眠っていない。

 それは今日だけのことではなく、盗賊団のアジトを出てから毎日のことだった。

 まだ数日だけのことだが、俺はこの時間を利用して、自分の力の研究開発をしているのである。


 と言っても、ほとんどは座って瞑想をしながら、力を巡らせて効率化できないか試しているだけなのだが。


「『……駄目か』」


 しかして、その成果はあまり芳しくない。

 分かったことと言えば、『力』の行使に魂のエネルギーを多く使えば、その分だけ力が出ると言うことだけだ。

 また普段動いているのも微弱なエネルギーを使用しているだけの話で、謂わば全身が電池で動くモーターの様なもの。


 エネルギーがあれば動くことができ、なければ動けない。

 たったそれだけの仕組みで、しかも俺にはどうも、筋肉という概念が薄い様だった。

 変形で多少は腕は太くできるし、したところでパワーの総量はどちらかと言えばエネルギー次第であるから、特に意味がない。


 つまり俺は、筋トレをしても強くなれないし、そもそも筋肉という仕組みで動いているかすら不明なのだ。

 だから俺が強くなるためには、少しでもエネルギーの効率化を図るか、体術を鍛えるくらいしかないのである。

 と言っても、体術を教われそうな師の心当たりもないので、まずは前者を鍛えてみることにしたのだ。


「『魂のエネルギーか……』」


 しかし、そもそもこのエネルギーは何なのだろうか?

 魂が蓄えているエネルギーなのは確かだが、それが何の役割を果たしているのかが分からない。

 魂の構造も不明だし、そのエネルギーをどこから補給して、何に使用しているのか。


 宇宙と思われる場所から見た限りでは、この星に粉砕された魂が大量に降り注いでいたように見えたが……。


「『……ん?』」


 体の中でぐるぐるとエネルギーを動かしていると、何か音が聞こえた様な気がした。

 扉の方に意識意を向けてみると、コンコンという控えめなノックの音が聞こえてくる。


「(ハイ?)」


 小声でノックに返事をしながら、部屋の入り口に近寄ってみる。

 この様な夜更けに女性の部屋を訪ねるなど、いったい誰だろうか?


「(誰ダ?)」

「(ああ、やはり起きていましたね。少し話があるのです。あなただけ、こちらに来ていただけますか?)」


 それは神官の青年の声だった。

 彼はバルダメリアさんではなく、俺に用があるらしい。

 チラリと後ろを見てみると、バルダメリアさんはぐっすりと眠っているし、少しくらいなら離れても、多分大丈夫だろう。


 どのみち彼の誘いを断ると言う選択肢は俺にはないが、彼女が不安にならないのならその方が良い。


「(分カッた、行ク)」


 俺はそう返事を返して、バルダメリアさんを置いて、部屋を静かに出て行くことにした。



 ◇◇◇◇◇◇



「ついてきて下さい」


 神官の青年にそう言われて、俺は村長の家の外に出た。

 外は夜闇に包まれており、空には大量の星々が瞬き、その中で大きな月が一つだけ存在感を示している。

 いつも通りの、静かな夜だ。


「ここらでいいでしょう。話を始める前に、あなたに一つ確認しておきたいことがあります」


 神官は振り返ると、微笑を浮かべて、俺にその様に話を切り出した。


「あなたは青い血を持ち、眠らず、畏怖を与える見た目をしている。つまり私が知るところの魔物であるということでいいのですね?」


 それはドミ村長が初めて会った時に、俺にした質問と似ていた。

 違うのは、ドジ村長は俺を人間かと聞き、彼は俺を魔物かと聞いたことだ。

 以前と同じ様に人であると言ってもいいのだが……果たしてそれをしてもいいのだろうか?


 確か彼の信じる宗教の教えでは、魔物を絶対悪としているのだと、ドミ村長は言っていた様な気がする。

 つまり魔物とは悪魔の様なものであり、人がそれに近寄ることは、地球で言えば悪魔崇拝となるだろう。

 もしも俺がここで魔物になったと言ってしまえば、彼は誤解して俺を殺しにかかるかも知れない。


「……ハイ」


 今の俺は迂闊なことができないのだ。

 敵対するリスクを取るくらいなら、人に優しい魔物とでも思われていた方がまだマシである。

 実際、それは一面的には正しいことなのだから、嘘をついていることにもならないだろう。


「そうですか。では本題ですが、あなたはあの女性とどう言った関係なのですか?」

「ドノ様ナ?」


 てっきり俺自身のことを聞かれるのだと思っていたが、彼が聞いてきたのは別事だった。

 あの女性というのは、間違いなくバルダメリアさんのことだ。

 すぐに答えようと思ったが、彼女との関係と聞かれると、これが少し難しい。


 俺は疲弊し切った彼女を守ってあげたいと思っているが、彼女も俺を守ろうとしている。

 彼女のそれは強迫観念に近いものであるのかも知れないが、だとしてもその想いは本物だ。

 そして俺を弟分だと言って憚らないということは、彼女の中で俺はその様な立場であるのだろう。


 しかし彼女が一方的に言い出した関係であって、俺が了承した関係性ではない。

 もちろんそれを嫌だとか拒否するとか言うわけではないし、また彼女からしても俺に守られることを承諾したわけでもないので、結果としては「一緒にいたいから一緒にいる」という関係以外のものではないと言えるだろう。

 問題は、この様な関係性には何と言う名前がつくのか、という話なのであるが。


「ンー……ナカマ?」

「それは悩む様な答えではないと思うのですが。それに私が聞きたいのはそう言ったことではなく、何故あなたが彼女を気遣うのか、と言うことなのですよ」


 どうやら俺は彼の質問の意図を読み違えたらしい。

書いてる最中は、後書きにこんなこと書こう、とか考えているのに、いざ投稿する段階になるとそれを忘れている不思議。


しかしおかしいな、明るい話を書こうと思ったんだけど、その下準備が異様に長くなってしまっている。

それもこれも、主人公の立場が難しいのがいけないんだ!

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