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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第三章 修行僧
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052-神官青年の性格

「魔力を全く感じないのにその能力。とても、興味が湧きます」


 目隠しをしているはずなのに、やはり俺を見ていると言うことが分かる。

 それが何故なのかは分からないが、彼が俺に興味を持ってあるのは確かである様だ。


「神官様?」

「ですがまぁ、それは後にしましょうか。私はお腹が空きました。昼食にしますから、付いてきてください。……ああそれと、この獣は私が持っていきますね」

「あっ」


 しかし彼は俺から視線を外すと、さっさと村の方へと歩き始める。

 しかも途中で、俺たちが持ってきたイノシシを拾って。

 何と言うか、随分と自由な人物だ。


 彼が何を考えているのかいまいち分からないが、聞く時間はこれからいくらでもあるとか、そういうことだろうか?

 何にせよ、彼は俺たちを逃す気はなさそうなので、俺たちはついていく以外に選択肢はないだろう。


「バルダメリア、サン。行キまショウ」

「……おう」


 腕にしがみついているバルダメリアさんを促すと、彼女は不満そうに剣を剣帯に固定して、俺の腕を引っ張り始めた。

 彼女はその最中(さなか)、チラリと振り返って、俺を見上げる。

 その表情は先ほどまでと違い、眉間にしわを寄せて眉尻が下がった、不安そうな表情だ。


「何、デスか?」

「……アタシが守るからな」


 彼女はそれだけを言うと、俺の腕を両手で持ち直して、神官の後を追い始めた。

 彼女の不安は分かる。あの神官がその気になれば、俺は碌に抵抗も出来ずに殺される可能性が高いだろう。

 正直言って、俺も不安だ。


 それに俺が殺される時には、彼女も先ほどのように一緒に抵抗してくれるに違いない。それ自体は嬉しいことだ。

 だがそうなれば、彼女もまとめて殺されてしまうかも知れない。

 つまり俺は、間違ってもあの神官の青年に敵対されるわけにはいかないのだ。


「ハイ」


 だから俺は、今一度気を引き締め直して、彼の説得に当たらなければならない。

 絶対に、失敗は許されないのだから。



 ◇◇◇◇◇◇



 村の中に入って少し歩くと、たくさんの村人が集まっているところに出会(でくわ)した。

 彼らは村の広場のようなところに集まっているようだが、何か行事でもあるのだろうか?

 しかしその割には、皆一様に不安げな表情をしている。


 そして俺たちがある程度近づくと、そこから何人かがこちらに向かって駆け寄ってきた。


「神官様、もう大丈夫なんですか!?」

「地面が凄く揺れたんですが、魔物はやっつけたんですか!?」


 口々にその様な心配を口にするということは、彼らはこの神官の青年が、迫り来る俺という魔物から避難させた結果、ここに集まっていたのだろう。

 この神官はどうやら、遠距離からでも魔物の存在を感知できるらしい。

 もしもそれが魔導教会の共通した能力であるのなら、俺は彼らに知られずに近くを通ることはできないということだ。


 これは厄介なことになった。


「ええ、もう大丈夫ですよ。脅威は無くなりました」

「おお、有難うございます!」

「神官様には何とお礼を言っていいか……」

「いえいえ、これも神の信徒の(つと)めなれば」


 慇懃(いんぎん)に会話して両手の五指を合わせる神官に、村人たちが頭を下げて礼を言う。

 しかしその一方で、彼らはチラチラと俺とバルダメリアさんを見てきた。

 何やら怪しまれているようだが、それも当然だろう。


 神官やっていたのは人探しではなく魔物退治であるはずなのに、戻ってきたと思ったら人を、しかもこんな怪しげな見た目の男を連れて帰ってきたのだから。

 しかもこの村は見る限り全員が黄色人種で亜麻色の髪。つまり単一民族で構成された集落である。

 そう言った集団は往往にして、他人種に対して排他的になるものだ。


「ところで神官様、彼らは……?」

「ああ、そうでした! 彼らは魔物を探しに行った時に見つけたのです。危険な者たちではありませんでしたので、私が保護しました」

「おお、なるほど」

「でもそれって、そいつらが魔物を連れてきたってことじゃ……」

「ええ? それって……」

「これこれ、いけませんよ。彼らも必死だったのです。困ったものは助け合わなくては。彼らはこんな獣も狩ってきてくれたことですし、ね?」


 神官は白々しくそう言うと、足元に降ろしていたイノシシを村人たちに手渡してしまった。

 村人たちも現金なもので、肉がもらえると分かると、露骨に表情が喜色に変わる。


「神官様がそう言うなら……」

「まぁ、みんな無事だったわけだし、ねぇ?」

「そうでしょう? そんなことよりも、私はお腹が空いたのですが、どこか食事をいただけるところはありませんか?」

「あ、それなら村長がせめて食事をお出ししたいと言っていましたよ!」

「本当ですか? ええでは、早速伺わせてもらいましょう。村長はどちらに?」


 しかしそんな村人たちよりも、この神官の方がよほどいい性格をしているようだ。

 彼は何一つ嘘を言っていないが、誠実に説明もしていない。

 俺は(彼にとって)危険ではなかった。(彼のせいで)俺たちは必死だった。


 そして(自分が守り切れると分かったから)脅威はなくなった。

 それは本当のことだが、村人が思う様な意味ではなかっただろう。

 食事をさりげなく要求したこともそうだが、彼は全て理解して言っていると思われる。


 この青年は思ったよりも遥かに強かで、我が非常に強いようだ。


「神官様、私が村長でございます」

「あなたが!」


 村人たちの間から初老の人物が歩み出て、神官に祈りのポーズをしながら頭を下げる。


「はい。村の者が言った通り、食事に招待したいと……」

「そうですか、それは有難い。魔の導きに感謝しましょう」

「おお、来ていただけるのですね! では早速、ご案内いたします」

「分かりました。では2人とも、参りましょうか」

「え?」

「どうしました?」

「あ、ああいえ、何でもございません……」


 村長は当然俺たちを招待する気はなかっただろうが、どう見ても立場が上の神官にそうして当然の様に振る舞われては、反対など出来まい。

 まぁ、この青年なら反対されたところでゴリ押しするか、自分も辞退してさっさとどこかへ行ってしまうだろうが。

 これは少々、説得には難儀するかもしれない。俺はそう考えながら、バルダメリアさんと一緒に2人の後をついて行った。

権力者ムーヴ。貴族みたいだぁ。

歴史、魔法パワー、権力。三拍子揃った魔導教会に敵はいないぜガハハ!


とおもーじゃん?

でもドミ村長は被害をいっぱい出してるって言ってたんだよなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先回りで人の感情からくる問題を潰していくあたり、この神官は対人トラブルの対処にやたら慣れているなぁ。特に無知な者たちの集団ヒステリーがすごい厄介と知っている感じがする。 [気になる点] 獲…
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