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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第一章 ある男の転生
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005-ベリーイージー

 行くと決めて進んでみたは良いものの、歩けど歩けど暗い通路であることは全く変わらない。

 幸いにして空腹感は感じないので行動に支障は無いが、このまま行動していればその内に腹が減る可能性は大きいのだ。


「んー、でも何か、妙に調子が良いんだよな」


 しかし、一方でその心配はしなくても良いのではないか? と考えている自分がいることに、俺自身が困惑していた。

 何故なら今まで満たされなかったのが嘘のように、力がみなぎって減らないからだ。

 先ほど確かに力を使ったし、自意識が無い時もその力は使っていたはずである。


 そこにそれほど差は無い筈であるのに、何故か今は空腹感が無い。

 コレは一体どうしたことであるのか?


「何かに使ってたって事か?」


 この力が減るということは、つまり使っているか吸われていると言う事だ。

 今までの経験から、何となくそう思う。

 しかし吸われているのなら今も減っているはずであるし、と言う事は何かに使っていたということにならざるを得ない。


「身体を作ってたとか? 成長痛みたいな?」


 恐らく俺の身体はこの世界で作られたものである。

 この状態で存在していたのか、それとも突如として発生したのかは分からないが、少なくとも俺が持っていた肉体では無い。

 そのせいか魂が入っても喋ることもままならないくらいには動けなかったし、それでも肉体は問題なく生きていたので、問題があったのは謂わばOSの方なのだろう。


 そして無意識状態の時にそれが構築されたと考えるのなら、それを作るのに絶えず力を使っていたということであり、空腹だったのも何となく納得のいく話ではある。

 まぁ全部推測であるし、論に穴もありまくりなので、そうである確証は全くないのだが。


「うーん、分からん。……まぁ良いか」


 考えたところで今すぐ答えが出る問題でも無い。

 自分の身体のことでも、自分では分からないことの方が多いのが普通である。

 俺はそう割り切ると、ペタペタと通路を歩き続けた。



 ◇◇◇◇◇◇



「オリャ!」


 手を抜き手の形にして、でかい蜘蛛に突き刺した。

 歩いていると、不思議とこういうモンスター的な生物によく出会う。

 腹が減っているわけでは無いが、コイツらは近寄ると襲ってくるので、一本道で出会ったら戦わざるを得ない。


 まぁ俺も満たされているとは言っても吸えはするので、力を奪うのは変わらないのであるが。


「ウマウマ。……けど、相変わらず少ないなぁ」


 ここらに出るモンスターには魂の力が殆ど無い。

 味は変わらないので美味しいのだが、これだけ大型の生物なのに量が無いと言うのはかなり不思議だ。

 図体の割には恐ろしく鈍くて弱いので、その辺りが関係しているのだろうか?


 しかし魂の世界で出会った虫などでも、この辺のモンスターよりは力を多く持っていたので、全く以て意味が分からない。

 俺が正気を取り戻すのに時間がかかったのは、多分コイツらがこんなにショボいせいだ。

 ……まぁ、生き残れたのはコイツらがこんなにショボいおかげではあるのだが。


「お?」


 と、そのまま歩き出して角を曲がると、先の方から光が差し込んでいるのが見えた。

 どうやらようやく外らしい。

 何のための通路なのかは分からないが、随分と長いしモンスターがちょくちょくいて、実用性が全くなさそうな場所だった。


 こんなところには二度と戻るまい、と考えながら近寄ってみれば、通路の出口は階段になっていて、その向こうには木で遮られた空が覗いてるのが分かる。


「やっと外か」


 身体的には疲れていないが、精神的にはちょっと疲れた気がする。

 何せこの世界に来てからずっと暗いところでモンスターハント(ベリーイージー)していたのだ。

 自意識が無かったとは言え、記憶はあるので思いだしても楽しくないのである。


 そんなところからようやく出られると考えれば、嬉しくもなろうというものだ。


「さらば地下通路!」


 無意味にそう叫んで階段を上ると、そこには二対の人の目がこちらを見つめていた。

食事(抜き手)!

ダイレクトに命を頂く男、主人公!

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