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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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031-名前を付けよう

「あ、お頭」

「ミリーで良いって言ってるのに。つれないなぁアルルゥは」


 バルダメリアさんはそう言うと、アルルゥに引っ付いて頭を撫で回し始めた。

 完全に年下扱いをしているが、彼女の言が本当なら、2人の年齢はそれほど変わらないはずだ。


「もう、そんなに年も違わないんですよ、えへへ」


 アルルゥもそのように言っているが、しかし彼女の顔は緩んでいて、扱いも満更ではなさそうに見える。

 月並みだが、仲の良い姉妹関係に見えるというものだろう。


「ンフフフフ……可愛いなぁ、全く……。んで、こいつに言葉を教えてンだって?」

「あ、はい。今は名前を考えてるところですけど」

「名前? 何でまた」


「この人、名前も無いそうなんです。だからつけてあげた方がいいと思って」

「ふーん、喋れない上に名前もねぇんだな」


 アルルゥの言葉を聞いて、バルダメリアさんは興味深そうに俺を見た。


「ふーむ、名前ねぇ……」

「お頭?」

「……分かんねぇな」


 彼女は少し考え込んだ後、首を捻って小さく何事かを呟く。

 何かが引っかかるようなそぶりではあったが、それがなんなのか俺には分からなかった。


「まぁいいや。アルルゥがやりたいって言うなら良いだろ」

「あ、はい、ありがとうございます」

「……あ、そうだ。アルルゥー」

「え?」


 そして彼女は、何か良いことを思いついたとでも言うように、パッと顔を明るくした。


「アタシも一緒に考えてやるよ」

「えっ良いんですか? お頭は忙しいんじゃ……」

「いいんだよ、気晴らしもしたかったし、それよりもアルルゥと一緒に名前考えたいなぁーって」


 先程の理知的な顔はどこへ行ってしまったのか、デレデレとしただらしない顔でアルルゥに話しかけている。

 バルダメリアさんは本当にアルルゥが好きなんだな、ということが伝わってくる一方で、盗賊団の頭として、姉気分としてそれで良いのかと思わなくも無い。

 実際、周囲の視線も生温かいものから冷ややかなものまで様々だ。


 俺としては、またアルルゥがいじめられる原因を作っているのでは無いかと気が気では無い。


「分かりました。じゃあ、お願いします、お頭」

「よぅし! そういうことだ、お前にとびきり格好いい名前をやろう」


 アルルゥもアルルゥでその提案を受け入れてしまうし、2人の仲の良さは多少の障害などものともしないものであるようだ。

 しかし、アルルゥの種族的な独特な感性と、それを全肯定しそうな姉気分が一緒になって、まともな名前になるのだろうか。

 そのようなことを考えていたせいか、俺の顔は自分でも知らず知らずのうちに少しばかり引き攣ってしまったらしい。


 表情の変化を敏感に感じ取ったバルダメリアさんが、急に強面になって俺を睨みつけてきた。


「あ? なんか文句あんのかテメェ……?」

「イイエ。ソレハ無イ」

「……んん?」

「ええと、問題ないって言いたいんじゃないかと」

「おぉそっか。よっし、じゃあ考えるぞー」


 俺が何とか覚えた中から言葉を捻り出し、アルルゥもフォローしてくれたのでバルダメリアさんはコロっと笑顔になったが、結局名前はつけられるらしい。

 不安だ……。



 ◇◇◇◇◇◇



「アルルゥの考えた名前は、ホビット特有の可愛らしさがあるからなぁ」

「え、そうですか?」


 てっきりバルダメリアさんは、アルルゥの考えたものを全肯定してくるものだと思っていた。

 しかし意外にも、彼女はアルルゥの提示した名前に対して否定的な様だ。


「じゃあ、勇ましい名前って言うと……魔物を千匹斬ったという、トールァマデライーアァとか。でもこれは女性の名前ですし……」

「あと、ちょーっと言いづらいかなぁ」


 どうもホビット的な名前というのは、巻き舌必須なところがあるらしい。

 舌が器用な種族だったりするのだろうか?

 正直なところ、前世を覚えていない俺としては、変な意味の名前でなければ何でも良いのだ。


 だが一方で2人は案外真剣に考えてくれているらしく、彼女らの議論は続いていた。


「そうですか……ノーマルの名前ってどんなのが普通なんでしょう?」

「こいつはどう見ても人間じゃないけど、アタシが選ぶならアドバラム・カルミアールマンダとかだな」

「え、それって詩人の名前じゃありませんでしたっけ?」

「満月の庭とか千夜とか作った人」

「どっちも恋歌(こいうた)じゃないですか」

「えー、良いじゃんアドバラム。竜狩りデミストラが言うの、(わたくし)を空へ連れ去るわ……って」

「好きですよね、そういうの……」

「あとパーラス・アーロ・カムラーシュとかも好き」


 しかし……何だかこう、だんだんキャイキャイしてきたと言うか、方向性がズレてきたというか。

 俺の名前を考えていたはずだが、身内の議論中とは好きな物に話がシフトしがちなものだ。分かる分かる。

 賊にしては妙に文化的な好みであるが、そういう人も世の中には居ると言うことだろう。


 平和に生きるためには、人の好みにどうこう言ってはいけないのだ。

 まして、こういうときに下手に部外者が会話を止めたり、首を突っ込んではいけない。

 いいね?


「それも詩人のような……他にはあります? 最近の人とかで」

「全然駄目だね。誰も彼も下品な唄ばっかり作るし、欲望丸出し。もっと情緒って物を大事にして欲しいわ」

「そうじゃなくて、格好いい名前を……」

「え? あー……」


 名前、と言われて本題を思い出したのだろう。

 バルダメリアさんは一度俺を視界に収めると、直ぐに恥ずかしそうに視線を逸らした。

 乱暴な人ではあるが、どうにも彼女のこういうところは酷く可愛らしく見えてしまうのは、男の性という物か。


「そ、そうだな。やっぱり、竜狩りデミストラとかは格好いい名前なんじゃないか。お前もそう思うだろ? 格好良いよな?」

「ア、ハイ」


 照れ隠しだろう。彼女は俺に同意を求めてきたので、俺も反射的に頷いていた。

 まぁデミストラというのは悪くない。

 しかし物語の英雄と同じ名前というのは少々恥ずかしくはあるが、俺が考えているわけではないので、名前をもらえるだけ有り難いという物だろう。


「じゃあデミストラさんで決定ですね」

「いや、そのまんま一緒ってのも芸がねぇ。……デルミス。そうだな、デルミスにしよう」

バルダメリアさんの乙女チックな一面。

ギャップ萌えって良いよね。フフフ……。


主人公の名前は悩みました。それはもう悩みました。

最後は英雄の名前決めて、そこからもじって付けました。

と言うわけでデルミスくんに決定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 名前にデミ、と付くのはデミヒューマンとも被せてるのかな? 名前が無いと知った時の反応、お頭の出生は孤児とか気配がしてきた。 [一言] 主人公、仲良くなってるのはいいけどまだ商品なんだよ…
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