030-つまり合法ロリ
アタシにとってはアルルゥの話も重要だが、他の団員にとってはそうではない。
彼女らにとって重要であるのは、今現在この盗賊団を脅かしている連中を、いかに叩き潰すかということだろう。
「手は出さねぇ」
「何でですか!」
団員たちは血気盛んで、戦えばディンガード一味の男どもを殺し尽くせると思ってる。
それは正しい。アタシらが本気になれば、あの野蛮人どもは殺し尽くせるだろう。
ただしそれをやれば、盗賊団の人間の大半も死ぬことになる。
アタシらは強い。それは確かだが、奴らも弱くはない。
「あのクズどもと戦うのはリスクが大きすぎる」
そして何よりも、連中のリーダーのディンガードが問題だ。
戦っているところを見たことはない。感じる魔力も平凡以下。
そこだけを見れば、数だけは多い連中をまとめているだけの男と見えなくもない。
しかし、こちらの倍にもなる人数をまとめている人間が、平凡であるなどということがあるのだろうか?
あの集団の中で、ヤツだけは何か不気味に見える。
「だからって、このまま何にもしなかったら、やられるばっかりですよ!」
「けど……」
勿論、戦って勝てないとは思わない。
しかしやはり、団員が大勢死ぬことは許容できない。
団員は家族であり、家族は守らなきゃならないんだから。
「やっぱり駄目だ」
「頭!」
今は耐えて、逃げるしかない。
逃げるなら、北か、南か、それとも東か。
けどここから逃げたとしても、その先にもディンガードみたいな連中がうようよいるだけで、落ち着ける場所なんてそうそう見つかる物じゃない。
何処へ行っても戦いがついて回る。
だったらやっぱり、ここで戦うべきなのか?
でも戦ったら、沢山の団員が死んでしまうのは避けられない。
逃げるべきか、戦うべきか。
頭の中で二つの結論がぐるぐる回って、アタシは答えが出せないままに、また結論を先延ばしにしてしまうのだ。
◇◇◇◇◇◇
<Side 主人公>
嫌っていない相手と共に過ごしていれば、いずれは情に絆される。人間とはそういうものではないだろうか?
たった2日間の会話をしただけで、俺はアルルゥという少女にあっさりと情が湧いてしまっていた。
我ながらチョロすぎる気がしないでもない。
だが彼女は悪い人間ではなかったし、まだ成人もしていないような少女であることも大きい。
それに何よりも、彼女は勉強の際に、俺が問いに正解すると褒めてくれるのだ!
「そうです、正解です! よく出来ましたね!」とか
「正解です、偉いですね〜」とか
「今のとっても良かったです! もう一回言って見て!」とか
なんだか子供扱いされているというか、明らかに甘やかされている感じがするが、それは悪い気分では無かった。
それどころか、年端もいかない少女に甘やかされるというのは、何と言うか、ひどく背徳感を覚えてしまう。
つまり、そう、これがバブみ……!
まぁ食事の時に差し出されるのはでっかい虫であるとか、それ以前に鎖で雁字搦めであるとか、浸るには色々問題はあるのだが。
さておき、彼女の教え方は分かりやすく、少しばかり俺の会話バリエーションが増えた気がする。
また彼女はよく褒めるので、モチベーションの維持もしやすくて、大変よろしい。
俺的には小さい子供相手の教師にはもってこいの人材であるように思えるし、出来るなら盗賊なんてやめてしまって、将来はその能力を教師として役立ててほしいものだ。
「あ、そうです。今日はですね、あなたの名前を考えてきたんですよ」
「エ?」
そんな風に2日を過ごし、ここへ来て3日目の朝のことだ。アルルゥは俺との勉強を始める前に、そんなことを言い出した。
俺の名前がないことは、2日目のうちに彼女も把握するところとなっている。
それを不憫に思った彼女は、こうして俺の名前を考えてきてくれたのだ。
まぁそれは良い。良いのだが……。
「いくつかあるんですけど、今から言うので、どれが良いか言ってくださいね。ドナールゥ、カンパッタァ、ワーネンロォ、ボルボロネァ……」
アルルゥの考える名前は何と言うか、独特な響きを持っているように思えた。
そう言えば彼女の名前も少し雰囲気が異なると言うか、どこかねちっこい感じの響きをしている。
今まで出会った人物はもっと簡潔な響きをしていたと思うのだが、彼女の出身地がそのような名前をつける風習のある場所だったりするのだろうか?
「どうです、気に入ったのありました? どれもホビットの偉人の名前を拝借したものなんですけど」
「何テ言ッタ?」
何故ホビット?
ああいや、エルフがいるなら他の種族もいるのだろうが、普通に人間でいいのでは……。
ってちょっと待った、確かホビットとは小人族的な種族だったはずだ。
俺の認識では、低身長マッチョでヒゲなのがドワーフ。
単純に子供みたいに見えるのがホビット。
そんな感じの認識である。
となると、幼く見える彼女はもしや?
「ですから、ホビットの偉人の名前を……ああ、私ホビットなんですよ。ちっちゃいでしょ? もう成人だってしてるのに、いまだに子供に見られちゃって……」
「ナルホド」
彼女の外見年齢はせいぜいが12歳と言ったところだ。
しかしこの惑星の人類の成人の基準が分からないとはいえ、少なくとも大人と見られる年齢ということではある。
対して今の俺の外見年齢は若返っている、というよりもシワなどがなくなっていて20歳程度に見える状態だ。
つまり彼女基準では、俺よりも年嵩だと思っている可能性があるのではないだろうか。
ひょっとして、甘やかされているのはそれが原因なのでは?
「おぉい、アルルゥー。そいつに言葉を教えてンだって?」
などとどうでも良いことを考えていると、アルルゥの背後から、彼女に対して声がかかった。
視線をやると、長い黒髪と褐色の肌の女性が歩いてくるのが目に入ってくる。
彼女はここからちょくちょく見かけていたが、初日以降は関わることのなかった怖い女性。
名前は(おそらく)バルダメリアさんだ。
三十話も書いておいて、まだ名前も決まっていない主人公。そんな事ってある?
ぶっちゃけまだ作者の中でも決まってないとか言えない……。




