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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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029-やさしい?賊の少女

 まぁこの少女がいじめられているからといって、俺にはどうしようもない話だ。

 可哀想ではある。しかしだからと言って、俺は庇うための言葉すら満足に知らないし、そもそも俺には彼女を庇う理由がない。

 何せ俺を鎖で芋虫にしていて、牢に閉じ込めている一味には、アルルゥも所属しているのだから。


 しかし陽が傾いた頃、次の食事の時間に彼女は意外な贈り物を持ってきてくれた。


「あの、食事です。あと、荷物も……」


 彼女は最初から岩虫を捕獲してきてくれただけでなく、なんと俺の荷物を袋ごと持ってきてくれたのだ。


「アリガトウ」

「……ごめんなさい、窮屈ですよね」


 そして彼女は俺に岩虫を渡すと、謝罪を口にした。

 確かに、今現在俺は彼女に謝られる様なことをされているが、何故彼女がそれを言うのかが分からない。

 彼女ら盗賊団にとって、俺は売るための獲物のはずだ。


 それとも良心の呵責に苛まれているとでも言うのだろうか?


「ウチって本当は、人を捕まえたり売ったりはしないんです」


 そんな俺の疑問の答えを、このアルルゥという少女はポツリポツリと語り始めた。


「殺しあいとかもあんまりなくて、ちょっと脅したり、他は狩とかで暮らしてて、その牢屋も人間用じゃないですし」


 つまり正しく彼女らは盗賊であったということだろう。

 何故そんな暮らしをしていたのかは分からないが、元々はそれほど大それた悪事を働いていたわけではないらしい。

 ちょっとしたチンピラ集団というか、アウトローな人たちというか、そういう集団だったのだ。


「でも最近は他のところから危ない人たちが流れてきてて、争ってばかりだし、稼げてなくて。それでみんなピリピリしてて、仕方なくて……」


 だがそれも、抗争が始まるまでのことだったということだろう。

 水場が奪われ、仲間が何人もやられる、つまり殺されるほどの争いをしているのだ。

 それによって暮らしは荒れ果てて、人心も荒んだというところか。


「私だって、ほんとはこんなこと……みんなももっと優しかったのに……」


 もっとも、彼女がいじめの対象になったのは『頭』のお気に入りであることや、彼女自身の性格によるところがあるのかも知れないが。

 俺にとっては彼女の優しさ、甘さや流されやすさと言ったものは有り難いが、危急にあってはそれも美点とばかりは言えまい。

 決して悪い性格という訳ではないのだが。


「……ごめんなさい、こんなこと言われても困りますよね」

「……」


 正直なところ、はい、と言ってしまいたい。

 謝ったところでそれは彼女の気晴らしにしかならないし、俺はそれを受け入れ難い状況にある。

 であれば、彼女が俺にやるべきことは謝罪よりもまず、この鎖を解いて俺を逃すことだ。


 まぁそれを言ったところで彼女の心象を悪くするばかりであるし、良いことは何一つないと思われるので、俺は黙ったままアルルゥの言葉を聞いていたのだが。

 そうして一通り愚痴を言い終わったのか、少女は数度かぶりを振ると、表情を無理矢理笑顔に切り替えて見せた。


「あ、そうそう、この木板(きいた)なんですけど、思いついたことがあるんですよ」

「ン?」


 それはとても分かりやすい予感であった。

 彼女は今現在、強い罪悪感を覚えている。

 そして彼女の手には俺にとって必要な道具と、彼女が使うことでより勉学が捗りそうな道具がある。


 であれば彼女が言い出しそうなことは、大体予想がつくと言うものだ。


「これを使って、私があなたに言葉を教えてあげます」


 確かにそれは俺にとって必要なことではあるし、協力してくれるのも嬉しくはある。

 あるのだが、本当にそれほど俺を気にかけてくれるなら、今すぐこの鎖を解いて欲しいものだ。


 まぁそれはそれとして、教導はありがたく受け取るのであるが。



 ◇◇◇◇◇◇


<Side バルダメリア>


「はぁ? アルルゥが捕まえた紫男に文字を教えてるって?」

「文字っていうか、言葉? なんかあの紫男、碌に喋れないらしいです」

「喋れないだぁ?」


 あの紫男を捕まえてから2日ほどが経って、団員の1人からそんな話が舞い込んだ。

 アルルゥは捕まえた動物の世話係をしていたから、あの男の世話もアルルゥが行っていたのだろう。

 その中でアルルゥは紫男が喋れないということに気づいて、彼の持っていた道具を使って言葉を教えているのだそうだ。


 改めて整理してみても、意味が分からん。

 意味が分からんが、アルルゥがやりたいのなら止める理由もない。


「どうします、止めさせますか?」

「いや、そのままやらせてやれ」


 それに、あの男がまともに喋れないのが事実なら、売っぱらったところでまともな値はつかないかもしれない。

 実際の売値(・・)はともかくとして、確実に買い叩かれる。

 いや、そもそも引き取ってくれるかも怪しい。


 そもそもアタシらが取引している連中は、普段は盗品や動物なんかを売っている連中だ。

 人間なんて滅多に扱わないし、しかもそれが犯罪者でもない一般人となれば、扱いたくない連中も多いだろう。

 探されて騎士どもにバレれば1発でアウト。しかもあの目立つ見た目じゃ言い訳もできない。


 あれ、冷静に考えたら普通にも売れないんじゃ?


「しゃ、喋れないよりは、多少なりとも喋れた方が売値がつくだろ」

「そりゃそうですけど、そもそもあんなの買う人いるんですかね?」

「……誰かは買うだろ」


 いやいや、流石にそう、誰かは買うはずだ。

 珍しいことに変わりはないのだし、腐った貴族あたりに繋がってる連中とかが買ってくれるはず。

 というかそうでないと困る。人も売るとか決めて捕まえておいて、「売れませんでしたー」なんて洒落にもならない。


 クソッ、いくら金に困ってるからって、いつもと違うものに手なんて出すべきじゃなかったのか?

 助けてアルルゥ。


「そんなことより頭、ディンガードの連中、そろそろどうにかしないとヤバいんじゃないですか?」


 売る予定の男などどうでも良かったのか、彼女は早々に話題を変えた。

 その内容はこの盗賊団にとって、まさしく存亡の危機と呼べる事柄に関するものだ。

平和主義とは争わないこと。沈黙は金。

でもそれはそれとして、不満は普通に感じるよねっていう。


なお、言葉を教えたりするところは大体カットします。

一章でやったからね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たな教師はロリ女教師。いいぞもっとやれ(変態) [気になる点] 出てきた名称的に治安部隊? それともほかの盗賊団との勢力争いの真っ最中か。アウトローでも社会構図からは逃げられないんですね…
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