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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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028-牢屋の食事、バージョン岩虫

「つまりあなたは、言葉があんまり話せないんですか?」

「ソウ!」


 少々の問答の末、俺はこのアルルゥという少女に言葉が不自由であることを何とか伝えることができた。

 彼女はどうにも信じ難いと言った様子ではあるが、一応信じてくれたらしい。


「はぁ、なるほど。……あ、じゃあもしかして、あなたの荷物にあったあの木の板って、自分で使っていたものなんですか?」

「ソウ」


 おお何ということか、俺の持ち物はバルダメリア盗賊団が、しっかりと掠取(りゃくしゅ)していたらしい。

 アレらは俺にとって大事なものであるので、是非とも返してもらわなければならない。

 が、それは後でやることであって、とりあえず今は食料の確保だ。


 正直言って、旅の間に吸った魂のエネルギーの量は多くない。

 3日くらいなら1つの魂で事足りるし、空腹感も感じなかったので、それほど数を狩らなかったのだ。

 こんなことになるなら限界まで吸っておけばよかったと今更になって思うが、後の祭りというやつだろう。


「そんなことってあるんだ……。でも、それ何で虫を? こっちのお肉は食べられないんですか?」

「タベル、デキナイ。食ベル、大キイ、虫」

「え……動い……」


 『力』を使って腕を強引に動かし、彼女に見える様に体の前で、以前吸った岩虫の大きさくらいのボールを掴む様なジェスチャーをする。

 確か大きさは、拳より二回り大きいくらいだっただろうか?


「そ、それくらいの大きさっていうと、岩虫かな?」

「ソウ、岩虫!」

「ええ、見つかるかな……分かりました。ちょっと待っててくださいね」


 俺の説明にアルルゥは少々引き攣った顔をしたものの、頷いてどこかへ向かって走っていった。

 なんと本当に捕まえてきてくれるらしい。

 やはり彼女は、森賊の一味の割には妙に素直な(たち)をしているようだ。


 俺にとっては都合がいいのでそれはいいのだが、その調子でこのデカい鎖を解いてくれるともっと嬉しいのだが。

 あっ、腕から力を抜いたら鎖がバシィーンって……。


「『ぐふぅっ』」



 ◇◇◇◇◇◇



 それからさほど時間も経たずに、アルルゥは俺の牢まで戻ってきた。

 彼女は両手で岩虫をガッチリと捕まえており、その6本の足は元気に動いていてる。

 「殺さずに」という言い方がわからなかったので伝えられなかったが、どうやら生かしたまま捕獲してくれた様だ。


「アリガトウ」

「いえ、簡単だったからいいんですけど、これどうするんですか? 牢の隙間より大きくて入らない……」

「ン」

「ひぇ」


 俺はまた『力』を使って牢の隙間から手を出して、開いてみせた。

 彼女は俺の動作に対して怯む様に一歩退く。

 しかし俺がそれ以上動かないとわかると、手に持った岩虫と俺の手を見比べて、押し付けるようにして差し出してくれた。


「……こ、こうですか?」

「アリガトウ。『ていっ』」


 俺はそれを片手でがっしりと掴むと、指2本を硬く尖らせて、掴んだ手に押し付ける様にしながら岩虫の腹を突いた。

 こうしなければ、岩虫の外骨格を突き破ることは難しいからだ。

 岩虫が何故岩虫と呼ばれているのか。それはこの虫が、全身をイカれた強度の外骨格で包んでいるからに他ならない。


 本当に岩石の様な硬さであり、通常の手段で傷つけられることはほとんどないだろう。

 だからこそ、少女が簡単に捕獲できてしまうほどに動きが鈍いのだ。


「うわ……」


 メキリと俺の指が岩虫の腹に突き刺さり、そこから魂のエネルギーが流れ込んでくる。

 うむ、美味し。

 ここまでに鎖を引っ張ったりして力を多少使ったが、その程度は魂一つ分のエネルギーに比べれば小さなものだ。


 ちょっとの消費で多大のリターン。

 しかも食事の幸福感までついてくるのだから、超高効率と言っていいだろう。

 この不思議と飽きがこない味に、俺は満足した。


「『うまー』……アリガトウ」

「んん??」


 カラカラになるまでエネルギーをいただいて、俺は岩虫の遺骸をその場に置いた。


「あれ、食べないんですか?」

「食ベタ」


 ヤグの時も大体同じ様なやり取りをした気がするが、まぁこの食事風景を見れば、大体の人間がこのようなリアクションをとるだろう。

 様々な生物にとって食事とは口でするものであるからして、俺のこれは正しく埒外の生態と言えるのであるからして。


「そっ…………そうですか」


 何というか、一連のやり取りで、俺はこのアルルゥという少女にかなりドン引きされてしまった気がしなくもない。

 いやまぁ、仕方のないことなのではあるが、年若い彼女にとっては少々ショッキングな光景であったのだろう。

 しかし異文化コミュニケーションとは驚きの連続であるからして、彼女にはいい経験になったに違いない。


 多分。


「いよー、アルルゥ。まだそいつに飯やってんの?」


 などとやっていると、盗賊団の1人がアルルゥに話しかけてきた。

 知らない女性だ。この盗賊団で知ってる人は2人しかいないけど。


「あ……はい!」

「はぁ? 遅すぎるんだけど」

「す、すみません……」

「じゃあそれ終わったら剣の手入れと、弓の確認しといて」


 彼女はどうやらアルルゥの上司に当たる人物らしい。

 アルルゥは『頭』に可愛がられている様に見えたし、かなり強い魔法の使い手なので、そういった仕事とは無縁なのかと思っていた。

 意外と言えば意外だが、これも小規模生活集団の辛いところといったところか。


「はい」

「ああ、あと矢も作っといて。後はそうね、ゴミ埋めもやっときなさい」

「は、はい」


 と思ったのだが、どうも、そういった類の話ではなさそうだ。

 女性はニヤニヤと笑っていて、遠巻きに眺めている女性たちも同じ様に笑っている。

 対してアルルゥの表情はとても暗い。


 そしてこの場に『頭』はいない。

 つまるところこれは、所謂「いじめ」というやつなのだろうな、と見ていて想像がついてしまった。

冷静に考えると、この主人公ってこの世界的にはかなり頭のおかしな人間に見えるんじゃないかなって気がしてきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴムパッチンならぬ鎖パッチン。故・上島〇兵氏のようなリアクション芸人ルートもありかな? 容姿も見世物用のピエロ的なメイクと誤魔化すことができるかも [気になる点] 田舎のおばあちゃんレベル…
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