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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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026-賊さん曰く「リンチだ」

「『ちょっ!?』」


 アルルゥと呼ばれた女の子が出した鎖はあっという間に俺の全身を絡め取り、雁字搦めに縛り上げる。

 先ほどの『捕縛せよ(アンカウル)』とは違い、相手に接触しながら巻き付くものであるらしい。

 接触した部分が吸い付いた様に張り付いて、強引に吊り上げる様に空中に巻き上げられ、グルングルンと巻きついた挙句に最後は適当な場所にバシィーンと巨大な錠前ができて、俺は地面にポトリと落とされてしまったのだ。


 この間2秒にも満たない早業である。


「『ぐふぅっ』」

「よーしよし、よくやったぞぉ、アルルゥ」

「ありがとうございます、お頭!」


 名前も似ているし、明らかに上位版で強い魔法だ。

 あんなふうに釣り上げられてしまっては、踏ん張ることすら出来はしない。

 だがしかし、これもやはり俺の脅威にはなり得ない!


「『ふんっ……んん?』」


 俺が『力』を込めて鎖を押し広げると、光の鎖はギチギチと音を立てながら伸びて、伸びて、伸びて───千切れる様子がない。

 しかもグイグイと動かしてみても、俺の肌の上から鎖の位置が移動せず、ズラすことすら叶わない。

 試しに手を刃のように変化させて押し付けてみても、斬り込みすらも入らない。


 そして更には、力を抜くと元通りにバシィーンと、一瞬で俺を締め付けてしまうではないか。


「『ぐふぅっ』」

「こぉら、アタシのことはミリーでいいって言ってるだろぉ?」

「い、いえお頭。私だけそれは……」

「良いんだってぇ、他の連中はさぁ。何ならお姉ちゃんって呼んでくれても良いんだぞぉ?」


 何と言うことか。

 力では抜け出せず、もがいたところで何の意味もない。

 これでは抗ったところで『力』の浪費でしかないではないか!


 俺はただただ芋虫の様にグネグネ動くことしかできず、抜け出す方法が全く分からない。

 そんな間抜けな俺をよそに、頭(ミリー?)はアルルゥと読んだ少女に対してデレデレと話しかけていた。


「よぉしよし、良い子だなぁ」

「え、えへへ……」

「……さぁて、待たせたなぁ?」


 が、彼女は一通り少女に構うと、俺の方にくるりと向き直って凶悪な笑みを浮かべたではないか。

 別に怒りがおさまっていたわけではないらしい。


「よぉしお前ら、そいつを運べ。アジトでリンチだ」

「「「うーっす」」」

「『ひぃっ』」


 こうして俺は、一週間の旅を終えて、森賊にあっさりと捕まったのである。



 ◇◇◇◇◇◇



 それから俺は『頭』の部下と思われる女性たちに担がれて、彼女らのアジトと思われる場所に運ばれていた。

 木と布でできたテントが幾つもある、まるでキャンプ場のような場所だ。

 そしてここに住んでいるのは女性ばかりらしく、どうやらこの森賊は女性だけのグループらしい。


 まぁそれはいい。

 別に悪事を働くのが男だけである訳ではないし、賊が男でなければならないと言う決まりもない。

 しかし、しかしである。


「『臭い……』」


 臭いが酷いのは、どうにかならないものなのだろうか?

 いや、臭いだけではない。

 どうも彼女らが着ているものや、使っている道具などもあまり綺麗にしていない様だ。


 おかげで住んでいる人も臭いし、場所自体もひどい臭いになっている。

 この様な衛生環境で、彼女らはよく無事に暮らしているな、と思わざるを得ないレベルだ。

 まだギリギリ我慢できないほどではないが、極力この場にとどまるのは遠慮しておきたい。


「『うぐぐぐぐ……』」

「こいつさっきから何を唸ってんだ?」

「さぁ……なんかぶつぶつ言ってるし、腹でも壊してるんじゃねーの?」


 俺を運んでいる賊たちが首を捻る中、『頭』は俺が唸っている理由を知っているからか、彼女の顔は耳まで真っ赤に染まっていた。

 やはり、彼女は恥ずかしいことだと思っているらしい。

 しかしでは何故、彼女は身綺麗にしていないのだろうか?


「頭ぁ、こいつどこに置くんです?

「……あー」

「『うぐぐぐぐ……』」


「頭?」

「……」

「『うぐぅ……』」


「頭ぁ、どうしたんです? リンチするんじゃぁ……」

「っせーな! そんな気分じゃなくなっちまったんだよ、牢屋にぶち込んどけ!」

「えぇ……」

「あ゛ぁ!?」

「う、うっす!」


 これから俺はボコボコにされるのだ、と恐怖していたのだが、『頭』さんは何故だかその気を無くしてしまったらしい。

 いやまぁ、理由は分からなくもない。

 実のところ、この惨状は彼女にとって相当に恥ずかしい状況なのだろう。


 それもおそらく、彼女の倫理観的な許容量を大きく超える事態になっているのだ。

 だからここに来るまで俺が唸り続けていたことで、彼女はそれを思い出してしまい、今現在猛烈な羞恥に襲われているのではなかろうか。

 そう考えると、少々彼女が哀れな様な気もしてくる。


 いや、俺を捕まえてリンチしようとしたり、売り払う予定だったりするのは、同情の余地もない非道であるのだが。

 彼女は赤ら顔のまま、自分の臭いをしきりに嗅いで、何事かをぶつぶつ呟き始めている。


「……スンスン……やっぱ、そうだよなぁ……」

「ん? あ、なるほど。(かしら)、臭いって言われたんすね!」


 そしてそんな限界ギリギリな感じの彼女に対して、部下の一人特攻をかけた。

 俺を担いでいる女性の一人だ。

 彼女は『頭』がキレていたことを知っていたために、すぐに理由に思い当たってしまったのである。


 その空気の読めない言葉に『頭』は瞬時に反応し、発言した部下の頭を強かに殴りつけた。


「フンッ!」

「ぎゃっ!」

「テメェよぉ、死にてぇのか、あぁ……?」


 マジギレである。

 そりゃまぁそうなるだろうとしか言えないのだが、どうして人は思ったことをすぐに口に出すのをやめられないのか?

 大抵の場合は言わなくても良い言葉であるのだから、黙っておくことも時に大事だと思うのだが。


「す、すんません! でも頭。や、やっぱり水場は必要だと思うんすよ……!」


 しかしどうやら、今回の場合は部下の方にも言い分があるらしい。

 やっぱり、と言うことは、この賊の一味はこの臭いというか、不潔さを容認しているわけではない様だ。

 何か込み入った事情でもあるのだろうか?

怒りたいけど、自分に原因があるから怒るに怒れないやーつ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 道具扱いされてる子かと思ったら普通だった。むしろかわいがっていた。可哀そうな子はいなかった( ;∀;) [気になる点] 彼女たちはもう鼻が麻痺してるんですね。女子だろうと生き物、垢だって出…
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