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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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025-賊さんに出会った

 何だかよく分からないが、この状況は非常に危険な気がする。

 やたらとヤクザな言葉遣いをして、それでいて暴力に慣れていそうな彼女が、更に笛で何かに合図を送った。

 それに彼女が言った「俺が終わりだ」という言葉。


 ひよっとしてこの女性、ヤバい人なのでは?

 そう思うと、なんだか非常に恐ろしく感じてきた。


「ゴメンナサイ!」


 謝りながら、俺を捕まえている腕を掴んで何とか引き剥がそうとしてみる。

 しかし、彼女の力は想像以上に強いようで、掴んでも揺らしても、指が離れる気配がない。

 これは普通の腕力では脱出不可能だ。


「無駄だぜぇ。お前みたいなヒョロい野郎にはどうにも出来ねぇよ」


 怒り顔のまま、彼女の口角が上がっていく。

 その笑い顔は、俺にとって凄く怖い。

 逃げないと酷い結果になるような気がする。


 しかし逃げようと思うのであれば、俺も力を使って彼女をどうにかする如かないだろう。

 だがそれは、彼女を傷つけてしまうと言うことだ。

 あの、恐ろしい力を使って。


 俺の脳裏に、砦虫を殴り飛ばした時の光景がよぎる。


「タスケテ!」


 握りつぶそうと思えば、彼女の腕を握りつぶせるだろう。

 殴れば腕を折れるし、刺せば筋肉をそぎ取れる。

 更に手を刃物のようにして振り下ろせば、切断も出来るかも知れない。


 だがそれを、人間相手に俺がやれるのかと言えば、それはノーだった。

 だってそれは、多分殺人に繋がってしまう。

 俺の倫理観が、それを忌避させる。


(おせ)ぇんだよ。テメェは俺を怒らせたんだぜ」

(かしら)! 何かあったんすか!?」


 そうやってまごまごしていると、周囲の森から数人の女性が現れた。

 全員が革鎧と剣で武装している、物々しい人たちだ。

 しかし、「頭」? 「頭」って言った?


 え、それって賊的なワードじゃん。

 山賊……じゃなくて森だから、森賊なの?

 彼女たち皆?


「おう、獲物だ。だがこいつは売っぱらう前に、ボコって畳んで牢屋で痛めつける」

「『ひぃ!』」


 俺を見る頭と呼ばれた女性が語る内容は、俺を恐れさせるのに十分だった。

 前世ですら親父狩りなどの被害を見る度に震え上がっていたのに、それの明らかにグレードアップ版を俺にやると、この女性は言っているのだ。


「うわ、頭が怒ってる。何やったんだそいつ……」

「あ゙ぁ……?」

「すんません興味ないっす!」


「って言うか人間なんですか、それ? 何か凄い色してますけど……」

「知らねぇ、けど珍しいなら金になンだろ。だがその前にボコす」


 迷っている。だが迷っている時間がない。

 彼女を攻撃しなければ、俺はこのまま暴力に晒される上に、売り払われるのだという。

 人が売られると言えば、奴隷とか、それとも内臓を抜いて売るとかだろうか?


 どちらにせよ恐ろしい結果しか待っていないのなら、俺は逃げるしかない。


「『くっ』…………ゴ、ゴメンナサイ!」


 適度に『力』を込めて、俺を掴む彼女の腕を、右拳で下から殴りつける。

 するとミシリ、という音がして、俺を強固に掴んでいたはずの彼女の腕は、俺の衣服の一部を破り取りながら、上へと跳ね上がった。

 ───と同時に、右手の指の甲から、ずるりと甘美な『味覚』が流れ込んでくるのを感じる。


「ぐっ!?」

「『うっ……』」


 忘れていた。

 そうだった、殴ってもエネルギーは奪えるのだ。

 砦虫の時もそうだったではないか。


 それに、何も人間からエネルギーを奪ったのは、これが初めてではない。

 あの魂の処理場でも奪ったではないか。

 だが……だが、生きている人間から奪ったのは初めてのことだ。


 奪った量が僅かだったとしても、果たしてそれは大丈夫なことなのか?


「頭!?」

「テメェ……」

「サヨナラ!」


 だが今はそんなことを考えている場合ではない。

 俺は殴られた腕を押さえている女性に背を向けて、脱兎の如く逃げ出した。


「逃がすか! 捕縛せよ(アンカウル)!」


 しかし『頭』の女性が俺に左手を向けてそう叫ぶと、その掌から光の線がもの凄い早さで射出される。

 魔法のビーム!? かと思ったが、その線はグニャリと歪んで俺の周囲をメチャクチャに何重にも取り囲むと、瞬時に収縮して縛り付けてきた。


「『ぐぅっ!』」


 全身を縛られて脚を動かすこともできなくなり、俺は勢いのままに転倒してしまう。

 これはおそらくは魔法なのだろうけど、魔法名っぽいものを口にするのなんて初めて聞いた。

 光の紐で対象を捕縛する魔法とは、名前と意味が一致していて、まったくそのまんまの魔法だ。


 しかしその捕縛力は本物で、紐は強い力で締め付けてきており、普通の力なら身動きも取れないだろう。

 だが、今の俺にとってはそれほど脅威でもない。


「『ふんっ!』」


 全身に『力』を込めて押し退けてやりさえすれば、縛り付けている紐はギリギリと締め付けを開いてゆき、最後には甲高い音を立てて砕け散った。

 これぞ縄抜け(物理)。

 半端な拘束では俺を捕まえておくことはできないのだ。


「チッ。やれ、アルルゥ!」

「はい! 捕縛(アンカ)───」


 だが『頭』は誰かの名前を呼んで、俺の横合いから返事の声がした。

 返事をしたのは印象的な桃色の髪をした、まだ女の子と言われるような年齢の子供だ。

 そして彼女が唱えているのは、『頭』が唱えたものと同じ魔法だった。


「───せしめろ(ウールム)


 そう、思ったのに。

 彼女の両手から飛び出してきたのは、『捕縛せよ(アンカウル)』とは似ても似つかない、指3本分はあろうかという、光り輝く極太の縛鎖(ばくさ)であった。

怖い人を怒らせてはいけません。

怒らせなくても多分捕まえにきたと思うけど。


どうせーっちゅーねん!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラストで女の子っぽい名前。これは期待していいのか? ばよえーん(アルル『ゥ』なのでたぶんキャラ違い) [一言] 下手に出るほど増長するタイプに下手に出てもねえ。相手を見て対応を変えても…
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