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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第二章 森の賊
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024-旅を始めて森の中

 俺は森の中を延々と歩き続けていた。

 村を出てからもう一週間ほどは経っていて、その間殆ど歩き通しだ。

 何せ労働していた時も何故か疲れなかったし、眠ろうと思わなければ眠ることもない。


 ただしその分エネルギーの補充は必要なようで、この1週間に俺は何度も野生の動物を狩猟している。

 と言っても、遠目で動物を発見したら脚力と思考速度を強化して、突撃して腕を突き刺すだけの作業なのだが。


 しかも魂のエネルギーはとっても肉体に影響がなく、また皮や肉を剥ぎ取る技能もないので、基本殺したら殺しっぱなし。

 これでは狩猟ではなく、ただの殺傷に見えるのでは? と思わなくもない。


「『うーん、吸えない……やっぱ大きさなのかな』」


 そして今も、俺は新たに一匹の動物を獲物にしていたのだが、エネルギーを吸い出すことには失敗していた。

 獲物は掌に載るサイズの、ネズミのような生き物だ。

 以前に吸えた岩虫よりも小さく、体積にすれば拳一つ分よりも小さい。


 これまで狩った獲物も、やはり小さな生き物からはどうしても魂のエネルギーが吸えなかった。


「『すまないネズミ。お前も俺のご飯にはならなかった……せめて他の生き物の糧になってくれ』」


 俺はそう言ってネズミを地面に横たえると、音を立てずに手を合わせて弔った。


「『さて、勉強するかな』」


 そしてその場から離れながら肩に背負った袋から木の板を取り出し、言葉の勉強を始める。

 何せただ歩くだけでは暇であるし、もしも次に人に出会った時に会話も出来ないようでは、俺はまた魔物だと言われて殴られてしまうかも知れない。

 しかし片言でも喋ることが出来るのなら、その心配も多少は減るはずだ。


「タイヨー……タイ陽? キタ、西、南、ヒガシ……『発音あってるのか? うーん……』」


 とは言っても、この木の板(教科書)で勉強できることは意外と少ない。

 発音や文法が間違っていても指摘はしてくれないし、修正もしてくれない。

 それでもないよりはマシであるから真面目にやるが、1人での勉強では限界があるのは事実だ。


「ナマエ、名マエ……名前? 『あー、そういや名前も考えないとなぁ』」


 また、勉強をしながらこの単語を見る度に、俺は自分の名前について考えていた。

 初めの数日はウンウン唸って何とか思い出そうともしたが、それはどうやら不可能であるようなので諦めた。

 じゃあどうするんだという話なのだが、これがまた難しい。


「『パープル……ソウル……エキス……エナジー? うーん、安直だよなぁ。じゃあ、山田太郎とかジョン・スミスとか……いや、どうせならもっと捻るべきか……』」


 何故難しいのか? それは勿論、単純に候補に迷うという意味でもある。

 しかしそれ以外にも致命的な問題があって、俺は結論を出せないでいるのだ。


「『っていうかこの星の発音で付けちゃいけない名前が分からないから、決定できないんだよなぁ』」


 そう、例えば「さい子」さんという名前があったとして、英語圏ではphycho(サイコ)さんであったりする。

 このように、俺の知っている意味で名前を付けたとしても、別の言語圏ではヤバい意味になってしまったりするのだ。

 全国の「さい子」さん御免なさい。でも言語の違いから来る行き違いは、俺のせいじゃあ断じてないんです。


 許して?


「『いっそコル()にでもするか…………ん?」


 ふとその時、森の向こうに光が差し込んでいるのが見えた。

 近寄ってみると、どうやらその部分だけ木々が途切れており、ポッカリと穴のような陽だまりになっていることごわかる。

 そしてその陽だまりには、足元を覆うような数の薄紫の小さな花々と、それを摘んでいる1人の戦士がしゃがみ込んでいた。


「『人……女性?』」


 皮の鎧や毛皮を着込んで剣を腰に刺したその人物の格好は物々しく、一瞬男性かと思ってしまった。

 しかし長く伸ばされたボサボサの黒い髪の毛と、メリハリのついた体つきが、彼女が女性であると示している。

 また肌は褐色気味で、ヤグと同じような人種であることが見てとれた。


 彼女は花を積みながらその香りを楽しみ、そして何束かを縛っては腰の袋に入れている。


「フフッ……ん?」


 と、俺が彼女を見ていると、彼女も俺に気づいたらしい。

 何だかあまりにも可愛らしい様子で、俺は少しドキドキとしてしまう。

 しかし───


「何だぁテメェは……アタシになんか用でもあんのか? 見てんじゃねぇよ紫野郎、ブッ殺すぞ、あぁん!?」

「『えっ』」


 彼女は俺を見るや否や、鬼と見紛うばかりの形相と口調でもって、俺の襟首を掴んでグイと引き寄せた。


「『ひっ……うっ、臭い!?』」

「あぁ……? あっ」


 しかもその際に俺の鼻が感じた彼女の臭いときたら、思わず鼻を覆い、顔を背けてしまうものだったのだ。

 彼女はそんな俺の仕草に少しだけ怪訝そうな顔をしたものの、すぐさま俺の仕草に思い至ったのか、その顔を真っ赤に染め上げた。

 それが羞恥からのものであるのか、それとも怒りからのものであるのかは判別がつかないが、どうも怒らせてしまったことは確からしい。


「こ、この野郎、アタシが臭ぇって言いてぇらしいなぁ……なぁおい、テメェ死んだぜ」


 彼女は俺の襟首を掴んだまま、懐から何やら棒状のものを取り出すと、口に咥えて『ピィー!』という甲高い音を鳴らした。

 笛だ。何かの合図だろうか?

 ……なんだか、猛烈に嫌な予感がしてきた。


「いいか、テメェはもう終わりだ。逃げられると思うなよ」

「ゴ、コメンナサ……『うっ!』」


 謝ろうと思ったが、呼吸をすると酷い臭いで仰け反ってしまう。


「ふっ、ざけ、てんだなぁ、テメェはよぉ。いいかぁ? アタシは、ディンガードの野郎どもよりは、全然! 臭くないんだよ!! 分かるか、あぁ!!?」


 お陰で彼女を余計に怒らせてしまったらしく、どんどん語気が強くなっていく。

 それに合わせて襟首を掴んでいる手に力が入っていき、俺はグイグイと片手で持ち上げられていった。

 戦士然としていると言っても、ヤグやダイエンほどマッチョには見えないのにこれだ。


 女性が人間1人を片手で持ち上げるなんて、相変わらずこの星の人間の身体能力はやたらと高すぎる!

 あとディンガードって何!?

話の方向性にめっちゃ迷いました。

一章は男臭い話だったし、二章は女臭い話にしようかなって。


ただクリフハンガーがちょっとありきたりになっちゃったのは反省。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お、ついにヒロインかと思ったら、敵の下っ端女幹部的な相手だった。3人乗り自転車で逃げていく3悪党よりずっとチンピラ風な模様 [気になる点] くっさ! という感じで芸人のようにオーバーリアク…
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