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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第一章 ある男の転生
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012-2日目

 結論から言えば、俺は眠ることが出来た。

 目をつぶって眠ろうと考えると、スッと意識が沈んでいき、目が覚めると朝になっていた感じだ。

 夢は見なかったが、時間が経過していると言うことは寝ていたと言うことなのだろう。


 藁の上で寝た割には、身体が痛いと言うことも無いのは不思議であるが、得しかないのでそれは良しとする。

 しかし、しっかりと眠った割には満たされない感じがするのは気のせいだろうか?

 などと考えながら、ヤグから昨晩と同じような食事を提供されて平らげた後、仕事前に何やら用があるという彼の話を聞いていた。


「『これを着ろ』」

「おお……!」


 そう言って差し出されたのは、布の服であった。

 所謂『村人の服』といった感じの、ところどころが補修された服だ。

 ヤグの予備の服か何かだろう。サイズは彼のものであるから多少大きかった。


 なお、パンツは紐で縛るトランクスタイプだ。


「ありがとう!」

「『例を言うときは、ありがとう(シュレダン)、だ』」

「なるほど、シュレダン(ありがとう)!」


 流石にずっと腰布一丁というのもどうかと思っていたところだ。

 俺は早速それを着ると、やはり多少ぶかぶかであった。

 しかし余った袖や丈は捲ればいいし、腰紐は締めればいい。


 多少不恰好であろうが、ほぼ全裸よりはよほどマシであろう。


▷ 俺はやっと、 まともな服 を 手に入れたぞ!


「『靴は用意できなかったが、大丈夫なのか?』」

「ん?」


 俺が服を着終わると、ヤグは次にそんなことを聞いてきた。

 確かに足はずっと素足だ。

 そう言えば今まで気にしていなかったが、素足で地面を歩いていれば小石などで怪我をするものだと思うのだが、俺は不思議と平気だった。


 気になって足の裏を触ってみたが、人間のそれよりプニプニしているなと感じるくらいで、どうして大丈夫なのかは全く分からなかった。


「あー、イーク(はい)? ……たぶん」

「『ふむ。では、ついて来い』」


 俺は素足のまま土間に降り、そのまま家の外まで連れ出された。

 そこには昨日見た通り丸太が積み上げられており、何かの台や木切れなどがあった。


「『ここで木を切ってもらう』」

ラウ(はい)

「『……お前、名前はあるのか?』」


 ヤグは少し言い淀んだ後、そう俺に聞いた。


「名前? そりゃあ……」


 ある。前世の名前がある───筈だ。

 だが出て来ない。

 

「あれ?」


 まさか、とは思ったが、名前が思い出せなかった。

 自分のものだけではなく、人物名が悉く思い出せない。

 どうやら俺が思っているよりも、転生というものは失うものが多いようだ。


 まぁ普通は魂を粉々にされるのだから、失うも何もあったものではないが。

 しかし俺はいつ名前を忘れたのだろうか。

 転生とはそういうものなのか? それとも何か忘れるような原因が……あ、神様にぶっ飛ばされたせいかな?


「うーん……」


 正直なところあまりショックは受けていない。

 昨晩の味覚の方が大事だったというのはあるが、元々の人生がそれほど気に入っていたわけでもない。

 親から貰った名前は惜しいが、無くして茫然自失とするほどかというと、それほどのものではなかったらしい。


「『無いのか』」

「えーと…………イーク?」

「『そうか』」


 俺がイエスと答えると、ヤグの眉間に僅かに皺がよった。

 俺は何か悪いことを言ったのだろうか?

 しかし彼はそれ以上何も言うことはなく、倉庫のようなところから数本の鋸を取り出してきた。


 その中でも目を引くのは、両側に持ち手のある、巨大な鋸だ。


「『これで俺の言う通りに丸太を切ってもらう』」

「ラウ」


 木こりというのは気を切り倒すだけが仕事では無いらしい。

 なんだか色々と分からないことが増えた気がするが、とにかくまずは仕事ということなのだろう。



 ◇◇◇◇◇◇



 それから俺はしばらくの間、ヤグの指示に従ってギーコラギーコラと木を切っていった。

 数メートルサイズの板だの角材だのに加工していき、既に結構な量が山になっている。


「『休憩だ』」

「ラウ」


 数時間程度は活動していたはずだが、俺は疲労を覚えなかったために、言われるまでそのことに気が付かなかった。

 見れば、太陽……っぽい天体は、すでに天高く登ってるではないか。

 肉体労働をしているのに疲労を覚えないとはどうなっているのかとは思うが、腹は減っている気がするので、休憩するには良い時間だろう。


「『飯を持ってくる。ここで待っていろ』」

「ラウー」


 ヤグがどこかに行くのを見送りながら、俺はその辺の丸太の山に腰掛けた。

 空を見上げてみれば、空はいい感じの晴天で、風がザワザワと森を鳴らしている。

 深呼吸をしてみれば、濃厚な土の匂いが俺の鼻腔をくすぐった。


「キャンプみたいだなー」


 地球の都会暮らしであったため、こう言った自然のあふれる場所での生活というのは新鮮だ。

 飯はカロリーには欠けるが、野菜のスープも風味は悪く無い。味は薄いが。


「『ここにいるの?』」

「『母ちゃんはそう言ってた』」

「ん?」


 そんな感慨に耽っていると、どこからともなく子供の声が聞こえてきた。


「『ほんとにあのお兄さんなのかな』」

「『紫で人のかたちをした魔物、なんてあいつ以外にいるかよ』」


 よく聞いてみれば、声は俺の背後、つまり丸太の山の向こうから聞こえている。

 立ち上がって覗き込んでみると、背を低くして隠れるように丸太の影から作業場を覗き込んでいる子供の頭が二つ見つかった。

 昨日会った子供たちだ。


「何やってるんだ?」

「『えっ?』」

「『やべっ!?』」


 俺が彼らを見下ろしながら声をかけると、二人は肩が跳ねるほど驚いた様子を見せた。

設定説明回。

主人公視点だけですら不明なことが多くて、話が進まない!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 与作になった主人公。言葉や読み書きが怪しいと、どうしてもふられるのは力仕事になっちゃいますね。せめて算術はできることをアピールするんだ [気になる点] 肌色はこのまま紫固定? これは完全に…
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