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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第五章 山越え
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114-コーデルへの説明

「ハルマトンハ、マモノが、沢サん出タ。ヒトが、沢サん、死ンだ」

「何だって?」


 あの町が今どうなっているのか、俺は知らない。

 しかしあれだけの規模で突然魔物の襲撃を受けたのだから、多くの人が亡くなったに違いない。

 幸にしてハルマトンには戦える男たちが多くいたために戦うことはできていたが、それだけで守れるものではなかった筈だ。


 ダンジョンというのがあれほどに危険なものだなどと、俺は知らなかった。

 いや、魔導教会もあまり把握してはいなかったのかも知れない。

 あの唐突に始まった地獄の様な現象のことは、アーリスマディオ以外の神官は把握していない様に見えた。


 であれば相当に珍しい事象であるのだろうが、その発生原因は分かっているのだろうか?


「ハルマトンが魔物に? ダンジョンから魔物が溢れ出したということでしょうか。いやしかし、あの町の教会には今、多くの神官がいた筈……」


 彼の言っていることは事実だが、しかし氾濫が始まった瞬間に神官たちは町にはいなかったのだ。

 恐らくはほとんどの神官達がダンジョンに潜っていたのだろう。

 チェレミーが現れるまではあのドートシールという偉そうな神官しか見かけなかった様に思う。


 それに例え神官達がいたとしても、あの様な出現の仕方をされてはどの道被害は免れなかっただろう。


「シンカン? は、ダンジョン二行ッタ。後デ、マモノハ、下カら、来タ」

「下から?」

「下」


 コーデルが首を傾げて聞き返してきたので、俺は地面をペタペタと触りながら言葉を繰り返す。


「地面?」

「ソう」

「それが、神官様がダンジョンに行っている間に現れたと? それは……」

「沢山サん、出タ」


 俺の語彙力では詳細な情報を伝えるのはまだ難しかったが、彼も何とか俺のいっていることを理解したらしく、深刻そうに表情を歪めた。

 少し想像力を働かせれば分かるだろう。

 守ってくれる人間がいない中で大量の魔物が湧き出すということの意味を。


 あれはまるでタイミングを測った様な災害だった。

 ダンジョンという場所は魔物や物質を生み出す妙な場所だとは思っていたが、あの様な災害を起こす様では放置など出来る訳もない。

 恐らくは彼の想像しているよりも何倍も酷く、大規模な災害だったのだから。


 そういう意味では、魔導教会が魔物を敵視するのも当然と言えるだろう。


「マジかよ……」

「裏通りの酒場、無事かなぁ……いやでも、本当か? 魔物の言うことだぜ」

「ワタし、マモノ、分カッて、捕マッた」

「え?」


 しかし、俺にとってそれは良いことばかりではない。

 俺は彼らにとって敵であり、憎しみの対象なのだ。

 分かっていたことだった筈だが、あの出来事は俺にそれを強く自覚させた。


「死ヌ、思ッタ。ダカら、逃ゲた」


 恐ろしかった。そして悔しかった。

 誰かを助けると言う善行は、俺に対して何一つ良い結果をもたらさなかったのだ。

 それは酷く、俺の認識を摩耗させてしまった。


 だから盗みを働いたし、道中で人を手にかけることも容易になったのだろう。

 人間の頃ならば思いもやらなかった様なことを、俺はもうやってしまっているのだ。


「お嬢様も一緒に?」

「助ケる、貰ッタ。ソれニ……バルダメリアサン、心ヲ、ケガしテる」


 けれどそんな中でも、俺には残されているものがある。

 恩には報いる。そして子供は助ける。

 そんな心の芯とでも言うようなものを、俺はまだ捨ててはいない。


 そしてその俺に、彼女はたくさんの恩を与えてくれた。

 神官を説得し、多くの言葉を教え、そして今度は命まで助けられたのだ。

 俺から見ればまだまだ子供の彼女に、俺は返しきれないほどの恩を受けている。


 その彼女が俺を必要としているのだから、最早見捨てるという選択など取れようはずもない。


「心に怪我? 魔物がそんなこと分かんのかよ」

「チック、黙っとけ」

「だってよぉ、デックは信じるのかよ、こんな話」


「知らねぇ。だがコーデルの旦那は信じてる」

「マジで?」

「……お嬢様のご友人が皆亡くなったのは、おそらく事実でしょう。私もディンガードという卑劣漢の名には聞き覚えがあります」


「な。旦那の人を見る目が確かだってことくらいはお前も分かってるだろ」

「そりゃ、まぁ……」


 俺の何を見てコーデルが俺を信用したのかは分からない。

 それは商人だという彼の審美眼なのだろうが、血を見せて脅すことまでした俺としては根拠がわからないことに多少の不安がある。

 だが、それも今は構うまい。


 どうせ言うことを言って、聞くことを聞いたら早々に立つのだから。


「仲間を失ったのは、お嬢様にとっては辛過ぎる出来事だったでしょう。ああいや、ハルマトンのことはあなたにとっても辛いことだったんですね。申し訳ない」

「……」

「それにしても、お嬢様は目を覚ましませんね。よほど深く眠っていらっしゃるようですが……ハルマトンからは徒歩で逃げてきたんですか?」

「ハい」

「それはさぞ、お疲れでしょう」


 コーデルは都合良く勘違いしてくれたようだが、バルダメリアさんが眠っているのは、本当は疲労からではない。

 ハルマトンの牢獄で俺が魂のエネルギーを吸い尽くしてしまってからずっと、彼女は眠り続けているのだ。

 それは一度、全てのエネルギーを失ったせいなのか。


 どれだけ揺すってもうるさい音が鳴っても彼女は起きることがなく、このままでは彼女は衰弱して死んでしまうのではないか、と俺は危機感を覚えつつある。

 だがその一方で、彼女の健康状態は悪いようには見えないのが不思議だ。

 褐色の肌であるから色は分かりづらいものの血色は良く見えるし、みずみずしさが全く衰えていない。


 むしろ健康状態だけで言えば、旅をしていた時よりも良くすら見える程だ。

 それが何故かは分からないが、もしかするとこれもあの石の力なのだろうか?

 それ以外には思い当たらないと言うだけであるが、そうであれば良い、と俺は願わずには居られなかった。


 とは言え、そこまでをこの男達に離すことは俺はしないのだが。

 あまり疑ってはいないが、彼らが完全に信用出来ると決まった訳ではないし、俺の信用が落ちても困るからだ。


「西ニは、何ガ有ル?」


 もう話すことは話した。

 であれば後は、聞くことを聞いて早く旅に出るべきだ。

 俺はそのために、彼らに話を振ることにした。

めっちゃ遅れました。ごめんなさいm(_ _;)m

慎重なつもりのデルミスくんと、不思議な状態のミリーちゃん。

流石にここから酷い展開には……ならないよね?


Unityの勉強始めたんですけど、chat-gptやばいですね。

用語とかプログラムとか書いて解説頼むとかなり詳しく教えてくれちゃったりして、もう勉強のお供に必須という感じ。

正確でないこともあるという点を除けば、めちゃ有用ですよ!

まぁそこが問題なので、義務教育とかにはちょっと……って感じですが。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 昏睡状態となっても生理反応はあるわけで。デルミス君、お嬢のおしめとか大丈夫? エロい話じゃなく素人にはああいうお世話は本当にしんどいと思う [一言] 最近ゴタゴタの話が出ていますが、U…
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