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ヴァンパイア

何時もの街並み、何時もの風景。それは、俺が望んでいた物に他ならなかった。


だからこそ、このようなニュースに目が止まってしまったのだが…




「【速報】市川市に吸血鬼現る」というテロップが、ふとテレビに目をやった瞬間現れた。


「いやいや、流石に吸血鬼は…」と思ったものの、これは3分クッキングが始まる直後のニュース番組であり、事実に基づいた物のみ報道される規定がある。

そんな番組であった為か、少し背筋が寒くなった。



このニュースに釘付けになった俺は、熱心にこのニュースの内容を聞く。




──「速報です。先程、千葉県市川市に吸血鬼の男が現れました。男は、街中を歩いている男女数名に対し、暴行を行った後、肩などから出た血を輸血パックの様な物に入れ、逃亡しました。被害者の男女は、未だ意識を失っております。」




俺は怯えていた。恐怖で鼓動が5倍の速さで鳴り出し、とりあえず、と手にしたスマホで必死に吸血鬼の男について調べた。



調べた結果、男は何度もこのような犯行を繰り返しており、更には、人間とは思い難い異常な力を持っているようだった。

現に、実際に被害の出た現場を目撃していた通行人の撮った動画では、その男が引っ掻く動作を行った瞬間、既に3人が血だらけで倒れているのだ。

これを『人間』という括りにしてしまうのは、些か無理がある。だから報道陣も『吸血鬼』と、現実離れした通称を用いているのだろう。








吸血鬼を恐れていた俺に、プルル、と電話が掛かった。(あきら)からだ。


明は俺の親友であり、小学校からの幼馴染でもある。大人になってからも交流は続いており、今でもたまに電話やメールで何気ない会話を楽しんでいる。




「もしもし」


「おお、(たかし)か?いやさあ、お前ニュース見た?」


「うん。あれヤベぇよな」


「な。どうするよ」


「どうするよって?」


「いや、対策だよ。吸血鬼の」


「対策なんてないだろ。俺達が何やった所で敵う相手じゃないぞ」


「そりゃそうだけどさあ…まあ良いや。お互い頑張ろうぜ!じゃあな!」


「おお」





対策、か。

出歩かなければそれが一番良いのかもしれないが、それでは何かと不便が出る。

かと言って、下手に出歩けばリスクも高まる。

どうしたものか…


仕方ない。こういう時は…寝よう。寝て、とりあえず明日の朝仕事に備える。どうせ明日死ぬ訳じゃないし、下手に考え過ぎても良くないだろう。うん、きっとそうだ。


自分に言い聞かせるようにそう唱えると、俺はゆっくりと机に突っ伏して朝まで寝ていた。





「よう、隆」


「…おお、お前か…っ!?」




目の覚めた俺の前に居たその存在は、幼馴染でいて幼馴染ではなかった。


真紅のように濃く赤い髪に瞳、口を開くと牙のような歯、逞しく恐ろしい体つきに、厚い手袋からはみ出ている猛禽類のように鋭い爪…そんな、まるで吸血鬼ですと言わんばかりの代物が近くに立っていた。




「…お、お前」


「なあ、隆…俺と『取引』しないか?」

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