剣術指南①
「な、大丈夫だっただろ?」
「まだ油断できないわ」
「う、うん」
「すまん、俺も悪かった。まさかここまでの効果があるとは思わなかった」
起き上がった二人。
アレンもまた立ち上がり、ココネとフウカに頭を下げた。
そのアレンの核心をついた言葉。
それに。
「ん? その言い方だとあなたが元凶なの?」
「えっと、アレンくん。そんなこともできちゃうの? そ、その。えっちなことばかり考えちゃダメだよ」
フウカは眼光を鋭くし、ココネは恥ずかしそうに目を伏せる。
「えっちなことを考えるのが俺の仕事だからな。それにしても二人の感触は本当に最高でした。機会があればまたお願いします」
「こらッ、質問に答えなさい!! あなたが元凶なんでしょ!? 決めた。あなたは明日からわたしの監視下にーーってッ、ちょっと待ちなさい!!」
スキル……逃げ足(レベル1)
消費ポイント…….100
それを発動し、アレンは笑顔でその場から逃走。
その後を鬼気迫る表情で追いかける、フウカと。
「わ、わたしもちょっぴり気持ちよかったな」と呟き、ちいさくなっていくアレンを赤面して見送る、ココネであった。
〜〜〜
翌朝。
遅刻ギリギリで教室の自分の席についた、アレン。
スキル…‥.早歩き(レベル10)
それを使い、早朝早足ウォーキングでスキルポイントを500000まで溜めたアレン。
そのおかげで眠気がとれない。
「ふわぁ」
「おはよう、アレンくん」
「おはよう、ココネ。って、あれ? どうしてフウカさんがここに?」
「なに? わたしがいちゃいけないの?」
「い、いえ。そういうわけでは」
アレンの後ろの席。
そこには本来居るはずのない風紀委員長ーーフウカが座っていた。
不機嫌そうに頬杖をし、フウカはアレンを睨む。
「あなたはわたしの監視下にあるの」
「は、はい」
「だからここにわたしが居る。わかった?」
「あの、すみません。よくわかりません」
「あなたが理解する必要なんてないの。あなたは黙ってわたしに監視されておけばいいんだから。そうね、はいとだけ言ってくれたらそれでいいわ」
「はい」
「よくできました」
フウカの桃色の唇。
アレンはそれに見惚れる。
くそっ、悔しいが面だけは立派だ。
美少女に監視される。
それはアレンにとって悪くないこと。
そんなアレンに。
「あのね、アレンくん。フウカさんはアカネ先生に昨日のことを朝一番に報告したんだよ。そしたら、先生がフウカさんのクラスを変えてくれたの」
ココネはわかりやすく説明をし、にっこりと笑う。
「言っておくけど、ココネさん」
「?」
「貴女も監視対象よ」
「えぇっ、わ、わたしも!?」
「二人揃ってわたしに監視されておきなさい」
「そんなぁっ。うぅ……アレンくんだけだと思ったのに」
「そんなに悲しむな、ココネ。かわいい顔が台無しだぞ」
途端に笑顔になる、ココネ。
「か、かわいいだなんて。そんな」
「単純」
呟くフウカと。
「そこがココネのいいところだ」
頷き、ココネを撫でるアレン。
その弛緩した雰囲気。
それを、チャイムが遮る。
瞬間。
「おーいッ、全員グラウンド集合!!」
扉を開いて響く声。
教室中の視線。
それがその声の方に向けられる。
果たしてそこには。
「今日はみんなのお楽しみッ、アカネ先生の特別講義パート86剣術編!! 特別顧問のヤナギ先生を招いての豪華スペシャル版です!!」
竹刀。
それを片手に笑う軽装姿のアカネと。
「特別剣術顧問のヤナギです。今日の講義。遠慮はいらないとアカネ先生に言われました。ですので、ビシバシいきたいと思います」
竹刀を腰に差し、道着袴姿の女性がそこには立っていた。
アカネとは正反対の銀髪に、落ち着いた雰囲気。
しかし、そのヤナギの目の奥。
そこには静かな闘志が揺らいでいる。
そんなアカネとヤナギの姿。
それにココネは動揺。
「あ、あれ? 今日の一時間目の担当はアカネ先生じゃなかったのに」
だが、フウカは呟く。
「アカネ先生流のおしおきって言ったところかしら。昨日のアレに対する、ね」
そのフウカの呟き。
それを聞きながらアレンはスキルポイントを消費。
スキル……剣術(レベル1)
1レベルアップのスキルポイント消費……200
スキルポイント消費……100000
剣術(レベル500)
剣術が剣聖にランクアップ。
アレンは剣聖(レベル500)を獲得しました。