追放されし少女⑥
翌日。
学園は、異様な緊張感に包まれていた。
理由は単純。
「あれ、増えてない?」
中庭を歩く生徒が、ぽつりと呟く。
「なにが?」
「女子」
「どの?」
「全部」
視線の先。
アレンの半径二メートル以内に、昨日より明らかに人数の多い女子生徒たちが存在していた。
しかも。
「えっと、列はここで合ってますか?」
「はい、整理番号は配られてますので」
「次の“相談”の方、どうぞー」
なぜか、受付がある。
「待って待って待って」
アレンは両手を上げた。
「なにこれ」
「臨時対策本部よ」
アカネが、書類を抱えながら即答する。
「昨晩。あなたが寝返りを打った回数、覚えてる?」
「五回?」
《スキルポイント+5》
「正解」
「正解なの!?」
「つまり」
サーシャが眼鏡を押し上げる。
「無意識行動でもポイントが発生することが確定」
「最悪の確定だな」
「それに伴って」
フウカが周囲を見回す。
「“困りごとを抱えた女子”の引き寄せ精度が、上がってる」
「排出率上昇みたいに言うな!!」
「なにその言い方。貴方のおかげで、自力で巨乳化を解くのに苦労したんだから」
「そ、それはすみません」
「眠ったら精神的安定度が上がってくれて、解除。よかったわ、ほんと」
その時。
「す、すみません」
新たな声。
振り向くと、眼鏡をかけたおっとり系の少女が手を挙げていた。
「わたし、進路のことで悩んでいて」
《スキルポイント+1》
「来たぁ」
ココネが半泣きで天を仰ぐ。
「もう隠す気ないよねこの世界」
「ち、違います!」
少女は慌てて首を振る。
「胸の話じゃないです! ほんとに!」
「逆にそこを否定されると困るわ!」
「えっ!?」
混乱する少女。
その横でフィオナが小声で囁く。
「だ、大丈夫。最初はみんな、そう」
大きくなった胸。
それを抑え、頬をあからめるフィオナ。
「フィオナ。嬉しいか?」
「う、うん。これで騎士の学校に行ける」
「それはよかった」
《スキルポイント+1》
「今の優しさで!?」
「やめろ!! 俺はもう何もしてない!!」
「してないから増えるのよ」
アカネは淡々と告げた。
「結論」
黒板が運ばれ、その場で新しい条文が追加される。
・アレンの無意識行動も管理対象
・アレンの感情変動は事前申告
・新規困り女子は受付制
・ポイント増加時は全員で犯人探し
・ため息禁止(NEW)
「最後、雑すぎない?」
「雑にしないとやってられないの」
その瞬間。
《スキルポイント+3》
「誰」
全員が、ゆっくり振り向く。
フィオナが、胸の前で手を組んでいた。
「ご、ごめんなさい。アレンさんが、かわいそうだなって」
沈黙。
次の瞬間。
「感情移入でも増えるの!?」
フウカが叫ぶ。
「もう無理よこれ!」
「世界がアレンを強くしたがってる!」
「いや、世界。加減しろ!!」
アレンはその場に座り込んだ。
「なあ」
「なに?」
「俺、このままだと」
全員が息を呑む。
「学園が俺を中心に回り始めない?」
《スキルポイント+10》
「はい確定」
「やったわね」
「自覚ボーナス入った」
「もう終わりだよこの学園」
こうして。
管理される側が、いつの間にか世界から管理され始めた男と。
止まらないスキルポイント。
止められないヒロインたち。
そして増え続ける“困り女子”。
ハーレム監視生活・第二フェーズ。が静かに、しかし確実に幕を開けたのだった。
そして世界もまた、少しずつアレンを監視対象としてその表情を変えようとしていた。




