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追放されし少女③

教室の空気が、ぴしりと凍りついた。


 入り口に立つアカネとサーシャ。

 そして、その視線の先――明らかに異変が起きているフウカ。


「説明してもらえるかしら?」


 低く、冷えた声。

 それだけで教室の温度が二度は下がる。


「い、いやだなアカネさん。これは事故というか不可抗力というか、世界の可能性というか」


「一回でいいから要点だけ話しなさい」


 アカネの手には、既に魔力が集まり始めている。

 処刑前のカウントダウンだ。


「俺がスキルを誤爆しました」


「誤爆で済ませる気?」


「レベル10でした」


「アウトね」


 即答だった。


「ま、待って! アレンくん、まずは落ち着いて!」

 

 慌てて割って入るココネ。

 サーシャも溜息混じりに紙をひらひらさせる。


「“お困りの女の子募集”……この文言、完全に問題案件よ。掲示場所も神殿、ギルド、学園、全部アウト」


「世界が俺を必要としてると思って」


「思ってないわ」


 ぴしゃり。


 その間も、フウカは顔を真っ赤にして腕を組み、微動だにしない。

 怒りと羞恥とどう対処すればいいか分からない混乱が渦巻いているのが、誰の目にも分かった。


「アレン」


 静かに、しかし確実に地雷原の中心から呼ばれる名前。


「はいっ!」


「そのスキル、解除できるわよね?」


「も、もちろんです! 即解除可能! ワンアクション!」


「じゃあ」


 ぎろり。


「今すぐやりなさい」


「了解しました!」


 アレンは即座に詠唱。


「スキル解除。《巨乳化》」


 発動しない。


「あれ?」


 もう一度。


「解除、解除、解除」


 反応なし。


 その瞬間、教室中の視線がアレンに突き刺さる。


「まさか」


 サーシャが嫌な予感に眉をひそめる。


「アレンくん。そのスキル……持続条件は?」


 沈黙。


 そして、アレンは汗をだらだら流しながら告げた。


「“本人の精神状態が安定するまで”です」


「「「は?」」」


 フウカの表情が、完全に固まった。


「つまり」


 アカネがゆっくりと理解する。


「フウカが冷静になるまで、解除不可?」


「理論上は……はい」


 次の瞬間。


「アレンッ!!」


 拳が飛んだ。


 回避。

 机が砕ける。

 悲鳴。


「ちょ、待っ」


「待たない!!」


「待ってって言ったら大体の問題は――」


「増えるのよ!!」


 教室は一瞬で戦場と化した。


 そんな中。


「ね、ねえアレンくん」


 控えめに、ココネが袖を引く。


「その……フウカさんが落ち着く方法、他にもあるんじゃない?」


 その一言で、全員がはっとする。


「確かに」


 サーシャが顎に手を当てる。


「精神安定系の方法。お茶、瞑想、音楽」


「説教」


 アカネが即答。


「長時間の説教は精神を削るわよ?」


「逆効果だな!」


 アレンが叫ぶ。


「じゃあどうするのよ!!」


 フウカの怒号が響く。


 その瞬間。


「あ、いたいた! アレンさん!」


 ひょこっと顔を出す、小柄な少女。


「フィオナです! お話があって――」


 全員が一斉に振り向く。


 そして。


「教室、間違えました?」


 地獄絵図を前に、フィオナは固まった。


 沈黙。


 そしてアレンは、にっこり笑って言った。


「ようこそ。日常が崩壊するクラスへ」


 次の瞬間、また何かが壊れた。

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