王という選択肢
「おっ、なんだあの幼女」
「かわいいわね。お城の新しい召使いかしら?」
「それに……王冠を被った男もいるぞ」
「あれって肩車だよね? それに、あの王冠。ロッカス王のやつだよね」
響く人々のざわめき。
そこには好奇と疑問が入り混じっている。
そんな人々の反応。
それを肌で感じながら、アレンは声を響かせた。
「これから皆さんに大切なお知らせがあります!! どうかご静粛に!!」
その声。
それに人々のざわめきが収まる。
「ありがとうございます!! ほらっ、ロッカス。出番だぞ」
肩車された、ロッカス。
その表情。
それは自分の威厳が地に落ちる寸前なので、引き攣りまくっていた。
「ロッカス。はやくしろって」
「わ、わかっておる」
深呼吸をしーー
ロッカスは、意を決し声高らかに宣言。
「こ。国民の皆ッ、よく聞くのじゃ!! これよりこの国は自由で平等!! はっはっはっ!! 我の決断ッ、それに心の底から酔いしれるのじゃ!!」
響く可愛くも、上擦った声。
それにしかし眼下の群衆は首を傾げるのみ。
それもそのはず。
国民の皆は、幼女があの王ということを知らないのだから。
「な、なんじゃ。せっかく自由と平等になったというのに反応が薄いのじゃ」
動揺する、ロッカス。
そんなロッカスに、アレンは助け舟。
「元王!!」
叫び。
ロッカスを空高く掲げる、アレン。
それにロッカスは涙目になる。
「ひぇっ、たっ、高いのじゃ!!」
ちいさな足。
それをじたばたとし、泣きべそをかく幼女。
そのアレンとロッカスのやり取り。
それに群衆は互いに顔を見合わせ、響いた元王という言葉の意味を考えた。
元王。
それは即ち、元の王。
それがロッカス。
元の王がロッカス。
そこで、群衆は理解する。
いや理解することしかできない。
「あ、あの幼女がロッカスなのか!?」
「ほんとなの!? あの、王が?」
「どどど。どんな手を使ったんだ?」
「い、いや。まだ信じられない。あの幼女がロッカスなわけない」
「まがいなりにもこの国を世界一の軍事大国にした王だぞ? それがあんな金髪縦ロールの幼女なんて……信じられない」
「そ、そうよね」
半信半疑。
しかし、幼女がロッカスということを信じられない民たちの感情が大半の空気。
それが充満し再びざわめき出す群衆たち。
そんな国民たち。
それにアレンは気づく。
「成程。案外、あんたに一目置いてる民たちも居るんだな。圧政ばかりしてるもんだと思ってたぞ」
「我に楯突く不敬もの。それ以外のモノたちには大した圧力はかけておらぬからな。だが、我に楯突いたモノたちはこれ全て投獄してやったのじゃ。10年。それを最低刑期としてな。ふっふっふっ」
ロッカスの可愛い顔。
そこに滲むのはめちゃくちゃ悪そうな笑顔。
それにアレンは少し強めにお仕置き。
ロッカスの小さな身体。
それを脇に抱え直しーー
尻叩き(レベル20)
バチンッ
バチンッ
「ふぇぇッ、ひどいのじゃ!! わ、我は少し雰囲気を出して説明し……って、あれ? わわわ。我の尻が二つに割れておるではないか!?」
「元から二つだぞ。なんなら三つに割ることもできるが?」
尻叩き(レベル50)
「そ、それだけは勘弁なのじゃ」
そんな二人のやり取り。
それに群衆たちは口々に疑問と思いを投げかけていく。
「おいッ、その幼女はほんとにロッカスなのか!?」
「もしそうならッ、その……ロッカス様自身の口で宣言してくれませんか!?」
「そうだそうだ!! そうでないと信じないぞ!!」
その声。
それを聞き、ロッカスは宣言。
今更誤魔化しても仕方がない。
そんな思いを込めて。
「国民たちよッ、我は正真正銘のあの王じゃ!! そしてこの男が我を幼女にし、次の王となる者じゃ!!」
響いた幼い声。
それを群衆は信じる。
声音に宿る自信。
それは王そのものだったから。
加えて。
「えっ。あのアレンっていう人が新しい王様なの?」
「できるのか?」
「見たところまだまだ若いぞ」
アレンが王となること。
それに対し人々は戸惑いを露わにする。
そんな人々反応。
それを受け、アレンは自信を込めて言い放つ。
「俺はまだ学生ッ、卒業するまで王になることはありません!! この王冠はしばらくの間ッ、幼女に返します!!」
「なッ、なんじゃと!? お主ッ、まだ学生じゃったのか!?」
「はい、実は」
ロッカスをおろし、王冠を返すアレン。
そして。
「卒業したら王になるって進路もありだな。内政(レベル1000)を使えば」
「内政(レベル1000)!?」
「いや、待てよ。全国民美少女にして世界最強のハーレム帝国を創るってのもアリだな。いやいや、待て。全世界の全てのモノを美少女にして俺一人だけ男ってのもアリか。たった一人の男王……最高だぜ。平和(レベル1000)も付け加えれば完璧だろ」
アレンの口。
そこから次から次へと漏れるとんでも発言。
それにロッカスはむしろ、感心してしまう。
「す、すごいのじゃ。ここまでの女好きはじめて見たのじゃ」
「それが俺。なにがあってもそこだけはブレないぞ」
パチパチっ
なぜか響く群衆の拍手。
「ぶっ飛びすぎててすげぇ!!」
「そ、そうだな」
「ああいう奴が世界を掌握したら平和になるんじゃね?」
「だね」
その賛同の声。
それにアレンは応える。
「待っててくださいッ、いつか必ずそんな世界を実現しますので!!」
大手を振る、アレン。
その表情。
それは実に清々しいものだった。
とりあえず第一章はここまでです。
引き続き第二章に入っていきます。




