アレンVS軍事大国①
フラツカイザ。
その王都の路地裏に転移した、アレン。
「ふぅ。到着っと」
呟き、アレンは路地裏から表に出る。
果たしてそのアレンの視界に広がっていたのは--
至る所に砲台が並び、武器をもった兵士たちが行き交う軍事大国らしい街並みだった。
鍛冶屋や武器屋。
それが所狭しと店を構え、所々に訓練所の立て札がかけられた建物。
そしてそんな街中を行き交う人々も皆、どこかピリピリとした雰囲気を醸していた。
だが、アレンは動じない。
ただその胸中で、「あれが城だな」と呟き急勾配の坂道の上に聳える巨城。
それをアレンは見据えるのみ。
そんなアレンの姿。
それにかかる、透き通った女性の声。
「君、この国の者じゃないな」
その声。
それにアレンは応えた。
視線を城に固定したまま--
「はい。俺は隣国の者です。今日はこの国の王に用があってきました」
響くアレンの声。
そこには並々ならぬ覚悟が宿っている。
そのアレンに女は更に続けた。
威圧的に。
「我が王に用? 謁見をしたいのか? なら身分を証明するモノと貴国の使者を証明するモノ。そして我が国の謁見許可者とその他諸々の証明書。それを見せてみろ」
腰にさされた長剣。
その柄を握り、対人剣術(レベル100)を発動しアレンを警戒しながら。
そんな女騎士に、アレンは意識を向ける。
そして。
「俺が攻撃された瞬間。一斉攻撃しろと軍団に伝達しています。軍団全員。それに俺を対象とした千里眼(レベル100)を付与しているので」
声を発する、アレン。
「既にこの国は完全に包囲されています。今はまだ透明化(レベル100)をかけて姿が見えないですけど」
「ふんっ。そんなはったり、信じるとでも?」
鼻で笑い、剣を抜く女騎士。
「大人しく縄につけ、この不法入国者め。さもないと増援を呼ぶぞ」
「言っておきます」
「まだなにか言いたいのか?」
「発言にも気をつけたほうがいいですよ。音声伝達(レベル100)も発動されていますので」
「戯言を」
刹那。
金色に輝く一本の矢。
それがどこからともなく風を切り裂き飛来。
そして寸分違わず女騎士の剣の刃へと直撃し--
パリンッ
という音と共に、剣の刃を粉々に粉砕。
ものの見事に剣を柄だけにしてしまう。
途端、女騎士の表情から余裕が消える。
小刻みにその身を震わせ、アレンの言ったことが全て真実だと悟る女騎士。
「これでわかってくれましたか?」
「……っ」
息を飲む、女騎士。
それにアレンは、笑顔で言葉をかける。
「その話し方と立ち振る舞い。それもお国柄ですか? 見たところ、あまり自由な感じがしませんね」
街の雰囲気。
そして、こちらの様子をどこか怯えたように見つめる人々の姿。
「うーん。もしかして、圧政を引かれてたりします?」
「だッ、だまれ!!」
血相を変え、その場で叫ぶ女騎士。
「そ、そんなことを言うな!! じ、自由や平等など誇り高き我が国には不要の概念!! よッ、余所者のお前にとやかく言われる筋合いはない!!」
「……」
「じ、自由と平等など」
なぜか涙目になり、女騎士は勢いを無くしていく。
それにアレンは悟る。
「自由と平等。それがないと貴女の笑顔は守れない。女の子たちが楽しく穏やかに過ごせる世界。それが平和な世界の条件」
「いッ、言うな!! 言わないで……くれ」
響いたアレンの言葉。
それに周囲の人々も聞き入り、瞳を潤ませる。
だが、そこに。
アレンの声。
それを聞きつけ、数人の兵士たちが駆けつけた。
そして。
「おいッ、何事だ!!」
「自由。平等。その単語を言うだけで我が国では重罪。そこの男ッ、少し話を聞かせてもらおうか!!」
「お前もだガルシア。なんだその表情は? 余所者の言葉。それを否定もせずに受け入れようとするとは……ふんっ。この場で粛清してやろう」
べきっ
ガルシアの顔面。
そこに飛ぶ、兵士の平手。
歯が飛び。
しかしガルシアは堪え、静かに頭を下げる。
「も、申し訳ございません」
腫れた頬。
滴る一筋の涙。
それは抑圧され続けたモノの心の叫びのように、アレンの目には映った。
固められる、アレンの拳。
「そこに跪け」
「……っ」
「首を垂れろ、この売国奴」
片膝。
それをつき、首を垂れるガルシア。
そして、兵士の腰から抜かれる剣。
それが振り上げられ--
そこで、アレンは声を響かせた。
「宣戦布告」
瞬間。
アレンの召喚した、あらゆる軍団。
その透明化が解かれ、幾重にも重なる咆哮が天を貫く。
曰く。
かつて世界二分した軍団。
魔王軍(レベル1000)
神軍(レベル1000)
そして。
過去現在未来。
あらゆる時代の軍団と称されるモノ。
それらが全て、フラツカイザを完全包囲(レベル1000)する陣形でそこに顕現したのであった。




