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最高傑作①

日が高く昇った昼。

そして、どこかの森の中。

そこで、最高傑作にんぎょうと呼ばれた少女ロサリアは、力無く倒れ伏せる。


ちぎれた鎖と嵌めれた首輪。

それは、ロサリアがどこかの場所から生死をかけて逃げてきたのを意味していた。


〜〜〜


アレンが学園長になること。

それを撤回した、その日の午後。


近郊の森。

その中でアレンのクラスは薬草採取の授業を受けていた。


担当は緑髪の美しいカリンという名の女魔法使い。

いつもぼぉっとしているが、薬草に関しては世界で一二を争うほどに詳しい。


「はーい。皆さん、あまり遠くに行ってはダメですよ」


集まった生徒たち。

それを前におっとりとした声をあげる、カリン。

そんなカリンにアレンを含む生徒たちは素直に従う。


「「はーい」」


「では皆さん。わたしの手の中にあるこの薬草を探してきてください。制限時間は……そうですねぇ。日が落ちるまでにしておきましょうか」


「「はーい」」


「皆さんの姿はこの目でしっかり見守っておきます。ですので、なにも心配はいらないです」


切り株。

そこに座り、遠視(レベル100)を発動するカリン。


「ではでは皆さん。元気で楽しく。れっつごー、です」


そのカリンの可愛い姿と、声。

それに生徒たちは皆、心を温かくし森の中へと散っていく。


そしてそれは、アレンとココネも同じだった。


小走りで駆け出し--


「おーい、アレンくん!! こっちこっち」


アレンの数十歩先。

そこで手を振る、ココネ。


ぼいんっぼいんっ


ジャンプする度に揺れる、ココネの胸。

アレンはそれに釘付けになりながらも、必死に声を絞り出す。


「こ、ココネ!! そんな必死にお胸を揺らしてどうしたんだ!?」


「あ、アレンくんのえっち!!」


「す、すまん。って、胸を揺らすココネも悪いだろ!! いい加減自分の魅力に気づいたらどうだ!?」


「へっ? わたしって魅力あるの?」


「ありもあり。大アリだぞ。この俺が言うんだッ、間違いない!!」


興奮し、アレンは例のごとくココネに見惚れる。

そんなアレンの背後。

そこから響くフウカの声。


「あなた、胸しか見てないでしょ?」


「げっ、フウカさん」


「げっ、フウカさん。じゃないわよ。貴方の中では胸=魅力なのね」


「ごめんな、フウカさん。フウカさんの慎ましいお胸も魅力たっぷりだよ」


「殴るわよ?」


「じょ、冗談です」


いつものアレンとフウカの会話の流れ。

それは平和そのもの。


そんな二人にココネは呼びかける。


「あっ、フウカさん。ねぇっ、三人で薬草探ししようよ!! きっとすぐに見つかるよ!!」


「すぐもなにもココにあるぞ」


声を発し、薬草栽培(レベル1000)を自分の足元に発動しようとするアレン。

だが、フウカはそれを制する。


アレンの耳元。

そこでひそひそと。


「あなたね。空気を読みなさい空気を」


「えっ?」


「ココネさんは三人で薬草探しをしたいのよ」


「あっ、そう言われてみれば」


頷き、納得するアレン。

その二人の姿。

それにココネは首を傾げる。


「んー。どうしたの?」


そんなココネにアレンとフウカは笑顔を向け、応えた。


「ココネさん。今行くわ」


「おぉ、ココネ。三人で楽しく薬草探そうな」


「うんっ」


嬉しそうに駆け出す、ココネ。

そんなココネの後。

それを二人もまた、笑顔で追っていったのであった。


〜〜〜


隣国。

そこの城の地下室に響く声。


「ロサリア。おまえは我が国の最高傑作。わかったな?」


「は、はい。お父さん」


腫れ上がった頬。

そこに残る涙の跡。

薄汚い白のローブを着せられ、ロサリアという名の黒髪少女はそこに縛り付けられていた。


首輪をつけられ、鉄の鎖をまるで犬のリードのように付けられた格好で。

姿勢は正座。

加えてその太ももの上にはレンガブロックがふたつのせられている。


そんなロサリアの眼前に立ち、父であり王であるロッカスは声を響かせた。


「時に、ロサリア」


「は、はい」


「先程。我のことをお父さんと呼んだか?」


目つきが鋭くなる、ロッカス。

それにロサリアは血の気を引かせる。


「言ったであろう、ロサリア。我を呼ぶときは必ず様をつけろと」


「ご、ごめんなさい。おとう--」


飛ぶ、ロッカスの足。

瞬間。

つま先がロサリアの顔面を抉り、べきっという鈍い音を響かせる。


顔を抑え、瞳を潤ませるロサリア。

その顔を抑えた手のひら。

そこから滲むは、赤い鮮血。


「ふんっ。言葉ひとつひとつにも気を配れ。誰かを呼ぶ時は必ず様をつけろ」


「……っ」


「返事は?」


「は、はい。はい」


ぽたぽたと流れるロサリアの涙。

それを見つめ、ロッカスは舌打ちを響かせる。


「泣くな、みっともない」


「ごめんなさい。ごめんなさい、お父様」


「ふんっ。さっさと壊れてしまえばいいものを。我が欲しているのはおまえの力。最高傑作と評されるその力。自我を失い我の言う事だけを聞く、"ロサリア"という名の最高傑作にんぎょうなのだからな」


吐き捨て、踵を返すロッカス。

だが、足を止めて振り返り一言。


「そろそろ散歩の時間だ」


「は、はい」


「日が暮れるまでに戻れ」


「はい、お父様」


「日の光。それが最高傑作おまえの餌」


側に控える側近。

その数人に目配せをし、ロサリアの鎖を外すよう指示をするロッカス。


そして外されたロサリアの鎖。


「おい、連れて行け」


「かしこまりました」


側近たちに引き連れられ、地下から外へと連れ出されるロサリア。


しかしその時。

ロサリアは決心していた。


もう、ここには戻らない。

戻るくらいなら、自ら命を絶ってやると。


だが、そのロサリアの背。


それをロッカスはなにかを察したような目で見つめていたのであった。


〜〜〜


「薬草っ、薬草っ。やくそうはどこかな?」


「薬草薬草。薬草はどこに?」


「薬草。薬草。うーん、見当たらないわね」


三人は息を揃え、薬草探し。

随分と奥までやってきたが、一向に薬草は見当たらない。


「ふぅ。そろそろ、薬草栽培(レベル1000)を」


「ダメよ。後少しだけ自力で探すの」


っと、そこに。


「あっ、アレンくんにフウカさん!!」


先を行っていたココネ。

その慌てふためいた声が響く。


「ん? どうした、ココネ」


「ココネさん?」


二人は小走りになり、ココネの元へと急ぐ。


果たしてそこにあったのは--


「お、女の子? いやこれは」


倒れ伏した少女の姿。

しかしアレンは一瞬で気づく。


人間ではなく、人形だということを。


シチフクジン(レベル500)


それをもって少女を見つめ、アレンは力を行使する。


「自爆装置? どうしてこんなものが? それに……後10秒で爆発だと?」


そう胸中で呟く、アレン。

そして、少女の中に埋め込まれた自爆装置。

それを、アレンは強制転移させる。


片膝をつき手のひらをかざし--


待てよ。

強制転移した場所にも無関係な人々や女の子たちがいるかもしれない。


よしここは。


強制転移(レベル1000)

転移場所……宇宙空間


そして数秒後。


遥か上から大きな爆発音。

それが響き、空に大量の火花が散ったのであった。

最後を若干修正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自爆装置の送り先にも美女いたかもしれないから自爆装置は大空に打ち上げて後でお仕置きにいった方がいいのでは?
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