天才くん②
「随分と余裕ぶってるじゃないか」
「余裕ぶってるのはイザベールも一緒だろ」
「ふんっ。いいだろう、アレンくん。今日の放課後、校舎裏に来い。そこで目に物を見せてやるよ」
鼻で笑い。
「おいッ、いくぞ!!」
取り巻きの二人の男子。
それを引き連れ、その場を後にするイザベール。
その背を見送り、ココネは呟く。
「強そうだね、アレンくん」
「あぁ、天才だからな」
「て、天才? ふぇ、すごそう」
イザベール。
学園の中で天才と呼ばれるその男子。
魔法は勿論、あらゆる点でずば抜けている。
だが、しかし。
「で、でもアレンくんのほうがすごいよ」
ココネは頬を赤らめ、アレンを持ち上げる。
「だ、だって。その、アカネ先生にも勝っちゃったんだもん。わたしは、アレンくんのこと信じてるよ」
そのココネの姿。
それにアレンは頷き、ココネの頭を優しく撫でたのであった。
〜〜〜
そして、放課後。
アレンは校舎裏で佇み、溜まったスキルポイントを確認。
貯蓄スキルポイント……18056
念には念を入れて歩き回った、アレン。
「まぁ。こんだけあれば大丈夫だろ」
頷き、アレンはイザベールを待つ。
と、そこに。
「はぁはぁ、アレンくん」
息を切らしたココネが現れ、アレンにエールを送る。
「頑張ってね、アレンくん。わたし、応援してるから」
「おぉ、ココネ。サンキューな」
ピースサイン。
それを送り、ココネを労うアレン。
そこに響くイザベールの声。
「アレンくん。君が逃げなかったことは褒めてやる」
夕焼け。
それを背にアレンの視線の先に現れる、イザベール。
そしてその左右には取り巻きの二人も居る。
「アレンッ、敗北の準備はできているか!?」
「アカネ先生に勝ったのはまぐれだろッ、それか先生が手を抜いたに決まってる!!」
響く声。
それに続く、生徒たちの熱狂。
「きゃーっ、アレンくん!! 頑張って!!」
「イザベールッ、負けんなよ!!」
「アレンくんッ、怪我をしたらわたしが看病してあげるからね!!」
「あっ、ずるい。わたしもアレンくんの看病したい」
イザベールの後ろ。
そこにはアレンの同級生たちが見物目的で佇んでいた。
「す、すごいね。アレンくん」
「だな。さて、イザベール。準備はできたか?」
「そんなものとっくの昔にできている」
イザベール。
貯蓄スキルポイント……320。
アレン。
貯蓄スキルポイント……18056。
「聞いて驚けッ、アレン!! ぼくの貯蓄スキルポイントは320!!」
「俺のスキルポイントは18056なんだが」
「ふんっ。その程度のスキルポイントで一体なにがーーって、えっ?」
「18056。聞こえなかったのか?」
「「……っ」」
しんっと静まりかえる空間。
しかしココネだけは、声をあげる。
「すッ、すごい!! アレンくんッ、そんなにスキルポイントあるの!?」
むにっ
アレンに抱きつき、興奮するココネ。
「あっ、気持ちいい。ココネ、もっと強く」
「あっ、そ、その。ごめんなさい、つい」
我に返り、恥ずかしそうにアレンから離れるココネ。
そんな二人に、イザベールは叫ぶ。
「うッ、嘘をつくな!! 18056なんて数字ッ、あり得るわけがない!!」
スキル……縮地(レベル10)
1レベルアップ……30消費。
300消費。
縮地のレベルが20にアップ。
イザベールは縮地をレベル20にし、アレンとの距離を詰めようとする。
だが、しかし。
「なら、俺も」
スキル……縮地(レベル1)
消費ポイント……500
縮地を獲得。
レベルアップ……15000消費。
縮地のレベルが500にアップ。
縮地が瞬間移動にランクアップ。
瞬間移動(レベル500)
それを発動する、アレン。
刹那。
「へ?」
イザベールの眼前。
そこに、アレンは現れた。
まさしく一瞬で。
瞬きの間さえ与えずに。