VS死の存在①
「あ、アレンくん。夢から覚めてもその力を維持しちゃったら収集がつかなくなっちゃうんじゃない?」
「大丈夫ですよ。俺、最強ですから」
笑い、ヘルの心配を一蹴するアレン。
そしてぱちんっと指を鳴らし、夢操作を解除。
女の子たちを消し、アレンはヘルと二人きりになる。
「ところで、ヘルさん」
「な、なにかしら?」
「俺が居る限り世界を牛耳るなんてことは不可能ですよ。ヨルムンガンドとフェンリル。その二人を俺に差し向けたのも、俺の存在が邪魔になったからですよね」
心眼(レベル500)
それを使いヘルの心を読む、アレン。
そのアレンの的を得た言葉。
それにヘルはあからさまに焦る。
「えっ。そ、その。どうかな?」
「この世界を死者の国にする。生きとし生けるもの全てを自分の配下にする。そして、全てが自分にひれ伏し抗うことのない世界。それを作ろうとした」
「……っ」
「最強になったのがこの女の子大好きな俺じゃなきゃ、ヘルさん瞬殺です。それこそ跡形も残らないレベルでです」
「俺でよかった」という風に声を発し、ヘルに向け手のひらをかざすアレン。
そして。
「これを機に改心しましょう。二度と悪いことをしようと思わないように」
「えっ、そ、そんなことできるの?」
「はい」
頷き、アレンは力を行使。
自分のかざした手のひら。
その前でーー
「改心(レベル500)」
瞬間。
ヘルの中にあった悪の心。
それが一瞬のうちに浄化。
加えて。
「心付与(レベル500)。慈悲の心をヘルさんに付与。これでヘルさんは慈悲深き女神になりました」
心を付与し、アレンはヘルを完全に慈悲深き女神にしてしまう。
眩い光。
それに包まれ、そして数秒後。
「くっ、こ、このわたしが。生きとし生けるもの全てを愛する女神になってしまった」
ヘルの心。
そこから悪しき感情が消え、完全な女神になってしまう。
そのヘルの姿。
それにアレンは益々惚れてしまう。
「お美しい。これは、最高傑作」
「最高傑作ってあなた。わたしを普通の女神にしたら、生と死のバランスが崩れちゃうわよ」
「えっ、そうなんですか?」
「わたしは冥府の女王。普通の女神になっちゃったら冥府から死の存在が溢れちゃうの」
「死の存在が溢れる?」
「えぇ、管理できる存在が居なくなっちゃうから。それこそ、わたしとオーディンとのいざこざ。それよりもっと深刻な事態になっちゃう」
「まっ、俺に任せてください」
自分の胸に手をあて、自信を露わにするアレン。
「死の存在ってことは……一度死んだ存在が復活するってことですよね」
「えぇ。まだこちら側の存在が復活するだけなら、問題はない。でも。かつて滅んだ魔王や、それより前に世界を混沌に陥れたモノたち。そんな今の世界では決して太刀打ちできな存在たちが復活してしまったらーー」
「もう一度、葬ってやります」
決意に満ちた眼差し。
それをもって、言い切るアレン。
「なんて言っても。今のこの世界には俺が居るんですからね。安心してください」
「そ、そうね」
胸に芽生えた不安。
それをヘルはアレンの言葉で払拭する。
そのヘルの姿。
それを見届け、アレンは夢から醒めようとした。
「じゃっ、ヘルさん。俺、夢から覚めますね」
「う、うん。現実世界は大変になっているとは思うけど、気をつけてね」
「ヘルさんはどうします?」
「と言うと?」
「一緒に現実世界に帰りますか? それともまだここに?」
「この夢はあなたの夢。貴方が覚めたら、わたしも自動的に現実に帰るわ。どこで、会えるかはわからないけど」
「そうなんですね。では、また現実の世界で」
ヘルに笑いかけ、夢から覚めていくアレン。
光の粒子に包まれ、薄くなっていくアレンの姿。
それを見つめ、ヘルは呟く。
「本当になぜかしら。あんな存在がこの世界に現れた理由。そうね……理由なんてないのかも。アレンという名の存在。それが現実に居る。ただそれだけなのかもしれない」
「あっ、ヘルさん。これ、忘れてました」
指輪創造(レベル500)
「えっ?」
「婚約指輪です」
「えっ? えっ? わたしの薬指に指輪?」
「へへへ。それじゃ、また」
ヘルの薬指。
そこに輝く婚約指輪。
それに目を点にしながらもヘルは頬を赤らめ、そしてアレンは照れくさそうしながら夢から覚めていったのであった。
〜〜〜
そして、現実世界。
そこではヘルの言った通りのことが起こっていた。
朝焼けの残る、とある山中。
そこに現れた悪しきモノたち。
「久方ぶりの現世。実に良い」
「くくくっ。はっはっはっ。よもや再び、この世界に顕現することができようとは」
「人間根絶やし。魂。ぜんぶ。わたしのモノ」
魔王。
破壊神。
死神。
おォォん!!
その他のかつて滅んだ悪しきモノたち。
それが雄叫びをあげて復活し、世界へと牙を剥けようとしていた。
だが、そこに。
「おっ、ヘルさんの言った通りだ」
夢の世界から帰ってきたアレンの声。
それが堂々と響く。
そして。
「見たところ死神さんぐらいだな。女の子っぽく見えるのは」
そう声を発し、大きく息を吸い込むアレン。
そのアレンの姿。
それを悪しきモノたちは嗤う。
「なんだあのモノは」
「滑稽。実に滑稽」
「餌にはもってこい」
おォォん!!
だが、その悪しきモノたちの余裕。
それは、一瞬のうちに消え去る。
息吹(レベル1→5000)
息吹→ドラゴンブレス(レベル500)→神の息吹(レベル1000)→宇宙息吹(レベル5000)
宇宙息吹。
それは宇宙を移動させる息吹。
それが吹かれーー
「ぐぎゃあ!!」
「ひぃぃ!!」
「そんな馬鹿な!!」
おォォん!!
「えっ、ちょっ。なにそれ?」
死神以外の悪しきモノたち。
それが跡形もなく、消滅してしまう。




