冥府の女王①
フカフカのベッド。
そこでアレンは目を覚ます。
昨夜、アレンは女の子たちと露天風呂に入り城の中で一夜を過ごした。
だが、しかし。
「くそっ。鼻血を噴き出して卒倒したおかげでなにもできなかった。おかげで気づけばベッドで気づけば朝。心惜しいぜ、全く」
胸中で愚痴り、アレンはため息。
"「わーいっ、アレンくん。わたし、マッサージうまいんだよ」"
"「アレンくんっ、仰向けになってくれるかな? 泡が残らないように洗ってあげるから」"
"「おい、アレン。ちゃんと肩までつかれよ」"
"「あれ。顔が真っ赤ですね、アレンくん。のぼせちゃったんですか?」"
ブラックドラゴン。
ヘスティア。
そして、アカネとヤナギ。
湯船の中。
そこでその四人に囲まれ、アレンはもみくちゃにされた。
勿論、海パンを履いてはいた。
しかし、ブラックドラゴンとヘスティアに左右から引っ張られーー
「これ邪魔だよっ。脱いで脱いで」
「アレンくん。わたしたちはタオル一枚だけなんだよ? 男の子のアレンくんは男らしく裸になるべきだと思うな」
と胸を押しつけられながら引きちぎられそうになり、千切れそうになったところで鼻血を噴射。
そのまま卒倒してしまったのだ。
今思い返しても情けない限り。
しかし、アレンはめげない。
上から自分を心配そうに覗き込んでいた女の子のみんな。
その表情を思い出し、アレンは決意。
「せっかくのお風呂。なのに女の子たちに不安な思いをさせた俺はなんてやつなんだ。よし、次こそは。目一杯楽しんでもらおう」
そう胸中で呟き、深く頷いたのであった。
〜〜〜
窓から差し込む、月光。
それに照らされながら、その者は目を閉じていた。
「ヨルムンガンドは消滅。フェンリルは囚われの身。ふふふ。オーディン側の駒は思った以上にやるようね」
閉じた瞼。
その裏に映し出された光景。
それに、ヘルは楽しそうに胸中で呟く。
千里眼(レベル500)
それを使い、ヨルムンガンドとフェンリルの様子を見つめていたヘル。
「それにしても」
瞼を開け、ぱちんっとヘルは指を鳴らす。
刹那。
ヘルの肩の辺りの空間。
そこが歪みーー
「かぁかぁ」
と鳴き声をあげ、一羽の鴉がその歪みから現れヘルの肩に留まる。
その鴉に向け、ヘルは言葉を続けた。
「あのアレンって名前の人間。ううん。存在って言ったほうがいいわね。あんな存在が一体どうして。この世界に現れたのかしら?」
「かぁかぁ。かぁ。かぁ、かぁ」
「うんうん……そんなことはわからない。考えるだけ無駄だ。現れたという現実。それが目の前にあるだけなのだから。そうね、その通り」
頷き、ヘルは鴉に微笑む。
意思疎通(レベル500)
それを使い、闇の使者たる鴉と優雅に会話を交わし微笑むヘル。
その姿。
それは、冥府の女王そのもの。
「だったら」
青の双眸。
そこに闇を宿し、ヘルは月を見つめる。
そして、呟いた。
「"夢の中"で会いましょう、アレンくん」
その声。
そこには宿っていた。
アレンに対する好奇と敵意。
それが確かに。
〜〜〜
翌日。
教室の自分の席。
そこにアレンは座っていた。
アレン
貯蓄スキルポイント153669004566841369646741454566958058255695858663250939993362
頭の中。
そこに浮かぶ数字の羅列。
それにアレンはため息をこぼす。
呼吸(レベル1)と、徒歩(レベル1000)。
そのおかげでアレンのスキルポイントは計測不能の境地まで達していた。
「ふぅ。全てのスキルを獲得しても余るレベルなんだが?」
胸中で呟き、自分の最強っぷりに惚れ惚れするアレン。
窓の外。
それを優雅に見つめーー
「やれやれ。最強すぎるってのも考えものだな」
アレンは何気なく呟いてしまう。
その呟き。
それに応えるのは、いつものフウカの声だった。
「最強すぎるっても考えものだ。って自分で言って恥ずかしくないの?」
「おっ、フウカさん。今朝も相変わらずのお美しさ。可愛すぎだろ」
「はいはい、ありがとう」
そっけなく返す、フウカ。
「それにしても、あなた」
「ん?」
「昨日の今日でよく普通に学校に来れたわね。それにどうして未だ学校に来てるの? もう来る意味なんてないでしょ。そのお得意のスキルポイント消費でなんでもできちゃうんだし」
いつもと変わらないフウカの達観した眼差し。
それにアレンは虜になってしまう。
「その目、最高。あ、あの、フウカさん。もうちょっと睨みつける感じでお願いします」
「は?」
「そう、それです。それ。うーんっ、相変わらずフウカさんは最高だぜ」
「殴るわよ?」
更に目つきを鋭くする、フウカ。
だがアレンは全く動じない。
「殴るなら強めで。できれば、その。罵りながらお願いします」
そんなアレンにフウカはため息。
「はぁ、もういいわ。いくら強くなってもあなたはあなたね。はじめて会った時からなにも変わってない」
「それって、その。褒めてくれてるんですか?」
「褒めてはないけど。蔑んでもいない。まっ、中間って言ったところかしら」
「そういうところも可愛いですよ、フウカさん。フウカさんは俺とはじめて会った時と比べてますます可愛くなってます。抱きしめてもいいですか?」
「だめよ」
即答し、アレンから視線を逸らすフウカ。
しかしその横顔は、どこか楽しそうだった。
そんなアレンとフウカの側。
そこに歩み寄るはーー
「おっ、居た居た」
「……っ」
ソフィを抱いたサーシャと。
「アレンくんっ。いちゃいちゃするならレイラとしよ?」
むにっ
「アレンくん、おはよう。昨日は……その、大丈夫だった? 鼻血を出しすぎて気を失っちゃったんだよね」
なでなで。
有無を言わさずアレンの顔に胸を押し付けるレイラと、優しくアレンを撫でるココネ。
その四人だった。
「レイラッ、朝っぱらからなにやってんの!?」
「うーんとね。朝のご挨拶。フウカさんもどう? ただのおはようより効果あるよ」
むにぃっ
レイラの胸。
それに埋もれ、耳まで赤くなるアレン。
そんなアレンに、ココネは焦る。
「だっ、ダメだよレイラちゃん。またアレンくんが失神しちゃうよ」
「やんっ♡」
懸命にレイラからアレンを引き離しーー
ぎゅっ
「アレンくん大丈夫?」
お次はココネの胸に埋もれる、アレンの顔。
「むうっ。返してよッ、ココネさん!! アレンくんの顔面に胸を押し付けるのはレイラなんだから!!」
「ダメだよっ」
むにっ
むにっ
二人の胸を行ったり来たりする、アレン。
それにアレンは昇天しかけてしまう。
だが、そこはフウカ。
「やめなさいッ、風紀を乱しすぎなのよあなたたち!!」
叫んで立ち上がり、フウカは二人からアレンを引き離す。
だが、レイラは収まらない。
「ずるいっ。独り占めするつもり?」
ふくれっ面になり、拗ねるレイラ。
そんなレイラの肩。
そこに手を載せ、サーシャは声を発する。
「はい、そこまで。レイラ。ちょっとだけ、先生に時間をくれないかな?」
「はーい」
素直に頷き、けろっとするレイラ。
「さ、サーシャ先生」
「アレンくん。相変わらず君のまわりには異性がたくさん集まるな。ははは」
軽く笑い、サーシャはフウカとココネにも目配せをする。
その目配せ。
それに二人もまた落ち着き、自分たちの席に着席。
それを確認し。
「よし、と。これで落ち着いて話ができる」
そう声を響かせ、アレンの机に腰掛けるサーシャ。
そして。
「改めて、アレンくん」
「は、はい」
「大変喜ばしいことに。ソフィちゃんが目を覚ました」
「お、おはよう。ございます」
おどおどしながら、アレンに挨拶をするソフィ。
それにアレンは感動。
「今日は最高の日。よしっ、今日をソフィちゃんの誕生日にしよう!!」
「たんじょうび?」
「誕生日。それは素晴らしい日。よしッ、そうと決まったら早速パーティーだ!! 時間は今日の夜!! 場所はお城!!」
立ち上がり、興奮するアレン。
そのアレンの姿。
それにサーシャとフウカ以外の面々は盛り上がる。
「レイラもレイラもっ」
「わたしも行きたいっ」
レイラとココネは興奮。
「よしっ、景気付けに一発」
アレンは力を発動。
時空移動(レベル1000)
これより全世界の時間を10時間後に移動。
記憶操作(レベル1000)
それに伴う全生命体の記憶を上書き。
転移(レベル1000)
10時間後。全生命体が居るべき場所に全てを転移。
途端。
時間が10時間後に進み。
アレンたち面々とアレンが指定した面々が全員、城へと移動する。
その光景。
それに、サーシャとフウカは顔を見合わせーー
「らしいですね。力の使い方が」
「あぁ、そうだな」
と声を漏らし、ちいさく笑ったのであった。
〜〜〜




