VSフェンリル
「め、めちゃくちゃかわいい」
美少女化したヤマタノオロチ。
それにアレンは我を忘れそうになる。
「くっ。俺としたことが自分で自分の弱点をつくりだしてしまった。なんだあの。大人しそうで物静かな黒髪清楚系巨乳美女は。和服とか反則だろ」
そう胸中で呟きながら、ふらふらとヤマタノオロチに歩み寄っていくアレン。
そのアレンの姿。
それはまさしく、目の前の釣り餌に食いつかんとする空腹の魚。
だがそこに。
概念飲食(レベル500)
それを発動し、アレンに向け疾走するフェンリル。
「がっ、ガルルルッ、にんげん!!」
四つん這いになり、風の如く駆ける姿。
それはまさしく、獲物を見定めた獣そのもの。
そのフェンリルの姿。
それを見つめ、アレンは立ち止まる。
そして。
「概念飲食(レベル500)。あらゆるモノを飲み込み、そして食らう力」
そう声を響かせ、アレンはフェンリルの姿を目で追う。
なんとかアレンの死角に潜り込もうとする、フェンリル。
獣独特のステップとフェイント。
それを人の目では追えない速度でフェンリルはかける。
更に加えて。
同化(レベル10)
大気と同化して透明になり、完全に目では視認できないようになるフェンリル。
「これで、いける。あいつ、バケモノ。でも見えない。だからなにもできない」
胸中で呟き、フェンリルはアレンの背後に回り込む。
そして。
「がるるるっ。ここで噛みつく」
決意し、アレンに飛びかからんとするフェンリル。
瞬間。
「あらゆる概念を飲食する。それってつまりあんたが飲食したその概念自体が無かったことになるってことか?」
呟き、アレンは空気と同化し見えないはずのフェンリルのほうを見つめた。
それに、フェンリルは焦る。
「み、見えているのか。このにんげん」
その呟き。
それにアレンは応えた。
「丸見えだぞ。その程度の同化(レベル10)じゃ、俺の目は誤魔化せない」
完全捕捉(レベル100)
光瞬く双眸。
それをもって、フェンリルを見定めるアレン。
「くっ、こうなったら。全部、ぜんぶ。たべてやる」
同化を解き、フェンリルは更に力を行使。
引き留め役のヨルムンガンド。
その手綱が無くなった今、フェンリルの欲をとどめる存在は誰一人として居ない。
概念飲食(レベル500)
口を大きく開け、「空気を食べる」と宣言し口を閉じるフェンリル。
瞬間。
世界中から空気という概念が無くなりそうにーー
だが、そこはアレン。
「概念創造(レベル1000)」
呟き、フェンリルにより無くされそうになった空気という概念を創造。
それによりフェンリルの概念飲食は無効。
概念飲食より上位の概念創造。
それは、思った概念を一瞬のうちに創造するいわば禁忌のスキル。
「が、がいねん。そうぞう」
震え声。
それを漏らし、後ろに大きく飛び退くフェンリル。
「に、にんげん。なのか? あいつ。ちがう。そ、そうだ。ヨルムンガンドをあんなふうにしたやつがにんげんのはずがない」
焦り、フェンリルは小刻みに身体を震わせる。
そして、決心した。
「に、にげる」
頷き、全速力で駆け出そうとするフェンリル。
だが、そこに。
「どんな獣でも出れない檻」
響くアレンの声。
それに呼応しーー
「きゃうんっ」
フェンリルの周囲。
そこに金色に輝く檻が出現。
そしてそれは、アレンが思った"どんな獣でも出れない檻"そのものだった。
そのアレンの最強を超えた最強っぷり。
それに、レッドとブルーは無意識に拍手を送ってしまう。
ぱちぱちっ
「す、すげぇですね。相変わらず」
「はい。すごいです」
そんなレッドとブルーの側。
そこに転移し、ブラックドラゴンは二人を抱きしめる。
ぎゅっ
「二人共。もう身体は大丈夫?」
優しいブラックドラゴンの問いかけ。
それに二人は笑顔で応えた。
「大丈夫ですよ。あの人間……いいえ。アレンに助けられたので」
「はい。流石としか言いようがありません」
「うんうん。だね。うーんっ。でもアレンくん、どこまで強くなっちゃうのかな? ふふふ。楽しみだな」
そんな三人の声。
それに応えるように、更に続くアレンの最強っぷり。
「よし。一歩歩く度にスキルポイントを999999999得られるようにするか。そろそろ、ポイントも枯渇してきたからな」
「お、おまえ。ぽいんとをふやせる。のか?」
「あぁ。今までは一歩で一ポイントだったんだが、これからは9999999999にする」
「きゃうんっ」
アレンのとんでも発言。
それに怯えた鳴き声を発する、フェンリル。
「色々探ってみたんだが、スキルポイントを増やすスキルがこれしかない。呼吸をするだけで増やせればもっと効率がいいんだが……あっ、ないなら作ればいいか」
思いつき、アレンはスキル創造という名のスキルを作り出してしまう。
スキル創造(レベル1)
呼吸(レベル1)を創造。
よしこれで呼吸するだけでポイントを得られるようになったな。
更に強くなったアレン。
それを目の当たりにしーー
「そ、そうだ。スキルという概念。それをたべてしまえば」
思いつき、フェンリルはスキルという概念を消そうとする。
しかし、アレンを前にしてはそんな小細工は通用しない。
「言っておくが」
「な、なんだ。にんげん」
「スキルという概念を消しても、スキルの代わりになる概念を創造するだけだからな。それに、それを許すほど俺は馬鹿じゃない」
スキル封じ(レベル1000)
途端。
フェンリルの概念飲食が封じられてしまう、
「く、くうーんっ。こここ、これじゃただの狼少女」
檻の中で冷や汗を垂らし、ただの狼少女に成り果ててしまっ
たフェンリル。
そのフェンリルの姿。
それを見つめ、アレンは一言。
「お手」
檻の前。
そこに片膝をつき、手のひらを差し出すアレン。
獣神(レベル1000)
それをアレンは発動している為、フェンリルは従うしかできない。
「わ、わんっ」
と鳴き声をあげ、フェンリルはお手をする。
それにアレンは悶絶。
「か、かわいい。け、獣耳最高」
「く、くうーんっ」
「お手」
「わんっ」
「おかわり」
「わ、わんっ」
「最高。天にも昇る気分だぜ」
フェンリルの従順さ。
アレンはそれに心を打たれ、いつものアレンに戻る。
「よしっ、フェンリルさん。次は伏せをお願いします」
「こ、こうか?」
「ますます最高。くそっ、檻が邪魔だな」
檻を消滅させ、フェンリルと直に触れ合うアレン。
「よしよし」
「……っ」
嬉しそうなアレンと、まんざらでもないフェンリル。
そんなアレンにかかる、ブラックドラゴンの声。
「おーいっ、アレンくん!!」
「はい!!」
「この娘ッ、どうしよっか!?」
アレンの姿。
それを遠目で見つめ、小首をかしげるヤマタノオロチ。
その側でブラックドラゴンは手を振り、レッドとブルーはヤマタノオロチを興味津々で観察していた。
「どこからどうみても人間の女ですね」
「えぇ。匂い、身体つき。そして容貌。先程までヤマタノオロチだったとはにわかには信じられません」
そんな面々にアレンは応える。
「ごめんなさいッ、今行きます!! ってなわけで、フェンリルさん。失礼します」
「!?」
フェンリルをお姫様だっこし、ヤマタノオロチのところへ転移したアレン。
そして。
「ふぅっ。おっ、レッドドラゴンとブルードラゴン。元気そうだな」
「はい。その、ありがとうございます」
「助けていただいて」
アレンに礼を述べる、二人。
それにアレンは、「元気でなにより。うんうん」と嬉しそうに応え、ヤマタノオロチに視線を向ける。
アレンを見上げる、ヤマタノオロチ。
「……」
無言で。
二度三度と瞬きをし、ヤマタノオロチはじっとアレンを見つめる。
その純粋な眼差し。
それを受け、アレンは悟る。
「もしかして喋れないのかな? それに感情も希薄だな」
アレンの疑問。
それにフェンリルは声をあげた。
「たぶん、そう。同じ人ならざるモノ。わたしも最初はそうだった」
「そうか。なら」
フェンリルの言葉。
それに頷き、アレンは力を行使。
発声付与(レベル10)
感情付与(レベル10)
煌びやかな光。
それに包まれーー
「こ、こ、こんにちは」
ヤマタノオロチはアレンにより、言葉と感情を付与されたのであった。




