vsヨルムンガンド①
そして、放課後。
「ふぅ。終わった、終わった」
終礼。
それを終え、椅子に座ったまま背筋を伸ばすアレン。
そんなアレンの背。
それをつつく、フウカの指。
「ん? フウカさん?」
身体ごと振り返る、アレン。
「あなた、なんともないの?」
「なんともないですよ。って、もしかしてフウカさん。俺のこと心配してくれてるんですか?」
感動し、フウカの手のひらを握りしめるアレン。
それにフウカは冷静に応えた。
澄んだ瞳。
それをもってアレンをじっと見据えーー
「はぁ。いちいち大袈裟なのよ、あなた。いいから手を離しなさい」
「は、はい」
こちらも冷静になり、アレンはぱっと手を離す。
その様。
それは、買えない玩具を手に取り母親に咎められ棚に直す子どもそのもの。
しかし、アレンはそんなフウカの冷静さもまた気に入っていた。
「今朝。あんなことがあって気にならないほうがおかしいでしょ? ほんとになんともないの?」
「ほんとになんともないです。あっ、強いて言えば」
「強いて言えば?」
「やっぱり二人が側に居たら落ち着きます。その。一生側に居てくださいね、フウカさんにココネさん」
「うんっ。ずっと側に居るよ、アレンくん」
アレンの言葉。
それにココネもまた応える。
嬉しそうに前の席から振り返り、薬指に輝く指輪に喜ぶココネ。
その姿。
それにアレンもまた喜ぶ。
「おっ、ココネ。似合ってるぞ。かくいう俺も」
「ほんとだっ。アレンくんも似合ってる……って、そんなにたくさん!?」
アレンの薬指。
そこにずらっと並んだ婚約指輪。
それに、可愛らしく驚くココネ。
「たくさんの人と婚約したんだねっ。そんなにいっぱいの女の人。アレンくんは養えるのかな?」
「養う? 俺を誰だと思ってるんだ、ココネは」
「誰って、アレンくんだよ」
「そうっ。俺はアレン。全世界の女の子……いや、全宇宙の女の子を養うぐらいの力はある」
家事(レベル1→500)
家事が万能執事(レベル500)にランクアップ。
衣装変更(レベル10)
ローブから執事服に衣装を変更。
「ココネお嬢様。今宵の晩餐。それはこのアレンがお作りしましょう」
立ち上がり、完璧な一礼をするアレン。
そんなアレンに、ココネを含む女子たちは興奮。
「きゃーっ、アレンくんかっこいい」
「元からかっこいいけど更にかっこよくなっちゃった」
「うぅ。かっこよすぎて立ちくらみが」
胸を高鳴らせ、アレンに近づくことさえできない女子たち。
その表情。
それは、一目惚れした乙女のソレだった。
「か、かっこいいっ。で、でも。わたしはアレンくんに尽くしたいな」
「そうなの? じゃっ、ココネは俺専属のメイドさんだな」
衣装変更(レベル10)
ココネの衣装をメイド服に変更。
立ち上がり、くるりと一回転するココネ。
それに教室中の男子の視線。
それが一斉に注がれる。
「ココネ。かわいい」
「あんなメイドさんにお世話してほしいものだぜ」
「フウカさんとレイラさん。そこにメイド姿のココネさんも加わるのか。このクラスの男子でほんとによかったぜ」
メイド姿のココネ。
それに見惚れる、男子たち。
「わーいっ。メイドさんだメイドさんだ。どう、アレンくん? 似合ってるかな?」
「最高。100点満点中1000点」
っと、そこに。
「アレンくんっ。レイラも衣装変更したいな。レイラはメイドさんより、はだかエプロン姿がいいっ」
一部始終。
それを見ていたレイラがアレンに近づき、「えいっ」とアレンの顔面へと胸を押しつける。
むにっ
それにアレンは焦る。
「れ、レイラっ。く、苦しいんだが?」
「うーんっ。じゃあっ、離れちゃうよ?」
「その。顔を挟んでくれたら離れなくてもいいぞ。そうすりゃ息はできるからな」
「うんっ、わかった」
むぎゅっ
アレンの言葉。
それに従い、たわわな胸でアレンの顔を両方から挟み込むレイラ。
そして。
「ほらほらっ、アレンくん。言う通りにしたんだから、裸エプロンっ、裸エプロンっ」
「よ、よしっ。わかった。裸エプロンってことは、まずは裸にーー」
鼻血を垂らしながら、アレンは力を行使しようとする。
衣装消滅(レベル10)
「やんっ。アレンくんっ、えっち。本気でレイラを裸エプロンしようとするなんて♡」
まんざらでもない、レイラ。
「あ、あぁ。俺はえっちだぞ。男だからな、仕方ない」
堂々とする、アレン。
だが、そこに。
「いい加減にしなさいッ、レイラ!! それに、アレンくんも!!」
「ひぃっ」
「やーんっ。フウカさんこわーいっ」
ぎゅっ
全く反省せず、レイラはアレンの顔面に抱きつく。
バンッ
と、立ち上がりながら机を叩くフウカ。
「わたし、風紀委員長なの? わかる?」
「は、はい」
「学園で風紀を乱す輩はこれ全て、敵。裸エプロン? 舐めてるの?」
「すみません。調子に乗りすぎました」
即、アレンは謝る。
「よろしい。で、貴女と貴女は?」
アレンを許し、二人に矛先を向けるフウカ。
「えっ、わ、わたしも?」
焦るココネと。
「えーっ、レイラも?」
きょとんとする、レイラ。
その二人に、フウカは腕組みをし続ける。
「当たり前でしょ? アレンくんだけが悪いわけじゃないの。それに乗った貴女たちも同罪なんだから」
あぁ、フウカさん。
その凛々しさもまた格別。
引き締まったフウカの顔。
それに見惚れ、アレンは意味もなく頷く。
そして。
「さぁっ、ココネさんにレイラさん。はやくフウカさんに謝りたまえ。風紀委員長さまを待たせてしまっては申し訳ないだろ」
そんな声をあげ、フウカ側につくアレン。
しかし。
「はい。あなた今、ふざけたわね」
「へ?」
「ふ、ふざけたよっ。アレンくん今ッ、めちゃくちゃふざけてたよっ」
「えっ、ちょっ、ココネさん?」
「せっかくレイラが誠心誠意謝ろうとしてたのに。アレンくんがおふざけしちゃったから、台無しっ」
「あの、ちょっと? えっ? レイラさんまで?」
三人の視線。
それを受け、冷や汗を滲ませるアレン。
「ほら、もう一度謝りなさい」
「アレンくんっ。そ、その。謝って」
「ふふふ。困り顔のアレンくんもかわいい」
三人に詰め寄られ、アレンは困惑。
くっ、美少女三人からの意味不明な謝罪要求。
理不尽。
だが、それもいい。
美少女が絡めば、これ正義。
っと、そこに。
「あ、アレン。今すぐお城に戻ってきてください」
「お、お願いです」
切羽詰まり、泣きそうなレッドとブルーの声。
それがアレンの脳内に響く。
それに、アレンは目の色を変える。
その様。
それに三人もまた、表情を引き締めた。
「どうしたの?」
「あ、アレンくん?」
「なにか。あったみたい、だね」
そして更に響く声と遠吠え。
「ドラゴン族の少女。人間と違って丈夫ですね。次は"目"でもくり抜いてやりましょうか?」
「ワオーン」
「……」
目の奥。
そこに敵意を宿し、アレンは転移(レベル10)を発動。
それに倣い、レイラもまたアレンの後を追う。
転移(レベル10)
その眩い光。
その中でーー
「ドラゴンの勘ってやつかしら? レッドとブルーになにかあったわね」
そう呟き、レイラの姿を脱ぎ捨てるブラックドラゴン。
そうやって転移した二人の姿。
それにココネとフウカもまた頷き合い、先生たちに助けを求めにいったのであった。
〜〜〜
「随分とはやいご到着で」
「がるるるっ。あいつ、あいつだ」
城を背に佇む、男と狼少女。
その二人の足元。
そこにはーー
「いたいっ。痛い。目がッ、わたしの目が」
「ブラックドラゴンさま。ぶ、ブラックドラゴンさま。助けて。助けてください」
蹲り震えるレッドと、その側で徘徊し譫言を繰り返すブルー。
その二人の姿があった。
その光景。
それに、ブラックドラゴンは瞳孔を開く。
そして。
「アレンくん。ここはわたしに任せてくれないかな?」
そう呟き、漆黒の双翼をはためかせるブラックドラゴン。
双眸を赤くたぎらせ、殺意を揺らすその姿。
それは本気のブラックドラゴンのソレ。
だが、アレンはそれを制する。
ブラックドラゴンの前に踏み出しーー
狩人(レベル1→1000)
狩人→神獣狩人(レベル500)→狩神(レベル1000)
蛇使い(レベル1→1000)
蛇使い→大蛇使い(レベル500)→蛇神(レベル1000)
有無を言わせず、アレンは力を行使したのであった。




