天才くん①
女子の心の声を修正しました。
「さっきの見たよ、アレンくん。アカネ先生に圧勝だったじゃん」
「アレンくん、すごくカッコ良かったよ。その、どうかな? 今日のランチ一緒に」
「あーずるい。わたしもアレンくんといっしょにお昼ご飯食べたいな」
教室。
そこにアレンが入るなり、黄色い声援が飛ぶ。
そしてアレンに駆け寄り、目にハートマークを浮かべる女子たち。
「そうだろ、そうだろ。俺は一夜にしてアカネ先生を超えるほどの人物になった。しかしッ、俺はこの程度では終わらない!!」
「きゃーっ、すてき!!」
「昨日までのアレンくんとは一味も二味も違う!!」
「好きッ、結婚して!!」
そこでアレンは冷静になる。
「結婚? 結婚するならーー」
スキル……心眼(レベル1)
消費ポイント……500
それを発動し、アレンは女子たちを見つめる。
"「イケメンすぎて泣きそう」"
"「見た目も中身も将来性は充分」"
"「アレンくん。かっこよくてかわいい。はじめてはわたしがいいな」"
女子たちの心の声。
それを聞き、アレンは更に喜ぶ。
「どうしたの、アレンくん?」
「いや、嬉しすぎて」
「すっごい笑顔。なにかあったの? 聞かせて聞かせて」
「また今度ね」
「ねー、今日のお昼どうしよっか?」
「手作りお弁当がいいな」
嬉しそうに答え、女子たちの囲みから抜けていくアレン。
そのアレンの姿。
それに女子たちは、しかし未だ冷めない。
「クールで家庭的なところも素敵」
「またね、アレンくん」
「明日はお弁当つくってくるから」
そして席につき、アレンは一言。
「モテるって素晴らしい」
だが、アレンは忘れない。
それにしてもアカネ先生のキス、よかったな。
頬に残る余韻。
それをさすり、アレンはアカネの姿を思い出しほの字になる。
大人の魅力ってやつ?
たまらんな。
今度、アカネ先生にも心眼を使ってみよう。
っと、そこに。
「アレンくん、すごい。モテモテだ」
ココネの遠慮気味の声。
それが響き、アレンはほっと安堵する。
アレンの席。
その前がココネの席だった。
「おー、ココネ。やっぱ、ココネが落ち着くよ」
「い、いきなりどうしたの?」
アレンに身体を向け、困惑するココネ。
心眼。
アレンはそれをもってココネを見つめる。
"「あ、アレンくん。すごくモテモテだ。だ、誰かにとられちゃったら……悲しいな」"
「やっぱり、俺にはココネしか居ない」
「へ?」
「結婚しよう、ココネ」
「えっ? えぇっ?」
慌てふためき、ぽんっと湯気をあげるココネ。
「な? いいだろ、ココネ。頼むよ」
「おおお。落ち着いて、アレンくん。こここ。こういうことはもっと真剣に、ね?」
「俺はいたってーー」
真剣だ。
そう言い終える前に、声が飛ぶ。
「アレンくんッ、アレンくんは居るかな!?」
「出てこいっ、アレン!!」
「天才様ーーイザベールが、君の相手をしてくださるそうだ!!」
その声がした方向。
そこに、アレンは視線を向ける。
そして、取り巻き二人を引き連れた天才ーーイザベールと目が合う。
金髪蒼眼の見るからに偉そうな雰囲気の男子。
それがイザベール。
「居た居た」
呟き、アレンの近くにつかつかと歩みよりーー
「アレンくんッ、このぼくと勝負しよう!! アカネ先生を打ちかました君こそッ、ぼくのライバルにふさわしい!!」
高らかに宣言し、アレンを指差すイザベール。
それにアレンは応える。
「あっ、いいよ。場所はどこでやる? 時間は、放課後でいい?」
イザベールに即答し、余裕の笑みを浮かべるアレン。