オーディン①
そうやって二人を許したアレン。
そして心の底から自分たちが女であることに感謝する、スズメとホタルだった。
「さて、と。そろそろ登校の時間なので俺はこの辺で失礼します」
声を響かせ、アレンはホタルの側で立ち上がる。
そしてぱんっぱんっと自らのローブを払い、「じゃっ、行ってきます。スズメさんとホタルさんは城の中で休んでてください」そう置き言葉を残し、アレンは歩き出した。
その胸中。
そこでーー
「まずは保健室に直行だ。ソフィのことも心配だし」
そう呟きながら。
そうやって遠ざかっていくアレンの姿。
それを見送り、ホタルとスズメもまた胸中で呟く。
「あんなにすごいのに学園に通ってるんだ。 ま、学ぶことなんてあるのかな? す、すごすぎです」
「ままま。まさかの学生さん。だ、だとしたら……わたしより年下!?」
二人揃って感嘆し、ホタルとスズメはアレンの凄まじさに身震いをすることしかできなかった。
〜〜〜
そして、保健室。
ゆっくりと扉を開け、アレンは顔だけを覗かせる。
そのアレンの姿。
それに気づき、サーシャはにっこりと笑顔。
丸椅子を回転させ、アレンに身体を向けるサーシャ。
そして。
「あら。おかえりなさい、アレンくん。朝帰りなんて罪な男の子ね」
そんなサーシャの声。
それにフウカとココネも続く。
「あっ、アレンくんっ。おかえりなさい」
ベッドに座り、肩に毛布をかけたままのココネと。
「そ、そのおかえり。大丈夫だった?」
丸椅子に座ったまま毛布にくるまった、フウカ。
そして、未だ眠ったままのソフィ。
その三人の姿に、アレンはまず謝罪。
「ごめん、みんな。日帰りで片がつくと思ってたんだが、予想外のことが多々起こってしまって」
声を響かせ、保健室の中に入るアレン。
その申し訳なさそうなアレン対し、面々はそれぞれ声を返していく。
「予想外のこと、か。色々聞きたいけど……とりあえず、お疲れ様。まっ、あなたなら大丈夫だと思ってたわ」
「うんうん。わたしもアレンくんならきっと大丈夫だって思ってた。だってアレンくんだもん」
「そ、そうよ。わ、わたしもあんたなら心配ないって確信してたわ。だから、その。ししし、心配なんてこれっぽっちもしてなかったんだからね」
サーシャ。
ココネ。
そして、フウカ。
前者二人はいつもの調子。
しかし、フウカだけはどこか照れ臭そうだった。
うんうん。
やっぱりフウカさんは一筋縄でいかない可愛さだ。
かといって、ココネもかわいいしサーシャさんもお綺麗なんだけど。
「フウカさん」
「な、なによ」
「その。相変わらずの可愛さですね」
「ふ、ふんっ。あ、相変わらずブレないわね、あなたは」
「ブレませんよ。これが俺のポリシーですし」
フウカの眼前。
そこに歩み寄り、アレンはいつものように笑う。
そのアレンの笑顔。
それに表情を柔らかくし応える、フウカ。
椅子から立ち上がりーー
「言っておくけど、アレンくん。あなたはまだわたしの監視対象なの。その辺、わかってる? このままだと永遠にわたしの監視下よ、あなた」
アレンの額。
そこに人差し指をくっつけ、フウカはいつもの口調に戻る。
しかしその頬は仄かに赤らんでいた。
「監視下? 全然いいです。なんならずっとフウカさんの監視対象でもいいですよ、俺。フウカさんなら大歓迎」
「そ、そこは拒否しなさいよ」
「拒否? するわけないじゃないですか。めちゃくちゃ可愛いフウカさんの監視下なんてご褒美以外のなにものでもないですって」
「ば、ばか」
優しくデコピンをし、アレンから視線を逸らすフウカ。
その青春な光景。
それに、サーシャは一言。
「いいね、あなたたち。それこそ青春。わたしも10年前はそんなこともあったりなかったり」
くるくるとペンを回す、サーシャ。
そんなサーシャをココネはフォローする。
「せ、先生」
「ん?」
「青春に時間なんて関係ないです」
「おっ、いいこと言うね」
「えへへへ」
サーシャに褒められ、嬉しそうに笑うココネ。
そんな二人の姿に、アレンはほっこり。
全くもって素晴らしい光景だ。
うん、最高。
幸せに浸ろうとする、アレン。
だがそこに。
授業開始5分前を告げる、鐘の音。
それが鳴り響く。
「おっと。もうこんな時間か」
サーシャは呟き、ぐっとけのび。
そして。
「ソフィのことはわたしに任せてはやく教室に。学生たるもの学びが一番大切だからね」
そう声を発し、アレンたちに教室に向かうよう促すサーシャ。
それにアレンたちは頷く。
「よし、今日もたくさん学ぶぞ。フウカさんとココネもいっぱい学ぼうな」
「あのね。その台詞はいつも真面目に学んでる人が言う台詞なの」
「そうだよっ。いつも真面目じゃないアレンくんが言っても説得力ないよ」
「ココネさん。いつも真面目じゃないのは貴女も同じよ」
「へ?」
「授業中ノートにお絵描きばっかりしてること。わたしが知らないとでも?」
「ぐぬぬぬ。バレてた」
「ははは。なんだ、ココネ。ダメじゃないか、授業は真面目に受けないと」
余裕をかます、アレン。
「むっ。アレンくんだって、お外で体育をしている女の子ばっか見てるじゃない」
「そうよ。アカネ先生が授業をしている時、特に真剣な眼差しで外を眺めているわよ、あなた」
「ぐぬぬぬ。筒抜けだったか」
他愛のない会話。
それを交わしつつ、保健室を後にする三人。
その三人を見送りーー
「さて、と」
そう声を漏らし、サーシャは不意に窓の外へと視線を向ける。
瞬間。
「出てこい。アレンという名の人間。このオーディンが直接、品定めをしてやろう」
そんな厳かな声が響き、学園全体が光の結界に包まれ隔離。
だが、サーシャは動じない。
「あれがラグナロクのトップ。うわぁ、はじめてみるな」
窓際に近づき感嘆する、サーシャ。
片目に眼帯。つばの広い帽子を被り、丈の長い黒のローブに身を包んだ長身で黒髪の女性ーーオーディン。
その手には杖が握られ、オーディンは黄金の立髪を靡かせる馬にまたがっていた。
「でも、まっ。アレンくんの敵じゃないかな?」
呟き、サーシャは頷く。
その頷きに応えるようにーー
転移(レベル10)
「あの、呼びました?」と声を響かせ、颯爽と校庭へと姿を現すアレンであった。
〜〜〜
「きさまがアレンか?」
「はい」
「ふんっ。見たところ、ただの人間」
「はい。ただの人間ですよ、俺」
オーディンとアレンとの距離。
それはおよそ数十歩。
「ロキとスルトめ。いい存在が居たなどと我にテレパシーをよこしよって。後から叱ってやらねばな」
不満げに呟き、アレンに向け杖を向けるオーディン。
そして。
「ふんっ。だが、品定めはしてやろう」
吐き捨て、オーディンは力を行使。
石化(レベル460)
だが、しかし。
「あの。品定めをするのは俺のほうなんですけど」
神秘耐性(レベル1→500)
神秘耐性が神耐性(レベル500)にランクアップ。
更に。
石化(レベル1→500)
石化がメドューサ(レベル500)にランクアップ。
神耐性(レベル500)
メドューサ(レベル500)
馬使い(レベル10)
アレンは三つを発動。
瞬間。
「ひひーんッ」
黄金の馬。
それはオーディンを振り落とし、アレンに疾走。
同時にオーディンの杖が石化され、瞬時にサラサラと砂になって風に流されていく。
そして馬に跨り。
「ふぅ。ざっとこんなもんかな」
誇らしげに、アレンは声を響かせたのであった。




