vsフィル③
二つの太陽と巨大隕石。
加えて、奈落の穴とスルトの裏切り。
更に、高い金を払ったにも関わらず敵前逃亡した傭兵集団。
その現実。
それに、フィルは発狂。
「はッ、離せぇ!! おまえら全員ッ、地獄に堕ちろぉ!! こッ、この裏切り者共めぇ!!」
「離して欲しけりゃ離してやるよ。ほれ」
暴れる、フィル。
その襟首。
それをフィルのご要望通りに、パッと離すスルト。
途端。
「へぶッ」
勢い余り、前のめりに倒れるフィル。
そして地面に鼻を打ちつけ、再び鼻血を垂らす始末。
そのフィルの目の前。
そこに現れる、アレンの足。
「くっ、くそったれが。お、おまえ。おまえ如きに」
歯軋りをし、フィルはアレンを見上げる。
そのフィルの眼差し。
それを受け、アレンは声を落とす。
「フィル。どこからどう見てもおまえは詰みだ」
「詰みだと? この俺が? 笑わせるなよ」
身をもたげ、その場に片膝をつくフィル。
そして、その瞳に狂った光を宿しフィルは叫ぶ。
「舐めるなッ、舐めるなよこの俺を!! おまえら凡人如きにッ、天賦の才を持つこの俺が敗れる!? んなことあってたまるか!!」
瞬間。
フィルは己の内に貯蓄されたスキルポイントを全て消費。
その数、およそ15005。
加えて、フィルは嗤う。
「あッ、あははは!! この俺の人生に敗北の二文字はない!! あるのはッ、勝利!! その二文字だけだァ!!」
人脈(レベル10→500)
人脈が万心掌握(レベル500)にランクアップ。
そして、フィルは万心掌握(レベル500)を発動。
アレン=倒すべき敵。
フィル=守るべき味方。
そんな概念。
それをアレンを除く全生命体にかける、フィル。
刹那。
「アレンッ、その首貰いうけるです!!」
「うぅッ、アレン!! 許すまじです!!」
レッドとブルー。
その二人がアレンを敵と見做し、殺気と共にアレンへと飛びかかる。
更に、アカネとヤナギもその目から光を無くしアレンへと敵意を向けた。
「アレンくんは敵。フィル様の敵」
剣の刃先。
それをアレンに向ける、ヤナギ。
そして。
「アレン。ぶち殺すぞてめぇ」
拳を鳴らし、アカネは口汚くアレンに敵意を露わにした。
だが、アレンは動じない。
絶対防御(レベル500)
絶対回避(レベル500)
それを自分にかけーー
「よっと」
レッドとブルーの左右からの噛みつき攻撃。
それを両腕で受け止め、笑うアレン。
「ぐるるるっ。アレンっ、敵!!」
「ころすっ。八つ裂きだ!!」
未だ興奮し、牙突き立てたまま腕にぶら下がりジタバタとするレッドとブルー。
更に続く、アレンへの攻撃。
剣聖の一太刀。
拳聖の拳。
ヤナギとアカネと攻撃。
それさえも無傷で受け止めーー
「なにがあっても女の子に傷はつけないぞ、俺は」
そう呟き、四人を抱きしめたアレン。
その姿。
それに、ヘスティアとブラックドラゴンは頭を抑えフィルの万心掌握(レベル500)に耐える。
「へ、ヘスティアさん。もしかしてアレンくんを攻撃したいとか思ってないわよね?」
「ま、まさか。そそそ。そういうブラックドラゴンはどうなの? 引きつった笑顔をたたえてるみたいだけど?」
「馬鹿を言わないでくれる? わたしはアレンくんを攻撃なんてしないわ。死んでもね」
「ふ、ふふふ。奇遇ね。それはわたしもよ」
その光景。
それにフィルは立ち上がり、勢いを取り戻す。
「ふっ。あはははッ、みろ!! これが俺の力!! 今に全世界の生命体がおまえを敵とみなしーー」
攻撃してくるぞ。
そうフィルが言い切ろうとした瞬間。
「で、このスキルの解除条件はなんだ?」
響く、アレンの怒気のこもった声。
解除(レベル500)
それを発動しても、正気に戻らない面々。
それにアレンは眼光を鋭くする。
「答えろ、フィル」
「誰が喋るか!! そうだなッ、教えてほしくば土下座して俺に詫びを入れろ!! それが嫌ならッ、全世界の生命体。それをさっさっと皆殺しにすることだな!! あははは!!」
腕を組み、スルトはそれを見守る。
フィルの万心掌握(レベル500)。
それは、ラグナロクのメンバーには効かない。
なぜなら、彼等彼女はこの世界に生きる"生命体"ではないのだから。
「ロキ。聞こえる?」
「聞こえるよ。はやく助けてくれよ、スルト。ここ真っ暗でなにも見えないんだけど」
「ごめん。それより、ラグナロクのメンバーに推薦したい人が居るんだけど……どう?」
「推薦? うーん。オーディンさんに聞かないとね。なに? いい存在が居たの? あっ、それって」
「あぁ、ものすごい奴だ。名はーー」
そんな二人の脳内会話。
それを遮る、アレンの声。
「時間停止(レベル500)解除」
「えっ? お、おまえ」
焦る、フィル。
「ま、まさかほんとに世界中の生命体を皆殺しに?」
「……」
巨大隕石。
それが再び動き出し、地へと迫る。
同時にアレンはスキルを発動。
奈落の穴(レベル500)
太陽と巨大隕石を対象とした縮小(レベル500)
ターゲット固定(レベル10)
対象……フィル
小型化した太陽を対象とした引力(レベル480)
それに呼応し、フィルの真下に奈落の穴が現れーー
「ひぃーッ」
フィルは穴の中へと自然落下。
そのフィルに向け落下していくのは縮小した太陽と隕石。
フィルに向け落下するのは、ターゲット固定(レベル10)の賜物。
そして、数分後。
途方もない地響き。
それが大地を揺らし、フィルの気配が完全に消滅。
同時に万心掌握(レベル500)が解除されーー
「あ、あれ」
「わたしなにをしてたのですか?」
「あ、アレンくん。ど、どうしてわたしを抱きしめているのですか?」
「おいおい、アレン。四人いっぺんだなんて随分と大胆だな」
レッドとブルー。
そしてヤナギとアカネは正気に戻ったのであった。
もう少しで章が変わります。




