エリス①
「ふぅ。さて、どうしたものかしら」
「エリス様ぁッ、待ってましたよ!! さぁっ、はやくわたしと一緒に戦いましょう!!」
側に現れた、エリス。
その自分の主に抱きつき、ミリィは威勢を取り戻す。
だがしかし。
「ミリィっ、貴女のおかげでわたしの素晴らしい計画が台無し!! 罰として尻叩き100回ね」
「え、エリス様。いいい。今は仲間割れしている場合じゃないよ?」
ひょいっ
ミリィの小さな身体。
それを抱き抱えーー
「ふぇっ」
「はいッ、一回目!!」
バチンッ
渾身の尻叩き。
それをミリィに叩き込む、エリス。
瞬間。
「ぎゃあああッ、めちゃくちゃ痛い!! ごめんなさいっ、ごめんなさい!! ちょっとイラッとしてエリス様を召喚しちゃったわたしが悪ぅございました!!」
叫び、手足をじたばたさせるミリィ。
その反動で露わになる、ミリィの容姿。
幼くも大人びいた顔立ちに、薄い茶色の髪の毛。
その髪を振り乱し、ミリィは涙目。
だがエリスは止まらない。
「貴女の本性がわかった今。遠慮はなし。残り99回ッ、歯を食いしばりなさい!!」
「ひぃぃぃっ」
そのエリスとミリィの姿。
それを見つめ、軍勢たちと勇者パーティーは完全に戦意を無くす。
そしてその場に腰を下ろしーー
「この世界も平和になったものだな」
「うんっ。そうだね、勇者様」
勇者〈アーサー〉と聖女〈マリア〉は互いに微笑み、救った世界の長閑さにしみじみと浸る。
「なんていうか……わたしたち、頑張った甲斐あったよね? この身を犠牲にして、うん。この世界を守って本当によかったわ」
「ちょい、イライザ。しんみりしすぎ。らしくないよ」
「今度生まれ変わったらさ。わたし、セシルと一緒に色んなことしてみたいんだ。学校に通って、馬鹿騒ぎ。憧れちゃうな、あれ」
「うん。そうだね」
魔聖〈イライザ〉。
拳聖〈セシル〉。
その二人は互いに寄り添い、想いにふける。
あぐらをかき、剣を抜いて空を指す剣聖〈ジーク〉。
「この剣ひとつ。それをもって、この平和な世をまわってみたかったものだ。まっ、無理な話だが」
かつて世界を救った勇者とその仲間。
その切ない姿を見つめ、アレンは口を開く。
「あ、あの」
息を吸い込み。
「この世界を救ってくれて、本当にありがとうございました」
そのアレンの心のこもった礼。
それにアーサーは、「気にすんな。使命を果たしたまでだ」と答え、グッドポーズ。
そして。
「こっちこそありがとな。俺たちをこの世界に呼んでくれて」
アーサー。
「自分たちが救った世界。それを一目見れただけでも幸せです」
マリア。
「君、才能あるよ。その歳で神話ノ体現を使えるなんて」
セシル。
「是非、わたしたちの仲間になってほしいものね。あっ、それか。このイライザさんの弟子なんてどう?」
イライザ。
「うむ、実に将来有望。君のような者がいればこの世界も安泰だろう」
最後にジーク。
五人はアレンをたたえ、笑う。
それにならい、神の軍勢たちも皆で拍手を送りアレンを讃えた。
「す、すごい」
「勇者様に褒められるなんて。アレンくん、すごいよ」
「うーんっ、素敵。レイラ、ますますアレンくんに惚れちゃった」
フウカ。ココネ。レイラ。
その三人もまた、アレンに向けちいさく拍手。
ケルベロス。
ワイバーン。
コカトリス。
ゴブリン。
ガーゴイル。
その五体もアレンを褒め称え、咆哮。
「ほら見なさいッ、ミリィ!! 貴女が邪魔しなかったらあのアレンくんがこちら側にきたかもしれなのよ」
「うぅ。このミリィ、一生の過ちを犯してしまいました」
反省し、ミリィは腫れ上がったお尻をさする。
「ですがまだチャンスはあります」
ほくそ笑む、ミリィ。
「チャンス?」
「えぇっ、あのアレンという者。めっぽう色仕掛けに弱いと思われます。ですので。エリス様の美貌とテクニックさえあれば……可能性はゼロではありません」
「その根拠は?」
「アレです」
アレンを指差す、ミリィ。
果たしてその指の先ではーー
「すてきっ、アレンくん。ご褒美にレイラの座布団になる? そ、れ、と、も。レイラのコレで肩揉みしてあげよっか?」
「りょ、両方お願いします」
「あなたねッ、褒めたそばからなにやってんの!! 少しは自重しなさいよ!!」
「そうだよッ、アレンくん!! わ、わたしも混ぜてほしいな」
レイラ。アレン。
そして、フウカとココネ。
その四人が相変わらずの一悶着を起こしていた。




