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召喚士③

「ゆ、勇者パーティー? へっ? そ、そんなのも召喚できるの?」


居並ぶ神話の世界の人々。

その姿に身震いをする少女。


エリスの書庫。

そこで見た書物。

その中に描かれた、世界の神話に関する挿絵の題名。


〜世界を覆った闇。それを払い、世界に再び光を取り戻した勇者とその仲間たち〜

確かそんな題名だったような気がする。


ごくりっ。


唾を飲み込み、少女は後退り。


次元が違う。

現実の魔物を召喚するのならまだわかる。

しかし、視線の先に立つアレンという名の男は現実に存在し得ない"勇者とその仲間"を召喚した。


しかもそのレベルがまさかの500。


「く……っ」


 更に後退りをし。


「いッ、いけ!! お前たち!! レベル500なんてあり得ないッ、みんなレベル100ぐらいに決まっている!! それに勇者? そ、そんなのただのハリボテです!!」


 そう己を奮い立たせて叫び、少女は自分の召喚したモノたちに命を下す。


 それを信じ--


 ケルベロス。

 ワイバーン。

 コカトリス。

 ゴブリン。

 ガーゴイル。


 は、一切に駆け出す。


 その五つの背。

 それを見送り、少女は更に自分を奮い立たせた。


 そ、そうよ。

 このわたしが負けるはずなんてない!!

 エリス様の右腕であるこのミリィがなす術もなく敗れるなんてことッ、あってはならないんだから!!


 だがそのミリィの自信。


 それは--


「追加召喚」


 響いたアレンの声。

 それに砕かれる。


 神の軍勢〈レベル500〉

 筋骨隆々の金色甲冑姿の兵士たち。

 その神話に語られる軍勢が一斉召喚。


 めきっ


 アレンの周囲。

 そこの空間が軋み、更に姿を現す存在たち。


 その身に金色のオーラを纏う姿。

 それはまさしく、次元というものを凌駕するアレンの神話ノ体現の力そのもの。


 そして。


 「「きゃうんッ」」


 瞬時に情けない鳴き声をあげ、その者たちの眼前で平伏するミリィに召喚されたモノたち。


「「ガルルルッ」」


 そして裏切りの咆哮をあげてミリィを見限り、アレンたちへと寝返る五体の魔物たち。


 あたかも最初からアレン側だった。

 そんな表情をたたえ、吠え猛るーー


ケルベロス。

 ワイバーン。

 コカトリス。

 ゴブリン。

 ガーゴイル。


 それに少女はヒステリックに叫んだ。


 「あなたたちッ、なんなのソレ!! あなたたちを召喚したのはこのミリィでしょ!? 今まで散々魔力やら餌を与え続けてやったのにその仕打ちはないんじゃない!?」


 焦り。


 「ほ、ほら今ならまだ間に合うわ。はやくミリィの元に戻ってきなさい。は、ははは。わかってるって、あなたたち。じょ、冗談よね? ででで。でもね、今はそんな笑いいらないから」


 引き立った笑顔。

 それをたたえ、魔物たちに手招きするミリィ。


 だが圧倒的劣勢は覆らない。


 黙れ。お前はもうご主人ではない。

 魔物たちはそんなしたり顔でミリィにそっぽを向く。


 勇者パーティーに懐き、頭を撫でられる面々。

 それにミリィは冷や汗を滲ませ、更に頭を抱え呟く。


 「終わった、終わったわ。なにもかも。あ、あははは」


 そこに響く、レイラの声。

 にこりと。

 

 「アレンくんっ。助太刀しよっか?」


 レイラは微笑み。


 「あの程度の召喚士。片手で瞬殺よ」


 龍眼。

 それを見開き、汗まみれのミリィを見据えるレイラ。


 だがアレンはそれを制する。

 

 「かわいい少女が互いに傷つけあう真似。それは絶対ダメだ。レイラ。その、レイラもめちゃくちゃかわいい。だから俺の気持ち、わかってくれ」


 「うんっ、わかったぁ。アレンくんの言うこと聞く」


 頷き、レイラは龍眼を解く。


 「あ、アレンくんってお知り合いさん多いんだね」


 「あっ、あなた。その色々な人脈があるのね」


 ココネとフウカ。

 その二人はアレンの背後に身を隠し、率直な感想を述べる。


 それにアレンはミリィを見据えたまま、一言。


 「あぁ。知らないうちに色んな人が俺の知り合いになっていってるな。でもまぁ。それもいいと俺は思う」


 頷き、更に続けるアレン。


 「あのミリィって娘もあんなにちっちゃいのによくやっていると思う。召喚(レベル250)だろ? 生半可なスキルじゃないぞ、あれ」


 「だ、だね。あなたが異常なだけで相当な実力の持ち主だと思うわ」


 「う、うん。100年に一人の逸材だよ」


 「アレンくーんっ。わたしのコレは1000年に一度の一品だぞ?」


ぼいんっ


胸を揺らし、ウインクをするレイラ。

例のごとく、鼻血を垂らすアレン。


「うふっ。触ってもいいんだぞ?」


「れれれ。レイラ、今はダメだ」


「うん? どうして?」


むにぃっ


時と場所を考えないレイラのお色気思考破壊。

そしてそれに毎度引っかかる、「こ、これぞ1000年に一度の一品」、アレンもまたお約束。


その光景。


それに、ミリィはしかし最後の抵抗を見せる。


「こ、こなったらヤケだ。わたしの主人を召喚してやる」


呟き、ミリィはエリスを召喚しようとする。

自分だけが捨て駒にされるのはまっぴらごめんのミリィ。


だがそのミリィの脳内に響く、エリスの慌て声。


「まッ、待ちなさいミリィ!! 今ここでわたしを召喚したら計画が水の泡!! 色々な刺客をアレンくんにぶつけわたしと引き合わせる……って話したと思うけど!?」


「ふんっ。ミリィだって自分の身がかわいいに決まってるじゃないですか!! エリス様だけ高みの見物なんてムシが良すぎるのです!!」


「くっ、あ、貴女ね。どこか底が知れないと思ってたけどとうとう本性を現したわね!!!」


「やかましいです!!」


脳内で喧嘩をし、ミリィは再びその場にしゃがむ。

そして手のひらを地面に当て、声を響かせた。


「ふっふっふっ。見て驚けッ、これがわたしのご主人のエリス様です!!」


ドヤ顔を晒し、エリスを召喚するミリィ。


瞬間。

眩い光が、周囲に立ち込め。


「くっ、くそ。わたしの計画が反乱分子の手により水の泡。もうめちゃくちゃよ」


水晶玉を片手に持ち、唇を噛み締める一人の紫髪の女性。

白のローブに身を包んだ、未来予知師〈エリス〉がそこに現れた。


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