徒歩①
「どうしたの、アレンくん」
アレンの数歩先。
そこに立ち止まり、小首を傾げるココネ。
「はやく行かないと遅刻しちゃうよ?」
「あ、あぁ。今、行く」
戸惑いながら、目を開けてアレンは歩を進める。
途端にはじまる、スキルポイントの上昇。
290。291。292。293。
そこで、アレンは気づく。
今朝、寝起きに頭に浮かんだ二文字の単語。
徒歩。
まさか、あれが。
294。295。296。297。
ココネの側。
そこに辿り着き、息をつくアレン。
そして。
「大丈夫? 肩、貸そうか?」
「い、いや大丈夫」
「そう? 無理しないで」
微笑み、ココネは歩き出そうとする。
そのココネの姿。
それを見据え、スキルを獲得するアレン。
スキル……ラッキースケベ(レベル1)
消費ポイント……150
男たるもの、当然。
途端。
先を歩く、ココネ。
そのローブが吹き抜ける風に舞い上がる。
「きゃっ」
いちご柄のパンツ。
それが外気に晒され、赤面するココネ。
必死にローブをおさえようとする、ココネ。
それを嘲笑うかのように、下から風が吹く。
「なッ、なに!? この風ぇ!!」
慌てふためき、ココネはアレンに助けを求める。
その姿に「いいものをみた」という風に頷き、スキルを止めるアレン。
止まる、風。
そこでココネは呟く。
「うぅ。えっちな風さんにいじめられた」
落ち込み、顔に真っ赤にしアレンに抱きつくココネ。
そのココネを慰め、アレンはお詫びとばかりにスキルを発動する。
スキル……小鳥集め
消費ポイント……50
瞬間。
可愛らしい小鳥たち。
それがココネの肩にとまり、ぴよぴよと可愛い鳴き声を響かせる。
それにココネは表情を綻ばせ、笑顔になる。
「わぁ、小鳥さんだ」
「かわいいな」
「うんっ」
小鳥。
それを指で撫で、機嫌を戻すココネ。
「じゃ、ココネ。はやく学園に行こう」
「うん」
アレンに寄り添う、ココネ。
そして学園へと向かう二人。
ココネは笑顔。
そして、アレンもまた笑顔。
しかしアレンの笑顔。
それは、「これからは俺の時代だ」という嬉しさに満ちた笑顔だった。