召喚士②
「へ、ヘスティア様?」
ヘスティアの姿。
それを目の当たりにし、フウカは勢いをなくす。
世界最強のドラゴンハンター。
その異名をとる、ヘスティア。
そんな存在が教壇の後ろに立ち、「担任」という肩書きを披露。
それに驚かないほうがどうかしている。
「たっ、担任? ヘスティア様がこのクラスの?」
今まで浮かべたことのない表情。
それをたたえ、動揺を隠せないフウカ。
そしてそれは、フウカ以外の生徒たちも同じだった。
「ヘスティア? ヘスティアってあの最強のドラゴンハンターのことだよな?」
「ほ、本当にあのヘスティア様なの?」
「で、でも。あの見た目と隠せてないオーラ……間違いないよ」
「本気ですごすぎない?」
口々に感嘆を漏らし、尊敬と興奮の眼差しでヘスティアに釘付けになる生徒たち。
その視線を一身に受け、しかしヘスティアは動じない。
くいっと眼鏡をあげーー
「驚く気持ちはわかります。ですがこれは正式な手続きをもって決まったこと。ですので皆さん、これからよろしくお願いします」
花のような笑顔。
それを浮かべ、慎ましく手を振るヘスティア。
そのヘスティアの姿。
それにココネもまた同じような笑顔を浮かべ、アレンへと声をかけた。
「すごいねっ、アレンくん。ヘスティア様だよっ、ヘスティア様。あの世界で有名なドラゴンハンターさんだよ」
「そ、そうだな。は、ははは」
乾いた笑い。
それをこぼし、アレンはヘスティアを見つめる。
そのアレンの視線。
それに気づき、ヘスティアはアレンへと視線を固定。
そして。
「アレンくん、先日はお世話になりました。うふふふ。もしドラゴン絡みで困ったことがあればいつでも先生に頼ってくださいね」
そう声を発し、アレンからレイラへと視線を変更したヘスティア。
「んーっ、ここにドラゴンなんて居ないよ」
「えぇ。居たら容赦しません」
レイラとヘスティア。
二人は視線を交わし、互いに火花を散らす。
二人の間に流れる、異様な空気。
「あ、あれ? レイラちゃんとヘスティア先生。お知り合いさんなの?」
「ううん。レイラ、知らなーい」
ココネの問いかけ。
それに笑顔で応え、レイラはアレンの顔に抱きつく。
むにっ
「あ、あのレイラさん? むむむ、胸が」
「だってレイラ。今日からこのクラスに来たんだんもん。だからっ、知ってるわけないよ。そうでしょ? アレンくん」
むにっむにっ
アレンの顔。
それに胸を押しつけ、同意を求めるレイラ。
「レイラさん、やめなさい。さもないとぶちころーーこほんっ、退学処分にしますよ?」
瞳の中。
そこに龍殺し(レベル200)の光を宿し、ヘスティアはレイラを見据える。
フウカもまたヘスティアに追従。
「そッ、そうよ!! アレンくんッ、あなたもなにか言ったらどうなの!?」
「れ、レイラ!! ヘスティアさんとフウカさんの言う通りだッ、ここは一旦俺を解放してーー」
「えいっ」
むにぃっ
「……っ」
反則だろ、この胸。
さ、逆らえる男はなんてこの世に居ないだろ。
「あ、アレン。その大丈夫か?」
「うらやま。じゃなくて、色々と大変だな」
「ねぇっ、アレンくんを離しなさいよ!!」
「そうよそうよ。アレンくんは貴女の玩具じゃないんだから」
男子は羨ましそうに心配し、女子はレイラを引き離そうとアレンの元へ殺到。
そうやって混沌としていく教室。
女子たちにもみくちゃにされ、「アレンくんはっ、渡さない」とレイラの胸に抱き締められ続けるアレン。
その光景。
それは、穏やかで平和そのものだった。
〜〜〜
そして、放課後。
夕焼けに染まった校庭。
そこをアレンたちは進んでいた。
「アレンくんっ、今日はお泊まりしたいな」
レイラと。
「なに言ってるの? 貴女は女子寮でしょ?」
フウカ。
「レイラちゃん。アレンくんには明日になったら会えるから安心だよ」
そして、ココネ。
「えーやだ。わたし、アレンくんと一緒がいい」
ぎゅっ
アレンの腕。
そこに抱きつき、頬を擦り付けるレイラ。
「ねっ、いいでしょアレンくん」
「だ、ダメだ。生徒である以上、学園のルールは守らないとな」
なるべく目を合わせず、アレンはレイラに応える。
レイラの目を見てしまえば、いつものように流されるのが関の山。
「ぐすん。レイラ、寂しいよ……フウカさんはっ、アレンくんとお泊まりしたくない?」
「なっ。し、したくないわよッ、そんなの!!」
顔を赤くし、全力で否定するフウカ。
「わたしはねッ、その。しょ、将来を約束した相手としかそういうことはしないって決めてるの」
「へぇ、そうなんだ。しっかり者さんだね、フウカさん」
「あなたねッ、ワザとそういう質問してるでしょ!!」
「レイラ。しーらないっ」
「……っ」
レイラの小悪魔的な笑み。
それにわなわなと震える、フウカ。
「お、落ち着いてフウカさん」
フウカを宥め。
「こらっ、レイラちゃん。ダメだよ。あんまり人をからかっちゃ」
レイラを叱るココネ。
それに、レイラは素直に謝る。
「ごめんね。レイラ、まだ人の気持ちがよくわからないんだ」
「はい?」
「えっ、レイラちゃん。それってどういうことかな?」
そこにアレンは慌てて口を挟む。
「れ、レイラはまだ精神的に幼いからな。俺と同じだよ。はははっ、全く」
その不自然なアレンの言葉。
それに二人は首を傾げ、更に問い詰めとする。
しかし、そこに。
「アレン。エリス様の御命により、その力。試させてもらいます」
そんな声が響きーー
「世界の理。それを変える程のお方なら……この程度の存在たちなど、一瞬ですよね?」
アレンたちの視線の先。
そこにしゃがみ、地に左手を当てる一人の少女。
漆黒のローブにフード。
それのせいで顔は判別としない。
だが、その力は本物だった。
スキル……召喚(レベル250)
地響き。
それを鳴らし、少女の周囲に現れる存在たち。
曰く。
ケルベロス〈レベル250〉
ワイバーン〈レベル200〉
コカトリス〈レベル180〉
ゴブリン〈レベル150〉
ガーゴイル〈レベル120〉
その五匹。
それが少女に従い、アレンたちへと殺気を向ける。
「ふんっ、どうですか? 白旗をあげるなら今のうちですよ」
瞬間。
アレンもまた力を行使。
スキル……召喚(レベル500)
召喚が伝説召喚にランクアップ。
スキル……伝説召喚(レベル500)
追加ポイント消費……100000
伝説召喚が神話ノ体現にランクアップ。
スキル……神話ノ体現(レベル500)
を獲得しました。
手のひら。
それをかざし--
勇者〈レベル500〉
聖女〈レベル500〉
拳聖〈レベル500〉
剣聖〈レベル500〉
魔聖〈レベル500〉
を召喚。
吹き抜ける圧倒的な神話ノ体現の力。
それを、アレンは遺憾なく発動した。




