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ヘスティア②

伝わる鼓動。

それにアレンは興奮のあまり混乱。


お、お、女の人の胸の音。

や、やばいっ。理性が持っていかれる。


そんなアレンにヘスティアは更に続けた。


「ねぇ、君」


「は、はい」


「よく見ると可愛い顔してるね? 学生さん?」


「いいい。一応、そうです」


「ふーん、そうなんだぁ。へぇ、そうなんだ」


獲物を見つめる狩人。

そんな眼差しでアレンを見下ろす、ヘスティア。


「だったらわたしより年下なんだ。ってことは、可愛い年下男子ってことだよね。ふふふ。最高じゃない」


ブラックドラゴンとはまた違う余裕に満ちた雰囲気。

それを醸し、本物のヘスティアはアレンに微笑む。


か、かわいい。

いや、美人すぎる。

なんだこの心をくすぐるような言葉遣いと、眼差しは。


「さ、最高なのはこっちの台詞です。こここ、こんなお美しい方に馬乗りにされて見下されるなんて、さ、最高です」


「あら、そう? じゃあこれはどうかな?」


四つ這いになり、アレンの顔を真上から見つめるヘスティア。


そして。


「君の初キッス。いただきます」


瞬間。


「待ちなさい、ヘスティア。アレンくんの初めてはわたしが頂くの」


ブラックドラゴンの愛に満ちた声。

それが響く。


それにヘスティアは応える。


アレンの上から身を起こしーー


「なに? もしかしてわたしとアレンくんをかけてやろうっていうの? いい度胸じゃない」


ブラックドラゴンを仰ぎ見、全身から龍殺し(レベル200)のオーラをたぎらせるヘスティア。


「アレンくん、ちょっと待っててね。さくっとお邪魔虫を排除してくるから」


吐き捨て、ヘスティアはこきりっと拳を鳴らす。

そのヘスティアに対し、ブラックドラゴンは余裕の笑みを浮かべ応えた。


「全く、これだから脳筋〈ヘスティア〉さんは。だけどごめんね。アレンくんは既にわたしのモノなの。ね、そうでしょ? アレンくん」


微笑み、握った拳に闇色の焔を纏わせていくブラックドラゴン。

それにヘスティアもまた瞳に赤色を灯し、「ふーんっ。なら奪い取るまで」と呟き、唇をつりあげた。


それにアレンは焦る。


「あ、あの。ブラックドラゴンさんにヘスティアさん?」


「はーい。なにかな? アレンくん」


「なになに? アレンくん」


二人ともアレンに赤面し、満面の笑顔。


「そ、その。喧嘩はダメだと思います」


「そうだね。ダメだね。アレンくんがだめって言うならわたし、なにもしないよ」


ブラックドラゴンはアレンに頷き、両手をあげての降参ポーズ。


そしてなぜかジャンプをしーー


「ほらほらアレンくん、見て見て。渾身の降参ポーズだぞ?」


ぼいんっぼいんっ


と胸を揺らし、アレンにウインク。


案の定鼻血を垂らす、アレン。


「ぶ、ブラックドラゴン。た、頼むから場の空気を考えてくれ。鼻血がいくらあっても足らん」


「えーっ。嫌だった?」


「えっ、いや。本音はもっとーー」


見たいです。


刹那。


「うぅ。アレンくんは本物の私〈ヘスティア〉より偽物のヘスティアのほうがいいの? わたし、悲しい」


ヘスティアは嘘泣きをし、肩を落とす。

それに困惑し、アレンはヘスティアの前に回り込む。


そして。


「いや。ちちち、違うんです。ヘスティアさん。こ、これはその。だ、男子なら当然の反応でして」


そんな言い訳をするアレン。

その真っ赤なアレンの顔を両手で包み、ヘスティアは一言。


「はい、捕まえた。ほらアレンくんっ、はやくわたしの唇を奪っちゃえ」


頬を赤らめ、瞼を閉じキス顔を晒すヘスティア。


だが、そこに。


「ヘスティアさん」


「ん?」


「アレンくん。興奮のあまり気絶してますよ」


「揶揄いすぎですって、ヘスティアさん」


ヤナギとアカネの声。

それが響き、ヘスティアは「えぇっ。アレンくん純情」と声をあげ、肩を落とす。


ふらつく、アレン。

その身体を支えるのはヤナギとアカネ。


「おーい、アレンくん」


「……」


ブラックドラゴンの猫撫で声。

それに反応を返すことすらできない、アレン。


その光景。

それにレッドとブルーはーー


「あの人間。ちょっとだけかわいそうです」


「ですね」


アレンという人間に少しだけ同情したのであった。


次から章が変わります。

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