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ブラックドラゴン③

そして響く声。


「ど、どうかな? アレンくん。君の優秀な遺伝子をわたしにくれない? わたし搾り取るのも得意だから緊張しなくても大丈夫だよ」


搾り取る。

その表現に、アレンは再び片膝を膝をつく。


「ぶ、ブラックドラゴンっ。いつまで俺の心をくすぐりやがるつもりだ。いっ、いい加減にしてくれよ」


「あ、れ、ん、くん」


胸元をちぎり、豊満な谷間を見せつけたブラックドラゴン。 


「ここが熱いな。後、ここも疼いちゃって」


ブラックドラゴンは片手で下半身をおさえる。


「……っ」


ガン見のアレン。

だが、そのアレンの視界をアカネとヤナギの整った顔が遮った。


そして。


「アレン、礼を言う。帰ったら前みたいにご褒美をやる」


「アレンくん。わたしからもなにか差し上げます」


覗き込むようにアレンに微笑む、二人。

その大人の魅力漂う二人。

それにアレンは頬を赤らめ、「は、はい。よろしくお願いします」と答えることしかできない。


それを見つめーー


「まっ。ここはアレンくんに免じて引くとしよう。すごくかっこよかったな。わたし、素でアレンくんが欲しいって思っちゃった」


そう呟き、瞳を元に戻すブラックドラゴン。


そして。


アカネとヤナギに対する敵意。

それを完全に引っ込め、ブラックドラゴンは一目惚れした乙女の如き表情をたたえる。


そのブラックドラゴンに、アカネとヤナギもまた完全に緊張を解いた。

微かに焦げた二人の服装と、濡れた髪の毛。

それは二人にあたる直前で消滅した火球と水球の余韻そのもの。


「よ、よかった。これでかわいい女の子たちが誰一人傷つかないで済んだ」


心底安堵し、スキルを解除するアレン。


そのアレンに微笑み。


「レッドとブルー。大丈夫?」


ブラックドラゴンは二人に問いかけた。

それに、その身を小刻みに震わせながら応えるレッドドラゴンとブルードラゴン。


「は、はい。なんとか」


「あああ、あの人間。我らが天敵〈ヘスティア〉と同じ匂いがする。いや、そ、それ以上かもしれません」


その場で尻餅をつき、二人のドラゴン少女は蛇に睨まれた蛙のような表情を浮かべていた。


「だね。もしかしたらアレンくん。この世界の人間の中で一番強いんじゃないかな? 流石、山を斬っただけのことはあるわ。うーんっ、惚れ惚れしちゃう」


「ほ、惚れ惚れする? いいい。畏怖の間違いじゃないですか?」


「怖い。あの人間怖い」


ふらふらと立ち上がり、瞳を潤ませながら抱き合うレッドとブルー。


「そう? かっこいいと思うけどな。強き者に惹かれるのがドラゴン族の習性だよ?」


「げ、限度というものがあります。限度というものが」


「そ、そうです。命をとられるかもしれない相手に惚れるなんて……ぶ、ブラックドラゴン様はーー」


「「おかしいです」」


「おかしい? うーんっ、自覚ないな。まっ、いつか貴女たちにもわかる日が来るわ」


「「き、来ませんよ」」


そこへ、アレンの声が飛ぶ。


「あッ、あの!! すみません!! 本物のヘスティアさんはこの先に居るんですか!?」


「えぇ、居るわ」


「その。あ、案内してもらえませんか?」


「喜んで。わたし、アレンくんのお願い事ならなんでも聞いちゃうぞ。ちゅっ」


三度投げキッスをし、アレンにウインクを飛ばすブラックドラゴン。


それにアレンは赤面し、「くっ、くそ。相変わらず反則的なかわいさだろ」そう内心で呟きーー


「どうした、アレン。はやくいくぞ」


「アレンくん。はやくいきますよ」


自分の手を繋ぎこちらを見つめるアカネとヤナギにも、「こ、こっちの二人もめちゃくちゃかわいい」と胸の内で声を発したのであった。

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