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ブラックドラゴン②

そんな空気の中。


「おーいっ、アレンくん。くだらない意地張ってないでこっちにおいでよ。どっちのほうが君にとって幸福か。よく考えてよ?」


にっこり。

妖艶な笑み。

それをたたえ、胸を強調するブラックドラゴン。


「このわたしを一時間。ううん、違う。三時間は好きにできるんだぞ? 男の子なら迷うことなんてないと思うんだけどな」


さらっと時間を延長し、ブラックドラゴンはアレンを揺さぶる。

それにアレンは揺らぐ。


「……っ」


「ほらほらぁ。アレンくんがお望みなら……そうだなぁ、好きな女の子に擬態してあげよっか? どう? 妄想のままにあんなことやこんなこともやらせてあげちゃうよ?」


ただのイカついドラゴン。

それならアレンは容赦なく瞬殺したであろう。

しかし見た目が美人でスタイル抜群な女性となれば話は別。

男である以上、それは致し方のないこと。


「ほれほれ。アレンくーん」


「お、お前なんて俺の敵じゃーーッ」


「もぅっ、強情なんだから。ちゅっ」


ブラックドラゴンの投げキッス。

それにアレンは片膝をつき、「やっぱ無理。めちゃくちゃかわいい」、頬を赤らめての戦意喪失。


だが、そこに。


「あの、ブラックドラゴン様」


「なに? レッドドラゴンくん」


「実力行使をするといった手前。その、あまりきゃっきゃっうふふな雰囲気を醸し出すのはいかがなものかと」


「えーっ。いいじゃん、別に。戦わずしてアレンくんをこっちに引き込めるかもしれないんだよ? それに」


戦闘態勢に入った、アカネとヤナギ。

それを見つめ、ブラックドラゴンは一言。


「あの程度の女たちより、アレンくんはわたしを選ぶに決まってる。身体つき。魅力。そして、戦闘力。その全てにおいて……わたしのほうが圧倒的に上回っているんだもの」


刹那。


ブラックドラゴンの瞳。

そこに宿る、余裕に満ちた灯火。


「仮にもSSS級と呼ばれてるのよ、わたし。それがどういう意味か。わかるわよね?」


冷たくなる空気。

重くなる空間。


真剣を抜き、「よくて相打ち。といったところでしょうか?」ヤナギは呟き、瞳に殺気を宿す。

そしてアカネもまた、「まっ、応援が来るまでの足止めくらいにはなるだろ」そう声を発し、拳を鳴らす。


「レッドドラゴンとブルードラゴン。アレンくん以外はやっちゃって。アレンくんはわたしが直接こっちに引き込むから」


「かしこまりました」


「了解です」


ブラックドラゴンの言葉。

それに頷き、赤と青のオーラをたぎらせる二体のドラゴン族の少女。


「というわけで」


「消えてもらいます」


互いに声を発し。


二人は大きく息を吸い込みーー


火息〈ファイヤーブレス〉。

水息〈アクアブレス〉。


赤々と燃える火球と水流渦巻く水球。


それを息を吐くのと同時に、アカネとヤナギに向け放出する。


そしてそれと同時に、アレンに向け視線を固定するブラックドラゴン。


「アレンくんはわたしのモノ。いっぱいいっぱい気持ちいいことしようね」


熱っぽく呟き、ブラックドラゴンは龍眼〈ドラゴンズアイ〉をもってアレンを催眠に堕とそうとする。


だがしかし。


「かッ、かわいい女の子たちに戦いは似合わない!! かわいい女の子たちが傷つきッ、倒れるようなこと!!そッ、それは!! そんなことは!! 俺の目の前では絶対にッ絶対にッあってはならないことだ!!」


アレンの心の底から叫び。

それが響き、全ての主導権がアレンに握られる。


剣聖(レベル500)。

拾った木の棒を空に向かって振り、三日月型の斬撃の轟音で全員の戦意を削ぎ取り。


龍殺し(レベル500)。

眼光ひとつで、赤と青のドラゴン族の少女をその場に涙目でへたり込ませ。


闇耐性(レベル500)。


ブラックドラゴンの視線を真正面から受け止めーー


「やだっ。す、すごいよアレンくん。わたしたち目と目で見つめ合っちゃってるよ」


龍眼をモロともしないアレン。

それにより頬を赤らめ、アレンにほの字になるブラックドラゴン。

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