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男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ  作者: HIGU
第1幕

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6/33

双子は対となり攻防にて最強

「おーい、祐来週のことなんだが……あー悪い、邪魔した」



掃除当番のごみ捨てから帰る途中、屋上横の階段の踊り場にいるのを見かけたので、声をかけながら登って近づくと、なんか慌てたように服を直している祐と虎先輩と華が降りてきた。


屋上に続く階段の踊り場、締め切られて通行止めの屋上。男1人に女2人。放課後。人気の少なくなりつつある校舎。


導き出される結論は一つだろう。やりおるな、こいつ。


「な、何のことかな?」


「あーいや、何でもないし、いいからそういうの。また夜にチャットで送るわ、いやほんと、悪いな」


「な、なんでもないからね! ぶー君!」


「そうよ、豚君。なにもないの、良いわね?」


女性陣にはなるべく視線を向けないように、真っ直ぐ祐の顔を注視する。横目で視界に入る分でも充分だ。露出もないしまぁ見たところキスか、上限でもドライハンプ程度かな? 情報収集はやり過ぎると悪趣味である。


「おう、それじゃあ掃除に戻る」


久々に華に昔の呼び方で呼ばれたのをなんだか懐かしさと嬉しさを感じながら俺は踵を返す。


すでに祐は2人の恋人関係? というか婚約かその予約か。ともかく一緒になったわけだ。しかし、これは前世の漫画でいうところの、両想い確定だけど恋人じゃないみたいな状態だ。この社会、男女ともに12歳で婚姻できるままなんだ……そして結婚していることが実質恋人みたいな感覚で、同性の先輩とかは普通に結婚してたし、何なら育休取っていた伝説の先輩も居た。


閑話休題、ともかく祐が婚姻を正式に結び始める前の、この期間の間にもう少し人数を稼いでおきたい。まぁあいつは卒業のタイミングにするとは思うけど。


なにせ社会的な地位という意味では、5人ぐらい奥さんがいると、かなりしっかりした男性なんだなというバイアスがかかるからだ。前世さんからすると、いろいろな団体が切れそうな世界だな。なのだが、一夫一妻というか【番い】というのが動物の生態用の単語のこの世界の感覚からすると、割と納得だ。




そして、すでに考えている候補はいる。



「龍瀧先輩、おはようございます」


「ああ、うん。おはよう」


高校2年になった以上後輩が出来るわけで、朝にあいさつされるというのは、そんなに珍しくないだろう。体育会系の部活なら先輩を見たらとりあえず挨拶とかもあるだろうし。


今祐に挨拶を返された後輩女子二人組は、きゃいきゃいと喜んでいる。微笑ましい光景だ。

しかし残念ながら彼女達は祐の好意を判定するテーブルに置いて、すでに一枚落とされてしまうのである。


「ふ、ふひぃい、縮尺がち、違いすぎて、み、見えなかったかなぁ?」


「……さぁね」


そう言って彼女たちをかばいつつも、俺は祐が内心どう思ってるまでは知らない。けれどあまり良く思ってないのだけは知ってる。

なにせこれでも10年友達をやっているから。だから茶化してまで実際に気にしてないので、平気とアピールするのだ。


横を歩いてる俺にあいさつしない正当な理由として、まず俺の名前がわからないだが、それならば分けてただ先輩と挨拶だけすればいいし、そうでなければ挨拶そのものをしなければいいという。

まぁこのくらいはなんも感じない。というか気にするようなら多分この歳まで生きる程人生に希望を見出していないだろう。



「おはようございます」


「お、おはようござい、ます」


「あ、祐君にぶー君も。おはよう」


日直の為早く家を出ていた華にあいさつして席に向かう。俺には検討すべき後輩がいるからである。

まとめてハーレムの人数が増やせそうで、なおかつ祐からの好感度も高く、言うまでもなく相手からも秋波が来ているという、良い条件の二人がいるのだ。


「祐せんぱーい、おはようございまーす!」


「お、おじゃまします」


元気な娘とおとなしい娘と対照的な下級生が挨拶をしながら2年の教室に入ってくる。まだ朝であるのにだ、しかもこの子達要件は特に無く、祐に会いに来ているだけである。


そんな相反する属性を持った双子姉妹。鯉田(こいた) 詩子&文子(うたこ ふみこ)だ。二人とも今年入学したばかりの後輩にあたるが、付き合いは割と長い。


なんでも去年の夏に祐が道を歩いていたら、ぶつかったぶつかってないで、姉の詩子が通行人とトラブルになっていたのを解決して、妹の文子は数日後に荷物を抱えて日陰で座り込んでいるところを介抱したそうだ。


そして夏休みにあった高校説明会で手伝いに参加していた祐と再会して……という流れだ。


うむ、なんという偶然。若い彼女たちが運命を感じるのも仕方がないであろう。詩子という文系っぽい名前なのに、活発でスポーツ大好き日焼けが似合うタイプの姉と。名前の通り少し猫背で内向的なたまに毒を吐く妹。これもまた王道である。


姉妹の両方、ないし全員と結婚するということは珍しくない。今なら妹もついてくる感覚でくっついたご家庭もあれば、最初から両方と仲良くなってというのまで。あっ、また雪之丞君がトラウマ再発してうずくまっている。今度は姉妹でアウトのようだ。彼には本当に強く生きて欲しい……このクラスでの一番の禁句は彼をパパ、お父さんなどの意味で呼ぶことである。


さて、鯉田姉妹は、単純に昔馴染みな華、利用価値を見てた先輩と違ってはいるが、俺に対して興味があるという様子で。最初からきもがったり邪険に扱ったり、遠ざけようとしなかった。


まず祐の何かしらのイベントで仲を深めた女性は、再会すると積極的にアプローチに来る。これはいつもどおりだ。そして魅力にあふれた祐を見て、横になんか異物がある、キモ、死ね、邪魔、捨てろ、いらない、となるらしいのだ。俺に比べればステーキにつくパセリの方が人気がある。

まあ落差がひどさを際立たせるから、仕方がない。


しかしこの双子に関しては、先に祐と接点がしっかりできていて。祐の人となりそして優しくて頼りになるというのが把握していた。


だから横にいる俺も、こんなきもい人でも横に置いてるなんて、祐先輩は優しいんだな。と加点要素になった様子なのだ。


自分で言ってて悲しくならないかって?

この程度でなってたら、とうの昔に心が死んでる。


彼女たちは、虎先輩や華の家のような何かしらのバックグラウンドも都合もない、きわめて普通の家庭の生まれだ。逆に言うと何ら考慮や心配の必要がないのである。

先にも言ったが、男が少ない以上年の近い姉妹で同じ相手とくっつくのは珍しくもない。


あと一般家庭からの人も奥さんにいる社長というのも評価ポイントに、なったりするかもしれない。

無理やり例えるのならば、人気男性アイドルが、長年苦楽をともにした年上のマネージャーと結婚した場合と、若いアイドルと結婚した場合の、ファンの女性の反応の差みたいなタイプの感想だろうか。



鯉田姉妹に関しての俺の見立てでは、姉は祐への好意をそこまで明確に自覚してない、というよりもラブとライクの差がわかっていないタイプ。

逆に内気な妹は、姉やら周囲────主に華と虎先輩────に遠慮しているが、しっかりとハートの矢印が向いている。という感じだ。





ここはシンプルな方法で行けるだろう。







「で何の用ですか先輩? うた達も暇じゃないんですけど」

「お、お姉ちゃん」


「いや、気にして、ない、ふ、フッヒィ」


というわけで早速放課後教室に呼び出しました。

こんな強気元気っ娘みたいな詩子だが、先輩って、好きな人いるのかな? とか、先輩ってどんな女の子が好きなのかな? から始まり、好きな食べ物、色など。諸々を隙を見て聞いてきている。そういう娘である。あとご覧の通り一人称名前系女子だ、まぁ双子のお約束である。


体のいい情報屋という扱いをしているのは別にきにしていない。ツンデレとは違うが、まぁその姿勢は嫌いじゃない。

妹の文子もそれを止めることなく、何かあれば追加で質問してきてる、ある意味最も強かな奴である。これも嫌いじゃない。


双子は普段のパワーバランスが局面でひっくり返ってこそである。


まあ二人から見た俺は、好きな先輩の親友でしかなく、それで十分なのでどうでもいいか。


「ゆ、祐が、最近華と虎先輩と、いいい感じなの、し、知ってるか?」


こいつらは、祐の名前さえ出せば素直にいう事を聞いてくれるのは大変楽で助かる。虎先輩は警戒して端から効かないし、華はそも自分で自然に裏取りする。


胡乱な目を隠してなかった姉も、おどおどと出口を気にしながらこちらを見ていた妹も、俺の言葉に眉根を下げる。しっかり把握はしていた様子で、そしてその反応が全てを物語っている。


「なに、うた達がオジャマ虫ってこと?」

「そんな、ひどいです……」


「い、いや、そ、そうじゃ、ないんだ。ふ、フヒォ」



態度が強気な娘は、内心が不安でいっぱいだって、それ一番言われているというやつである。

ここで怒って帰るのなら、そもそも俺のお節介などいらないわけで。口でそうは言いつつ、じゃあどうすればいいのだと。聞きたそうにこっちを見ている時点で、お客さんである。


「い、いや、で、でもまだ、祐は、け、結婚しているわけ、じゃ、ない、んだ……うん、ふ、フヒヒ」


「そうなの?」

「本当ですか?」



縋るように、希望を見てしまった目。間に合わないだろう、届かないだろうと思っても、光が差す出口があればそこに駆け込む。

希望というのは、諦める損切るという選択肢を潰してしまう。デメリットでもあるのだ。サンクコスト効果……とは少し違うか。


「そ、卒業までは、あ、あ、あまり積極的に、そ、そ、いうのには、って、あいつ、い、いつも、言ってるし、実際まだの、はず」


二人きりのお出かけなどは、殆どないことも伝えると、ほっとしたような表情になる。もう態度を隠す気が消えたと判断して、本題を、大きな餌を用意する。


「こ、これを、渡しておく、ふ、ふひぃ!」



後ろの机の上にクリアファイルに入れてしまっていた物をそのまま差し出す。なんてことはない、完璧な状況分析によるものだ。


「スイーツバイキング……」

「三名様チケット?」


結局は心地よい後輩という立場と、恩を受けたから懐いているという特権だけでは、永遠に進展しない。最低限自身で踏み出して、チャンスをつかんでモノにしなければいけない。

だから俺が出来るのは状況のセッティングまでだ。


「き、期限は、週末まで。あ、あいつの日曜の午後は、ぼ、ぼくと遊ぶ約束、が、あるけど、ば、バイトがきゅ、急に入る、かも、知れない?」



そう、予定をしっかりと確保しておくのは基本だ。場所も口実もね。

実は甘いものが好物でいつかは行ってみたいが、女性ばっかの場所で怖くていけないと嘆く祐を同伴で連れていくつもりが、バイトが入ったので代役用意しました作戦だ。



「それって、で、でーと!?」

「祐先輩とデート…」


今更デート程度でギャーギャーいう小娘には多少うんざりしつつも、意図は伝わったようだ。


「の、のぞむなら、明日の夜に、ば、バイト、の件を伝えて、だ、代役を用意したと、言うが?」


さぁ、どうするか。まぁ答えは決まってるか。詩子は悩んでいるがこれは恥じらいによるものだ。そして文子はチケットに落としていた視線をこちらに向けると、おう、腹をくくったようだ。


「お姉ちゃん。ふみは行きたい」

「……うん、うたも行く!」


「よし、契約成立だな。んじゃ覚悟だけ決めておけよ。これが最後のチャンスだろうからな」


そう言いながら、俺は役目を終えたと確信して、教室を後にする。今回に関してはもうここでミッションコンプリートだ。恋人の数は0から1と1から2の時が最も抵抗が大きい、しかしそれ以降は一気にガバくなる。高校1年の頃、祐に将来何人くらいと結婚するか聞いても、わからないと帰ってきたが。いろんな方面から聞いてみると悩むのは1か3以上の2択で2という回答は殆どなかったのだ。なので一定ラインの好感度がある娘が押せばOKであろう。


まぁバイトもシフトを今回変わって欲しいと言ってたのは事実だ。歯医者だか、彼氏に会いたいとか言ってたか。


「ま、待ってください」

「先輩、喋り方が……」


「なに? 」


妹の文子が立ち去る俺を呼び止める。これは想定外だ。罠か何かかと疑ったのか。


「どうして、そこまでしてくれるんですか?」

「そ、そうよ。先輩にメリットないじゃん。これ」


しかし、メリットか。いろいろあるが、どれを伝えるのが良いか。

怪しまれない程度に吟味して、良さげのを告げる。


「祐は俺の親友だからなぁ。あいつの為だ」


「親友だから……」

「祐先輩の為……」


微妙に納得してなさそうが、これも本音だ。3,4割くらいの理由だ。1割は暇つぶしで4割が俺の疑似恋愛みたいなもので、残りはあてつけだ。


「俺がモテない分、あいつはもてるからな」


「あっ…」

「ご、ごめんなさい」


こういえば、素では優しい姉妹は引き下がるしかない。最初のころは散々出汁に使われた身である。あくまであいつの周りの女性が変なことをしないようにいろいろやってます感を出しておけばいいのだ。実態はそう変わらない。


「じゃあ明日バイト帰りに、偶然会った体で祐にははなすから、口裏あわせといてくれよ」


それだけ言って俺は立ち去る。二人共祐の情報を聞きたいがために交換したから、一応連絡先は知ってるので問題ない。距離が縮まりわざわざ卑屈な豚のロールをしなくても済むので文章も今後はもっと楽だ。





さて、実際にバイト変わってやって仕事終わりで帰る途中。姉の方からスタンプと共に、祐の両腕にとって、両手に花状態で自撮り写真を撮ったのか、仲いい中高生カップルみたいな写真が送られてきて、俺は計画の成功を確信したのだった。


文子の方なんか見たことないくらい女の目だし、姉の詩子は逆に恥じらいが残っているのが面白いな。


なんて冷静に観察しながら。前世さんはせめてうらやましがるなら態度に出せと言ってるが、いやでも二人とも胸ないじゃんと思えば、確かにと返ってくる。


双子姉妹は、栄養を分け合ったのか、二人とも全体的に小柄だった。

中高生カップルというか、兄にじゃれつく妹たちだよなと、改めて思うのだった。


そうすると、前世さんは何も言ってこなかった。

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