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男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ  作者: HIGU
第2幕

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19/33

見栄っ張りで臆病-2

龍瀧さん=祐です 念のため。

今更だけど画数エグくてテストの時大変そうっすね。ごめんね

色々あって、先輩に騙されてバイトを続けることになった後。いや、あれは騙そうとしたというか、アタシが自滅しただけか。でももっとアタシを必要とするとしても、別の方向ならなぁなんて思ったりした。


先輩のことを男の人として気になり始めてるって、自分の気持ちに気づいてからは。色々空回りしてしまってたから。クッキーをもどされた時は死んじゃいたいくらい辛かったけど、その後優しくしてもらえて。きっと気が緩んでたんだろうなぁ。いや、クッキーを渡した時点で大概かな?

生意気な感じの後輩っぽい喋り方も、丁寧な感じな喋り方も。いろいろ試してみたけど反応芳しくない、とか思っちゃう時点できっともうだめかなぁ?


そして先輩が実は割と女の子の知り合いが多いことを知った。

もちろんこの国には女の子の方がたくさん住んでるから、当然のことではあるのだけれども。

でも、あまり言いたくはないけれど先輩は気持ち悪がられて、人が寄ってこないのかとちょっと思っていた。龍瀧さんが親友なら皆彼の方に集まるだろうから。



先輩が一番仲が良いのは風間華さんという幼馴染で龍瀧さんの彼女。龍瀧さんとはトークアプリでたまに相談とか乗ってもらったりするようになって。流れで紹介してもらった。何故か3人の部屋もある。先輩と龍瀧さんと華さんは幼なじみらしい。


他には、なんか急に家に入ってきた。け、献精の営業の駄場とかいうおばさん。そして鳥槇マキさんという彼の学校の先輩。


風間さんは、たぶん全くそういう目では見てないと思うけれども。他の二人はわからなかった。おばさんもとい駄場さんは、いきなり変なことを聞いてくるし。せ、精液をもらいたいなんて言ってるし。

ま、まぁそれは仕事だし男性の役目だからいいとしても。聞けなかったけどさらっと言ってた下着を渡してるって何よ。とにかく、なんか悪い大人って感じだった。


そして一緒にアルバム────なぜか龍瀧さんの────を見ることになった、鳥槇さん。彼女に関してはアタシの勘だけれど、少なくとも先輩を嫌ってはいない。


というか! どう考えてもあの化粧と服装は彼氏の家に行く時のそれだし。なんかめっちゃいい匂いしたし! なにより先輩のことを名前で呼び捨ててた。龍瀧さんも呼んでなかったのに!

鳥槇さんはびっくりするぐらい手足が長くて、顔も小さいすらっとしたモデルさんみたいな美人なのに。なんかもうたぶん現役のモデルさんみたいな女の人の写真を見て、ものすごいニコニコしていたから何が何だかわからなくなったけど。読モ仲間か何かなんだろうか?

なんでもその女の人は、鳥槇さんの親友なんだそうだけどレベル高くない? 風間さんといい同じ学校なんだよね。というか、よく聞くと写真の人もその周りの女の子も全員龍瀧さんの彼女だそうで。どの女の子もめちゃくちゃ可愛いか、綺麗な人ばっか。確かに龍瀧さんと外見のバランスは取れているけど、なんか頭がくらくらした。


そもそも横にいた鳥槇さんにアタシが勝てそうなところなんて……胸の厚みくらいだろうか? いや、そもそも何の勝ち負けなのよ。


結局、追い出されるように先輩の家を後にして帰るときに、自然と二人とも駅までは一緒だったから、二人であるいていたけれどもずっと無言だった。


ただ、別れるときに一言だけ


「またお会いしましょう」


って綺麗な声で言われたときは。なんか負けた気がした。こっちのことをわかってるような。見透かしているような、そんな風に見えたから。










そろそろ先輩のいないバイトにもなれてきた頃。結局あの日龍瀧さんにそそのかされて先輩の家に突撃した日以来、先輩と会うこともなくなってしまった。

あの人は、要件がなければアタシにテキスト一つ送ってこない。だからといってこっちからうざ絡みをしてみようにも、どうにも文面が浮かばない。もしかしたらあのおばさんか鳥槇さんと楽しくやっているのかもなんて、思わなくもないけど。


接点、もうなくなっちゃったな。自分からこれ以上何か先輩に対してアプローチをしたいけれども、時間を作りたくてバイトを辞めた先輩に。どうやって声をかければいいんだろう?

この前会いに行ったときに、なにか変わるかなぁと思って、精一杯気合を入れていったけど、完全に出鼻をくじかれてしまった。ちょっと充電してなんかいいきっかけでもあればなんて思うけど、先輩の家ここから遠いし、わざわざ顔を見せに来るというタイプでもないから。


また、龍瀧さんに相談する? でも頼りすぎるのもなぁ。

なんて思いながらも、しっかりアルバイトができるように成り、後輩として入った年上の方に後を任せて、今日も定時で帰ろうと着替えてコンビニから出れば。



「ああ、丁度良い時間だったな」


「せん、ぱい? え?夢っすか?」



そこに立っていたのは、髪を短く切りそろえて新品のスポーツウェアを着ているいかにもロードワーク中です、という雰囲気の先輩だった。え? 本当になんで?














「ねえ、十三。ダイエット始めたんでしょ?」


「少し前からな」



そろそろ街路樹の色彩が賑やかになってくる頃。俺は山上先生が昔くれたメニューをなんとか実践できるくらいまで体力がついてきた。あの日割りと軽い気持ちで相談したら、まさかまさかで告白を考慮してくれることとなって。俺は死物狂いとまでは言わないが、かなり力を入れてダイエットに取り掛かった。


食事も適当にあるものを満足するまでかっ食らうという馬鹿みたいな生活から、バランスや量を考え始めたし、夜更かしもやめた。おかげで空きっ腹で寝付けないでゴロゴロする時間は増えたけれども。


だから、疲れるためにも家に帰ってから勉強や食事が終わった後に少しウォーキングとランニングの中間みたいなのをすることになった。あんまりやると膝が死にそうになるから。


「夜に出かけてるんでしょ、危なくないの?」


「まぁ俺だし大丈夫だろ」


この社会でも不審者は出る。主にこじらせたおばさんでむしろ男女ともに狙われるのである種ひどいともいえる。というか祐はもろ被害者だし。でも俺に関しては全く心配は無いだろう。


「ちゃんと人通りの多い明るい道を選んでる?」


「妙にしつこいな、適当に家の近くクルクルしてるが」


コースとか距離とか目標とかはあんまり決めてない。運動自体はまず筋トレが先だし、有酸素は気休め程度だから。疲れるための運動だし。


「思ったんだけど、前にバイトしてた所くらいまで行くのが良いんじゃない?」


「んー……まぁ距離的にも悪くないな」


「せめてルートを決めて置いたほうが、何かあったときに安全だと思うんだ。やめろとは言わないしさ」


確かに事故に巻き込まれたり、トラブルにあったときに時間でどこにいるかわかるほうが良いか。でもそれなら祐の家の方が、いや途中暗い道抜けるか。バイト先なら大通りとバス通りだし、迂回しても駅前だし。ちょうどいいかもしれない。


「祐の言う通りだな。バイト先に顔出すのは気まずいから近くまで」


「そこは、あの竹之下さんだっけ? あの娘と駅まで行こうよ」


「……?? え? なんで?」


どうしていきなり竹之下の名前が出てくるんだ? ただ走るコースの話をしているのに。


「いくつか理由はあるけど、まずあそこから駅までは少し暗いから、二人のほうがいいと思うんだ」


「そうかぁ? てかそれならあっちの駅に行くだけでいいじゃんか」


「もう1つは、そっちのほうが続くと思うよ。十三は3日坊主ではないけど2ヶ月は持たないじゃん? 竹之下さんを送るっていう目的があれば、サボれないでしょ」


「た、確かに……」


言われてみると恥ずかしいが、俺は今猛烈にモチベーションが高い。前世さんに「無駄な努力だ」と言われているけどまだまだやる気は高止まりしてる。だけど明日の俺もそうだとは確約できない。どこかで大雨だからやめて、休憩の日が出来て、休憩の日が増えて、習慣が消滅する。そんなのが容易に想像できる程度には、コツコツ根気良く続けるというのは苦手だ。単語を少しずつ覚えるとかは本当に嫌い。


「さぼったら、あいつに馬鹿にされるのか……釈然としないな」


「使えるものは使っておこうよ、手段を選べるほど上等じゃないんでしょ?」


それは昔俺が自虐的に言った言い回しだと思うが、何時だったか思い出せない。まぁしかし祐の仰る通りだ。時間的にも丁度晩飯食べて少しした辺りに家を出ればいいわけだし、竹之下拾って駅まで行って戻れば、いい感じの距離になる。


善は急げと早速今日から行ってみようと、久方ぶりにバイト先。否、元バイト先まで歩……走……ジョギングしてきたのだ。竹之下のシフトが前と同じかもわからないから。軽く覗いて今日いなければまた今度でいいかと思ったら、丁度でてきた。


「せん、ぱい? え?夢っすか?」


「運動してるのが珍しいって意味か?」


確かに太っていることを気にしていない感じの素行だった。しかし今の俺は痩せる目的と痩せたいという願望があるのだ。華も応援してくれているし。


「ロードワークで今日からこっちまで来ようと思ってな、用事がないなら駅まで送るぞ?」


「え、あ、はい! ご一緒するっす! いえ、します!!」


「もう先輩じゃないから敬語はいらないぞ、そういえば」


竹之下は目を白黒させていたが、どうやら駅までは一緒に行くようだ。ペースを落とす大義名分が出来てありがたい。同行者がいて走るのは迷惑だからな。「お前が会いに来る時点で迷惑だろ、やめとけよやっぱり」と前世さんが言ってる。まぁ否定できないだろう、バイトをやめた先輩が来るのは確かにだるいな。それが俺ならなおさら。


「ということで毎日このくらいの時間に近くまでくることにしたんだ」


「えぇ~? 先輩そんなにアタシと会いたかったんすかぁ?」


「いや、別に。お前がいなかろうとこの時間に来るだけだからな」


だからまぁ、こう言っておけば迷惑ならシフトの時間を変えて帰るだろう。相手にそれを強要するなとも思うが。コンビニに入らないでここで軽く息を整えるだけなら問題ないだろう。店長室のモニターでカメラの映像はずっとでてるし、俺がいなくなってから帰るのもできるはずだ。


「じゃ、じゃあアタシのシフト送るので、これからは帰りに駅まで送って、ジュースを奢ってください!」


ちゃっかりなんか要求し始めている竹之下。まぁでも、こっちも勝手にカウント係に使おうとしてるんだし。そのくらいは良いだろう。


「まぁ、いいだろう。それじゃあ帰るぞ」


「はいっ!!」


バイト終わりだというのに元気な竹之下を連れ添って帰る。新しい後輩のこと、最近の売れ筋商品など。他愛もない話をマシンガンのようにかましてくる彼女を聞き流しながら、俺は車道側を歩くのだった。汗が冷えて少し寒いなと思いながら。



























先輩が、どうやらダイエットの為にアタシのお迎えをしてくれるようになった。シフトの終わりが近づけば、後輩にもう彼氏さん来てますよなんて言われて。彼氏じゃないしーって否定して、急いで着替えて出るのがルーティーンになったの。やばい顔がニヤける。いきなり来た時は驚いたけれど、それになんかあくまでついで感だしてたけど、やっぱりアタシに会いたくて来てくれたのかな? なんて思ってみたりした。だってほぼ毎回だし。


そして、帰る途中の話の流れで、土日に本格的な運動をしたいって考えている先輩に、中学校では運動部だったアタシが見てあげましょうか? って言ったら、お願いされてしまった。


補欠で、練習しかしてないしそれも嫌いだったけど、やっててよかった。部活は一生の宝になるってうるさく言ってたオバサン先生に初めて感謝した。こういうことだったんですね! って。


とはいっても集まって走ってストレッチするだけだけど。むちゃくちゃ硬い先輩の体を押したり伸ばしたりしてあげるだけだけで。べつになにか起こるわけでもなく、普通に運動をするだけ。

日に日に体力が付いてるし、走れるセット数が増えてく先輩をみて。ふと思った疑問をぶつける。


「ねぇ、先輩ってなんで最近運動始めたんですか?」


「ああ、聞いてくれるか?」


そういえば聞いていなかったという先輩の目的だ。


始めたときはまた先輩をからかいながら遊べると思ったけれど、意外と先輩は真面目にトレーニングをしてる。最初は長時間歩くのがほとんどだったって本人は言っているけど、どんどんフォームもきれいになってきてるし。


だから、なんでそこまで急に? って思った。健康診断でひどい判定でも出たのだろうか?


「実は先生に告白して、卒業までに痩せたら考えてくれる。ってなったんだ」


「え? ……告白!?」


「ストレートに言ったんじゃなくて、先生みたいな人は素敵ですよねって感じだがな」


すうぅっと。眼の前の視界が狭くなって。寒くなって青くなった。ベンチに座っていてよかった、立っていたら倒れていたかもしれない。なんだ、つまり先輩は。好きな人ができて。その為に頑張ってただけだ。


「まぁ、お前の言いたいことはわかるよ」


「……なにがですか?」


「ほぼ100%フラれるって。でも良いんだ。学生時代にそういう青春? っぽい事ができるとも思ってなかったから、記念みたいな感じだ」


真っ白になったアタシの頭に、先輩がポツポツと話してくれる。聞いているうちに少しずつアタシの手に体温が戻ってくる。そっか、先輩記念告白してたんだ……それが先生で、痩せたら考えてやるって。だから痩せるのを本気で頑張ってる。


「格好良いですね……それ」


ぼそっと、そう言ってしまった。だってそうじゃないか。本当かどうかは知らないけど、冗談で言って、冗談で返されたのに。それを理由に頑張ってるんだ。アタシみたいに、告白もできないで、少し一緒にいただけで。また彼氏が出来た感じを出してる娘より、ずっと前を向いてる。


「ありがとう、嬉しいな。なにせ、今俺は【格好良い】になりたいって思ってるからな」


そう言って笑ってた。アタシのそんな投げやりな褒め言葉にも。本気で先輩は嬉しそうに。初めてあった時より、少しだけ輪郭が細くなった先輩は。誰に評価されなくても頑張るのを当然のようにできる人なんだって。


「その先生のこと、それだけ好きなんすねっ!」


「……んー、正直自分でもわからない、やめとけって気持ちもすごいし。相手年上好きらしいし無理っぽいから」


「え!? そんな雰囲気だして、本気じゃないんすか!?」


一瞬耳を疑った、あれ? ちょっとまって。先輩は告白して、卒業までに痩せろって言われて。それで痩せるために運動してて。でも告白は記念告白で、期待を持ってないの?


「本気じゃないというか、無駄になるのわかってもいるからな、この努力。でもやめちゃ駄目だって華に言われたし。どっちかというと華と祐に恥じない男になりたい……なのかもなぁ。先生は……ワンチャン程度の口実?」


その時の先輩の横顔は、見たこと無いくらい子供っぽくて。年下なのに先輩って呼んでるけど。その時は同い年の男の子に見えて。


「もー中途半端すね、先輩は」


「面目ない、だが折角だし運動は続ける」


「それなら、手伝いますよ! しょうがないから」


これが、その先生とやらに塩を送ってるかもしれない。って思わなくないけど。でも、ちょっとだけアタシも先輩の力になってあげたいって。




そう思うのはきっと変なことじゃないから。

ずっと、素直に言葉を紡ぐ先輩が、とっても眩しく見えた。



竹之下は作中一番普通の重くも面倒でもない女の子です。

少なくとも今話までは


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