さよなら平成ちゃん(五百文字小説)
今日で平成も終わり。その一時代を最初から最後まで経験した私は立ち飲みの酒屋で一人で冷やを煽っていた。
「りっちゃん、ペース早過ぎだよ。旦那はどうしたの?」
店主の平木さんが心配してくれたのだが、
「知らないわよ、あんな奴。家族より仕事が大事だとか言って実は浮気してたんだから」
愚痴モード全開の私は藪睨みで平木さんを見た。平木さんは微笑んで、
「本当に浮気なのか? りっちゃん、そそっかしいからさ、何かの間違いじゃないの?」
その言葉に私はギアをチェンジして愚痴を加速させた。
「間違いなんかじゃない! だって、相手は旦那が昔付き合ってた女なんだもの! 要するに焼け木杭に火がついちゃったのよ!」
誤用かも知れないと思いながらも、私は言い放った。
「そうかなあ。違うと思うけどなあ」
平木さんはあくまでも旦那の味方のようだ。所詮男なのだ。
「やっぱりここにいた」
そこへ突然旦那が登場。グラスを持っていた手がピクンとしてしまう。
「心配したよ、りったん。今日で平成も終わりだから、家で飲もう」
「うん」
さっきまでの勢いは何処へやら、旦那にべったりと寄り添って帰る私を平木さんは呆れて見ていた。
平成ちゃん、さようなら。そしてありがとう。