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☆2.ルーカスside

 結婚記念日は何も出来なかったが、今度こそは!とルーカスは一人、馬車の中で拳を固める。1週間後はルナの誕生日。相手が好きでなくとも、誕生日を祝われて嫌な気はしないはずだ。多分……。そうだと思いたい。

 結婚してから一年が経ったことで、いくらランドール家のためと初めから割り切っていたとしても、このまま夫婦でいることがつらくなってきたのではないかと日に日に不安感が増していく。

 今回のルナの誕生日を逃したら……。

 きっともう祝えないような、そんな気がするのだ。ルナを手放す気なんてない癖に、何か言い訳してきっと彼女から逃げ続けるだろう。

 ルーカスがルナの誕生日を祝うと決めたのは1か月ほど前にマイク王子夫婦に呼び出されたことがキッカケだった。

「「ねえ、この前の結婚記念日どうだった?」」

 それはもう興味津々といった目をした二人がルーカスに尋ねてきたのだ。

 こんな二人に、何もできなかったなんて言い出せる雰囲気ではない。だが王子は何故か昔からルーカスに関することには勘がよく働くのだ。そんな王子に嘘なんてついたところですぐばれてしまうことなど目に見えている。

「いつも通りですよ」

 嘘ではない。

「君にとってはルナとの生活は毎日が記念日だと?」

「わかる、わかるわ。ルナと一緒にいられるなんてそれだけで幸せよね。毎日お祝いしてもいいくらいだわ」

 ウンウンとしきりに頷くエルはともかく、王子にはルーカスの言葉の意味が分かっているのだろう。分かっていて、他ならぬルーカス本人の口から言わせようとしているのだ。

「何もしていません」

「できなかったんじゃなくて?」

「っ、できませんでした!」

「はー、やっぱりね。なにも用意してない割に定時通りに帰った時点でおかしいと思ったよ。だから、早く帰りなよって言ったのに」

 王子は心底呆れたとばかりに深いため息をついた。なぜ王子が何も用意していなかったのか知っているのかは聞くと面倒なのでスルーしよう。

 そしてエルの方だが……怖くて見れない。さきほどから黙り続ける彼女の顔を伺うなんてそんな勇気、ルーカスにはない。あったら今頃、彼らに呼び出されてはいなかったであろう。

「……ルーカス?」

「……」

 地を這うような声が自分の名を呼んでいる気がする。気のせいだと思いたいルーカスは必死に目と気を逸らす。けれどもそれをエルは許さない。

「無視するな! ルーカス!」

「はい!」

 王子の妻とは思えない言葉遣い。だが迫力は王妃にすら引けを取らないだろう。エルはそれほどにまで怒っていたのだ。怖いが無視する方が怖いとルーカス腹をくくり、彼女の方を向く。

「ルーカス?」

 予想していたよりもはるかに怖い顔でエルはこちらを見ていた。昔、ルナと一緒にいた時も殺気に満ちた目で見られていたが、今のエルの目はその時以上だ。今の彼女なら視線だけで人を殺すこともできるだろう。


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