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11.

「……ん。ああ、ルナおはよう」

「もうおはようという時間じゃありませんよ」

 カーティスが目を覚ましたのは外がかすかに赤く染まったころだった。先ほどまでは雨雲によって隠れていた日も少しずつ顔を出し始めている。

 カーティスはあれから半日ほど寝続けた。その間、彼はピクリとも動くことなく、泥のように眠り続けたのだ。その姿をルナはじっと隣で見続けた。

 こんなに動けなくなるまで働き続けるなんて……と。だがたった一日だけでこんなにも疲労がたまるとは思えない。それは明らかに日々の疲労が積み重なったものであった。

 きっと今までだって無理を繰り返していたのだろう。そう思うとルナの口からはポロリと零れ落ちるように、それでいて確かな意思を持った言葉が出た。

「お兄様、一人でお仕事をこなすのは大変ですか?」

「どうしたんだ、いきなり」

「ラークに聞きました。お兄様、ほとんどこの部屋をお使いにならないそうですね」

「あー」

 カーティスはバツが悪そうにルナから目をそらしながら頭を掻いた。きっとこれは知られたくないことだったのだろう。いつもならここで引くルナも今日は一歩も引こうとはしなかった。ゆっくりと息を吸い込み、そして起きたばかりのカーティスに頭を下げた。

「私にお手伝いをさせてください」

「だが……」

「手伝えることなんか限られていると思うけれど、それでもお兄様の力になりたいんです」

(お兄様みたいに賢いわけではない私の手伝えることなんかたかが知れている。)

 わかってはいても、無理をするカーティスを見たルナは言わずにはいられなかった。

「ルナ……。だが、そろそろ屋敷に帰らないとルーカスが心配するだろう?」

「ルーカス様は……。ルーカス様ならきっと話せばわかってくれます。だから……」

(お兄様にはわかっているのかもしれない。私が、ただお兄様が心配だという理由だけで来たわけではないことを。逃げてきていることを。だから、帰るようにと言い聞かせているのかもしれない。だが、私のお兄様を心配する気持ちは本心だ。ただ休んでほしい。少しでも負担を減らしたいと思う。)

 ルナは頭をあげず、床をただ見つめる。カーティスの言葉を待ちながら、なんも変哲もないただの床を穴が開いてしまいそうなほどに一点をただただ見つめていた。

「だがな……」

「ダメ……ですか?」

「ダメではないが……。その……な」

 言葉に詰まるカーティスにルナは一抹の不安を覚えた。

 お兄様は自分といるのが嫌なのではないか、と。

「お兄様は、私と一緒にいるのは…………嫌、ですか?」

 否定してほしくてルナはおずおずと頭をあげてチラリとカーティスを見た。

 すると「そんなことはない!」と今までと打って変わって力強く言い切った。そんなカーティスに少し驚きながらもルナはまだここにいてもいいのだと胸をなでおろした。

「では……」

「まあ、しばらくはルナを返してやれそうにもないし……な。ルーカスには悪いが、手伝ってもらうとするか」

「はい! お兄様の役に立てるように一生懸命頑張ります!」

 身体の前で両手をグッと握りしめるルナの頭を眺めながら、カーティスは手を伸ばし彼女の頭の上でワシワシと左右に手を動かした。


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