『忠義の騎士』
定番の『黒髪黒目の召喚勇者』ですが、定番を外しまくるのが、いつもの私でございます。
<m(__)m>
召喚陣が光を失った時、陣の中心には立派な体躯の、黒鎧の男が立っていた。
「おおー」
「今度こそ、成功したぞ!」
「いや、めでたいことだ」
魔力切れで蒼白な顔色で倒れ伏す宮廷魔導士達も一顧だにせず、周囲の貴人たちは喜びの声をあげる。
倒れた同僚達に気を取られて、ヘイデンは手はずどうりに動けと上司にひじ打ちされた。
こちらの世界の礼儀など相手が知る筈も有るまいと、召喚に参加していなかった『鑑定』持ちの下っ端宮廷魔導士の彼は、黒衣の男に無断で鑑定を始める。
???ダリル・バルガス・セイ??ラッド
レベル???
HP?????/?????
MP ???/???
称号
『忠義の騎士』『無敵の黒騎士』『???国不敗の神将』『バ✖?ス大将軍の甥』『エクト殿下の守護者』『次期国王の乳兄▢』『バルガス?爵』『???国?配』・・・・・・
バチンっ
幾らも読み取れぬ内に、頭の中で鞭を打ち付けられた様な音と痛みが突き抜け、男の周囲に浮かんでいた文字が欠き消えた。
HPが五桁有るだけでも驚嘆する事実だが、鑑定が拒まれても分かる事はある。
体つきも武装も騎士の形。
黒衣の男ダリル(以下不明)は、黒髪黒瞳強面の美丈夫だ。
背丈はヘイデン達平均的なコルサド国民よりも頭一つ高く、肩幅も広くそれに合わせて胸板も厚い。
こちらの世界では見たことのない、黒い金属を歪み無く身体に合わせて打ち出した鎧と同素材の兜を被っている。
宝石や彫刻の類は勿論の事、家紋の類も無い黒一色の姿だが、騎士団のお仕着せとして一般の下級騎士に与えられる量産品とは、大違いである事は武具には素人のヘイデンにすら分かる品だ。
突然の周囲の変化に戸惑った様子も無く、不機嫌そうに室内と取り囲むお偉方を観察している。
不機嫌、ではあるが余裕がある表情だ、ヘイデンが鑑定のスキルを使っているのもすぐに気付き、半分も読み取れないうちに即時に対応されて一瞬で完璧に『護り』を固められてしまった。
「名乗りもせずに無礼な奴だな、それとも盗み見がこの国では普通の礼儀か?」
ヘイデンを真正面から見ているだけで、睨んでいる訳でも殺気が籠っている訳でもないのに、視線に耐えられなくなる。
「呼びかけに応えてよくぞおいで下さいました、勇者様。どうかわたくし達の苦境をお救い下さい」
そこに第一王女がいそいそと割り込んで来る。
騎士の視線を王女が遮る形になって、ヘイデンはほっとした。
「どこのどなたか存じ上げないが、こちらには『応えた』覚えは全くないな」
男の素っ気ない対応に周囲が気色ばむが、こちら側は男の皮肉る通りに王女の名前も身分も告げてはいない。
宰相が男の皮肉に答えて王女を身分を明らかにする。
「この方が、やんごとなきお方であることも分からぬか!この国の第一王女スゼリナ殿下であられる」
この国では身分が上の者が、下の者に自己紹介などしない。
宰相の表情と態度が、雲の上のお方なのだから畏まってへりくだれ、と言っているが男は何の感銘も受けた様子も無い。
王女が魔王の脅威に晒されたこの国の窮状を、切々と涙ながらに訴えている間に、ヘイデンは広間の片隅に引っ張って行かれた。
「なんと!『忠義の騎士』とな?」
「それ以外にも『無敵』『不敗』か、今度の勇者殿はなんとも頼もしい事ではないか」
「卑しい平民と違って、名家それも武門の貴族の若者ようじゃな」
ヘイデンが読み取った鑑定結果に、宰相や居並ぶ貴族達がニンマリと笑う。
「しかしステータスのレベルや細かい能力値、スキルが分からないのは良いが、名前が不完全にしか分らぬのでは困るのぅ、万が一に備えて『真名』は押さえておかねば」
「なに、陛下があの男に命じて、鑑定水晶に触れさせれば良い事だ」
鑑定を拒まれたと訴えても宰相達は笑っているが、ヘイデンには笑えるような要素は全く無かった、なぜならば・・・
広間の中央ではさっきから揉め事の気配がする、男が武装解除を拒みそれに対して(お飾り若様の)近衛達がキャンキャンと食って掛かっているらしい。
ヘイデンのような魔法職畑の目から見ても、あの男がその気になれば広間の全員を片付けるのも、一瞬で終わりそうなのだが・・・
「お断りする、お会いしたところで意味は無い」
怒声を張り上げた訳でもないのに、男の声はよく通った。
二度にわたる無礼に騎士たちが殺気立つが、男の方はどこ吹く風だ。
「何故でございますか?ここは地下で暗く肌寒くもございます、詳しく説明するのには向いておりません。
国王陛下を長くお待たせする訳にも参りません、どうか謁見の間へお移り下さい」
王女の言葉に宰相も言葉を添える。
「此度の勇者召喚は、国の命運をかけて陛下の命によって行われた、国の大事。
陛下のお許しも頂かずに、私共だけで勝手な判断は出来かねるのだ、大人しくついてまいれ」
地上へ上がると確かに明るかった。
太陽は中天に昇り切っておらず、手入れされた王宮の庭は美しい花々がまだ朝露を含んで咲き誇っている。
召喚術の発動には参加しなかったが、召喚の魔石に魔力を注ぐ為に、ヘイデン達宮廷魔導士は階級に関係無く、全員が半月程地下の召喚の間に閉じ込められていたのだ。
接近を制限されているのだろう遠巻きにこちらをうかがう貴族達の、光絹で仕立てられた衣装や装飾品の宝石も光を反射している。
明るい光の下で、黒衣の騎士は王女を見ている。
王女は男が自分に見惚れているのだと、これならば篭絡も容易いとほくそ笑んだが、男の視線に色は無い。
彼女の首から下を真剣な眼差しで、王女が身に付けているドレスを検分している。
「どうなさいましたか?」
不躾な視線を怒りもせずに、にこやかに王女が問いかけた。
「秋藤の絹」
無表情のまま、男がボソりとつぶやいた。
「は?」
「その絹の色は、私の国では秋藤の色と呼ぶのですよ」
説明されて、王女は自分のドレスを見下ろした。
彼女は薄紅と薄紫の中間、限りなく白に近い衣装を身にまとっていた、よくよく目を凝らせば同色の糸で全身びっしりと刺繡を施された手の込んだ逸品なのが分かる。
「まぁ、そうなのですか?今は国が困窮している時期で、粗末な物でお恥ずかしいのですけれど」
『困窮』を強調し勇者の同情を引くためにも、普段通りの華美な光絹のドレスや装飾品は控えたようだが、これでも平民基準なら質素とは呼べないだろうに。
謁見の間に移っても、平行線は平行線だった。
黒衣の騎士は、国王の御前にも関わらず、腰の剣は勿論兜すら外さず、周囲に咎められても跪きもしない。
名を聞かれても、ダリルとしか答えず、鑑定水晶に触れるのもやんわりと拒む。
遥か前方の人垣の向こうでお偉方達が時折声を荒げ、周囲を圧迫するように取り囲まれているにもかかわらず、それに対して男の声は落ち着いてよく通り、周囲から頭一つ分以上抜きん出た男の後ろ姿もよく見えた。
「ええい、陛下がわが国の勇者として召し上げて下さるのだ!ありがたく拝命せぬかっ!」
服装から軍の高官とおぼしき壮年の男性が癇癪をおこす。
わが国の領土の内側で生まれた者が相手ならば、(例え平民流民でも)その理屈は正しい。
そもそも地方にいるうちに下級官吏達に言い含め(必要なら物理的にも)られて、口答えなどせぬようにされてから、王都まで来るものなのだが。
「貴殿も軍に身を置く者のようだが、そちらの陛下に忠誠を誓っておられるのだろう?」
「もちろんだ!」
激昂する(おそらく)ザバク将軍(と思われる)相手に、男は淡々と返す。
「ならば聞くが、貴殿がある日突然見知らぬ国へ呼ばれ、見知らぬ人々の苦難を知り、その国の王に請われれば、いつ帰れるとも知れぬ長き戦いに身を投じれるのか?その間に最も大切な祖国と主がどうなっているのかも分からぬのに?」
「うっ」
正論である。
この国に生まれて代々王より頂いた禄を食む貴族や武人が、突然失踪して他国の軍の先陣に立って戦っていたら、裏切り者の誹りは免れないだろうに。
自身の忠誠を誓う主君と家族、初対面の他国の有象無象、天秤にかけるまでもない。
「何度でも言うが、お断りする。
私には既に忠誠を誓い我が剣を捧げた主君がいる、その方に剣を返されたわけでも、我が殿下より貴殿らに助力せよと命を下されたのでもなく、無断で剣を振るう事など許されない」
既に称号に『忠義の騎士』と有ったなら、考えるまでも無くその捧げる先は男の『主君』に決まっている。
「そんなっ!滅亡の危難にさらされた、わたくし達を見捨てると言うのですか?」
そんなもこんなも無いだろうに、王女が泣き落としで縋りついた。
前回は無駄に終わったが、此度現れたこの男は既に武将の貫禄も備えた歴戦の雄。
ここで逃してはなるものかと、魔王討伐成功後には『王女の婿』も褒美の内だと、食い下がる。
一方で男の頑なさに、準備が足りなかったと今更ながらに気がついたのか、王女が取り縋って時間を稼いでいる間に、近衛兵ではない王都騎士団が続々と出入り口の外に集結し始めている。
「そちらの御事情も気の毒な事とは存ずるが、どこの馬の骨とも知れぬ身元の不確かな者に、国の大事を任せるのは感心しない。
わが国も数年前に侵略者共に国土を蹂躙され、多くの犠牲を出しながらウジ虫どもを駆逐し終わったばかりで、復興もまだ半ば、お国の大事なお役目は・・・」
周囲の武官達を見回して、
「貴国にも有能な武将が居られるのでしょうから、この方々にお任せなさい。
彼らが受けるべき栄誉を、よそ者の私ごときにお与えになるのは間違っている」
直訳すると、他を当たれ、と。
口調と裏腹に、態度が段々とおざなりと言うか、鼻で笑っている気配がある。
「私は我が殿下の下に疾く戻らねばならぬ。
我が国も侵略者共は退けたが、先王が身罷り、我が殿下は即位の儀と婚儀を数日後に控えておられる」
だから自分は還せと、言外に言っているのだろうに、男を取り囲んでいるお偉方達は聞かない。
通常は『はい、かしこまりました』と、恭しく承われるのが当たり前、自分の命令が拒まれることに慣れていないのだ。
どうにもこの男は様子が違いすぎる。
文献によれば召喚されて現れる勇者候補は常にレベル1、常人離れした才能の芽はあれど、まだまだ親の庇護下にある未熟な未成年であることが圧倒的に多い。
例えて言うならば、子犬だ。
どんな強靭かつ凶暴な犬種でも、まだ牙も爪も小さい子犬のうちならば躾も容易く、従うべき主人を教え込みやすい。
つまり王の権威と武力で反論を封じ、御し易い者がくる筈だ。
三ヶ月前に喚ばれて失敗扱いとなり、いつの間にやら姿が見えなくなった少女も、剣術と弓のスキルが王都騎士団の隊長以上はあったが、魔王の軍勢に脅かされた我々の境遇に涙してくれる気弱げな娘だった。
称号が『勇者』しか無かったが、元の世界では戦に父や兄達を送り出す側の、当然初陣も済ませていない令嬢だったのだろう。
小柄で痩せ型で、魔導士のヘイデンにとっては娘自身よりも、娘が抱えていた猫型の魔道人形の方が目を惹いた程だ。
鑑定スキルの有る無しに関わらず、ヘイデンにもこの男は既に歴戦の戦士であることがうかがい知れ、嫌な予感しかしない。
皆の視線がもめ続ける前方に集中しているので、気づかれないようそろりそろりとヘイデンは出口へと向かう。
「おい」
ガシッと上司に肩を掴まれた。
「は、はいっ?」
「陛下がお怒りにならぬうちに、隷属の首輪を準備しろ、急げ」
声をひそめて囁いてきたが、その指示はいささか遅かったようだ。
「畏れ多くも陛下のご命令を拒むどころか、口答えまでするとは何たる不遜!
衛兵!この者を捕らえなさい!」
説得を諦めたらしいスゼリナ王女が、金切り声をあげる。
「それ程主君が心配だと言うのならば、その殿下とやらもこちらに呼んでやろうではないか!
主君を人質に捕られたら、貴様も従うしかあるまい」
そう何でも、出来る事と出来ない事が世の中にはあるだろうに・・・
ヘイデンの内心も知らず、続いて国王も苛立った声を張り上げた瞬間、謁見の間に黒い竜巻が発生した。
男の強さは圧倒的だった。
鞘から抜き放たれた大剣は、一般的な成人男子の掌よりも幅広く厚みがあり鉄板の様だ、だからと言って鈍らな訳でも無く、研ぎ澄まされた刃は横なぎの一閃で、男へ襲いかかった近衛兵二人の身体をほぼ同時に上下に分断して見せた。
元より、実力よりも身分と外見だけで選ばれた近衛兵の、細剣も美しい晴れ着の様な鎧も、貴族の若様達が重さに負けてへたり込む事の無いように、とても軽く作られている。
交渉の決裂と同時になだれ込んで来た騎士たちも大差無く、剣も鎧も紙の様に装着者ごと易々と切り裂かれた。
碌な宮廷魔導士も残っていなかったが、黒騎士はヘイデン達の魔法弾を切り裂くどころか、剣に絡め取って投げ返す事までやってのけた。
斯くして、謁見の間は血の海になった。
「わ、私達を殺したら、二度と元の世界には帰れないわよ!」
陛下は玉座の座面に頭を乗せ、床に直接切断面をつけて凭れている。
下半身ははるか手前に男ならば怖気の止まらないであろう小さな肉塊と共に、二本の足が丸太の様に倒れている。
「構わん、俺の悪友は悪辣で腹黒で人格者とは呼べないが、頭の出来はたいそう良い奴でな、妹が行方知れずになった時も無事に取り戻してくれた、お前らが俺を戻さなくてもなんとかしてくれるだろう」
剣を抜いた者は所属に関わらず平等に切り殺された。
抜かないまでも男の指示に従わず武器を手放さなかった者は身動き出来ない程の怪我を負わされた。
「戻れるものですか!ここはお前から見たら異世界よ! 他国に拐された娘を探すのとは・・・ヒッ」
剣を鼻先に突きつけられて、王女の舌が止まった。
「殺す前に聞かねばならぬ事があったのを思い出した。女、その秋藤色の絹を如何にして手に入れた?」
「え、な、何?」
「時間の流れに誤差が無いのなら三ヶ月前、貴様らは俺と同じ様に娘を一人誘拐した筈だ」
『三ヶ月前』、『娘』、周囲のまだ息のある者達の脳裏に、ある少女の姿が浮かび上がった。
「き、貴様の探す娘はまだ殺しておらぬ! だが、姫様に危害を加えたら、娘の方もただではおかんぞ!」
壁際から老貴族の誰かが、震えながら声をあげる。
「妹が殺されていないのは知っている、取り戻したと言っただろう」
老貴族のとっさのハッタリは役に立たなかったようだ。
つまり『娘を返して欲しければ』もしくは『故郷へ戻して欲しければ』、命令に従い魔王を倒せ、と言う脅しは使えない事を意味する。
「俺の国では、娘達は自分の生まれ月にちなんだ花の色に花嫁衣装を染めるのだ。
俺の家では俺を筆頭に男ばかり六人むさ苦しく続いてなぁ、武門の家の妻としては立派な大手柄だが、母も祖母も娘を熱望していた。
妹を授かった時には祖母は桑の木を植えて蚕を育て、母は絹糸を紡いで機を織り、二人でレースを編んで刺繍もした、どこの家でも花嫁衣装は金銭で贖わぬ、娘の成人までの十五年を掛けて母親達が手作りするのだ」
その義妹は、花嫁衣装の仮縫いの最中に姿を消した。
警備の厳重な王宮の奥宮で、多くの侍女や針子の娘達の目前で、忽然と姿が消えたのだ。
王宮の警備に責任を持つダリルであっても、さすがにその場には同席できなかった。
彼女は下着だけを身に付け、まだ反物の状態の絹を体に沿わせ、待ち針で止め付けていただけの姿だったのだから。
「脱げ」
「な、なんと破廉恥な・・・」
声だけで怒りを表しているが、王女の表情はいまだに抜かりなく、誘惑のチャンスを狙っている。
「勘違いするな、貴様の裸なんぞに用は無い」
屈辱にわなわなと震える王女に、男は素っ気なく言い放つ。
「その布を糸から染めたのは母だ、その刺繍は亡くなった祖母の手技によるものだ、望めばどんな高価な布でも手に入る身分となったのに、絶対にこれを仕立てて着るのだと、王宮にあがるときにアーリシャが持参して行った品だ。
お前が着て良い品ではないのだ、脱げ!」
「む、無理よ!貴婦人のドレスは脱ぎ着の度に侍女達が縫い合わせたり、解いたりするものなのよ!
一人では無理よ!」
まずこんな所で未婚の高貴な女性に『下着姿になれ』と、言う事の方に抗議するべきではあるまいか。
「侍女など悠長に呼んでいられるか」
内心だけで呟いたつもりが声に出ていたらしい。
ダリルが首だけでこちらを振り返った隙に、スゼリナ王女が身を翻して逃げ出した。
「ふん、遅いな。」
黒衣の騎士は大剣を軽々と振りかざす。
「ひ、姫様ぁっっ」
周囲から悲鳴が上がるが、誰もどうしようもない。
「きゃあっ」
ドレスの背中がパックリと割れ、下着と白い背中から尻までが露わになった。
むき出しになった肌を男の視線から隠そうと、こちらを向いた王女の胸元をむんずと掴んで、男は袖から王女の腕を抜いてしまった。
そのまま力任せに布の塊を引いた為に、切り裂かれていなかったドレスの裾部分に足をとられて、王女は下着姿で蛙の様に無様にひっくり返った。
「貴様ぁ、ただではおかぬぞ!」
壁際の貴族達が、その場から動かずに怨嗟の声をあげる。
「ふむ、負け犬の遠吠えだな、ただでおかぬならば何とする」
男は玉座の前で半分になっている国王に顎をしゃくった。
「あの下種が、『情けをかけてやれば名誉に思って、身を粉にして働くようになる』と娘に唆されて、妹を手籠めにしようとしたのは知っているぞ。」
「それの何が悪い?まことに名誉な事であろうが。」
『国王の側室』、女に生まれたならば最高の出世だ、反論している老貴族は本心からそう思っているようだが・・・
「そんな名誉はいらん。迷惑だ。」
「「なっっ」」
王女や貴族達は怒りで言葉も出ないようだ、わなわなと震えている、だが・・・
黒衣の騎士は言った。
『我が殿下は、即位と婚儀を数日後に控えている』と、そして母達の想いのこもった花嫁衣装を持って『王宮』へ上がった『妹』と。
つまりわが国が勇者として呼び出した少女は、単にこの報復に来た男の妹というだけでなく、彼らの国の『次期王妃』だったのではないか?
自分のような下っ端には、後宮の奥で娘が穢されたのかどうかを知るすべは無い。
この男の称号に『勇者』が付いていなかったのだから、まだ生きてはいるのだろうが、未婚の娘の不名誉はまた別の話だ。
未婚の娘の貞操が疑われたら、その親族、父や兄は武器を手に取って不名誉を濯ぐものだ。
前回の召喚時に、今回の同僚達よりも能力的にも上位の魔導士達の半数が死んだ。
だが、今回は七割が昏睡状態だが誰も死んでいない。
なぜか?
この男は我々の召喚術にタイミングを合わせて、向こうから転移して来たのだ。
執筆小説欄に小説を貯めていられなくなったので、見切り発車です。
末尾が文字変換されなくなるのですよ。
一話五千字前後ですが、遅筆で一話書くのに二週間程かかりますので、10話位で停滞すると思われます。
申し訳ございません。(m´・ω・`)m ゴメン…
次話投稿は四月五日の予定です。