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なぜ性転換したのかの理由の件について。

リツとエツって響きが兄弟みたいだよね。

涙目になりながら俺の作ったおでんを食っている美少女改めリツに俺は問いかける。


「なあ、何でお前はTSなんてしちまったんだ?」


「TS?なんじゃそりゃ?」


「あ、何で性転換なんてしちまったのか、ってことだ。」


俺の問いにリツは頭に手を当ててしばらく何かを考えてから答えた。


「それが…、何も思いだせないんだけど…」


「はぁ!?何か一つくらい心当たりがあんだろ!何か魔法をかけられた、みたいなのが!」


「うーん…、うーん…」


俺の問いかけに再びしばらく考え込んだ後にリツは何かを思い出したように手を打って答えた。


「ああ!そういえば、鍋で何かをグツグツ煮込んでいる音を聞いて一回目が覚めたんだ!」


「それで!?その時に何か変な物を見なかったか?」


おれの問いにリツは答える。


「それが…、不思議とその時のことは覚えてないんだけど、記憶の中に赤いフードをかぶった魔法使いっぽい奴が立ってるのが残ってるんだ。」


その言葉を聞いて言葉を返しながらも俺は答える。


「俺はソイツを見てないからよくわからないんだけど、恐らくその赤いフードの魔法使いが、お前を女に変えた魔法使いだろうな。」


(赤いフード…?普通の魔法使いは、自分が魔法使いだという証明みたいな感じで黒いフードを使うはずだ。それなのに赤いフードだなんて、この国の(・・・・)魔法使いなのか?

ん?待てよ?この国の魔法使いではなかったとしたら?

もしかして、他国の魔法使いか、魔族の(・・・)魔法使いか、か…)


恐らくリツを女に変えたのは他国の魔法使いか魔族の魔法使いであることを視野に入れながら俺は考えを続ける。


(もしかしてアドベンの魔法使いの誰かがやったのかもしれないが、そんなことをするメリットはない。勇者を女に変える、ということは筋力が落ちるも同然だし、そんなことをやって自分の国の戦力を落とす意味はない。

となると、リツを女に変えたのはやはり他国か魔族か、に絞られるが、魔族との戦いも終わっていないのに人間の戦力を落としたりなんてしたら、最悪人間が負ける可能性だって出てこないわけじゃない。

そう考えると、リツを女にしたのは魔族か…)


考えをそこで終わらせ、俺は未だに涙目のままおでんを食っているリツに向き直る。


「なあ、リツ。俺、お前を女に変えた犯人がわかったかもしれない。」


「ハグハグ、マジでか!?」


大根を噛みながら驚いたように聞いてくるリツに俺は答える。


「ああ。大根を噛みながらで良いから聞け。恐らく、お前を女に変えたのは、魔族の魔法使いだ。」


「はぁ?魔族ぅ?何でそんな奴が俺を女に変えるんだよ?」


イマイチ理解できていないリツに俺は説明する。


「いいか、リツ。魔族にとっても人間にとっても、勇者ってのは大きな戦力なんだ。そこまではいいな?」


俺の言葉にリツが頷いたのを見て俺は続ける。


「それでもって、今は魔族と人間は争いをしていて、自分たちが勝つためには相手の戦力を減少させればいい。」


「ってことは…」


ハッとした様子で顔を上げたリツに俺は言った。


「ああ。お前は、魔族の魔法使いの誰かが使った魔法によって女に変えられたってことだ。」


「なあ、エツ。俺が元の男に戻るためにはどうすればいい?」


リツの問いに俺は答える。


「恐らくお前にかけられているのは魔族の魔法だろうから、術者を殺すこと、または魔族大陸にまで行って魔族に解呪してもらうことだ。」


「だが、術者を探すのも難しいだろうし、魔族が本当に人間にかかった魔法の解呪なんてしてくれるのか?俺には危険な魔法をかけられて殺される未来しか思いつかないんだが…」


真剣な表情で悩んでいるリツに俺は笑いかけてから言う。


「ああ、安心しろ。俺が何とかする、って言っても不安は消えないだろうから、もっと確実な言葉で言ってやるよ。俺は、魔族大陸に行ったら必ずお前を男に戻せる方法を知っている。」


俺の言葉に目を見開きながらもリツ言う。


「おお、そうか!それじゃあ、俺たちが目指すべきなのは…。」


「ああ。ダンジョンを潜り抜けて魔族大陸に入ることだ。」


俺の返答にエツは拳を握って高々と掲げながらも言う。


「それじゃあエツ!俺たちは絶対に二人で魔族大陸に辿り着いて、俺の性別を元に戻してやるぞ!」


「本来なら断るところなんだけども、仕方ねえな。親友の頼みだし、付いて行ってやるよ。」


笑い合う俺たちの前で、鍋の中のおでんの大根がほろりと崩れた。

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